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第一章 レトロ喫茶のマスター、はじめます

2.頼りになる幼なじみ

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 げんちゃんは、いつも俺の味方をしてくれる。
 それに腕っぷしも強いから、ケンカも強かった。
 今も趣味で筋トレしてるから、Tシャツから見えてる腕も太いし全体的にがっしりしている気がする。
 俺たちの中では俺がもやしみたいにひょろっとしていて低身長、とっきーは標準の真ん中でげんちゃんが身長も高くて筋肉質だ。

「なんだ? 俺の顔に何かついてるか?」
「そんなことはないけど」
「げんちゃんのアホ面を見てただけだろ。っつかー、また腕太くなってんじゃん」

 げんちゃんは有名店で働きたいって言ってたはずなのに、俺が喫茶店をやるって言ったから手伝うって言い出したのか?
 いくら幼なじみだからって、就職っていう人生の大切な選択を俺を助けたいってだけで働かせてほしいだなんて。
 俺にとっては心強いし、げんちゃんは調理ができるわけだからすごくすごーく助かるけど。
 とっきーの言う通り、げんちゃんは脳筋なとこあるからな。
 本気なのかきちんと確認しておかないと。

「経営のことはまだ勉強中だけど、そんなに儲かってる店でもないから。毎月まともな給料払えるか分かんないよ?」
蒼樹あおいが頑張るなら、俺もそばで力になってやりたい」
「気持ちは嬉しいけど、俺は経営も素人だから迷惑もかけるだろうし。それでもいいの?」
「構わない」

 言い切るげんちゃんはカッコイイ。
 とっきーがずっと頭抱えたまま動かなくて笑っちゃうけど、とっきーは何考えてんだろう。
 
 俺たち三人は幼小中高校と同じ学校へ通っていた幼なじみだ。
 性格は全員バラバラだったけど、大学と専門学校で別れた後も月一で会って話をしていた。
 なんやかんや馬が合うっていうか。
 一緒にいると気楽で、なんでも話せるから相談事もまずはこの二人に相談している。
 だから、喫茶店を継ぐって話もすぐに伝えたかった。

「あー! 分かったよ。俺も協力する。このレトロな喫茶店を地域で一番流行る店にしてやるから覚悟しておけよ!」
「え、とっきーも就職先決まってるって言ってなかった?」
「あー……別にいい。そもそも勝手に決められて腹立ってたからさ」

 コーヒーを飲む仕草がキマってるはずなのに、やっぱりカッコよくなりきれないのがとっきーなんだよな。
 そこも含めて女子人気が高いのはとっきーだ。

「勝手にって……なんか聞いたら怒られそうだからいいや」
「同感」
「そのくらいで怒ったりしねぇよ。今話すようなことじゃないから言わないけど」

 怒ってる訳じゃなさそうだけど、触れると面倒だから放っておこう。
 とっきーは言いたくないことがあると、へらへらしてたはずなのにすぐ真顔に戻るから分かりやすい。
 昔から隠したいことがあるみたいだけど、俺とげんちゃんもあえて触れてこなかった。

「俺の話はどうでもいいよ。とにかく! 俺は接客担当な。レトロブームに乗っかって若い女の子も呼べれば宣伝になるはずだし」
「残念だけど、この喫茶店には近所の常連さんくらいしか来ないよ。ほぼじいちゃんの友達だからお年寄りって知ってるでしょ」
「だーかーらー! 俺が変えるんだって。宣伝担当も俺でいいよ! ネットで宣伝する! 見てろよ?」

 とっきーも器用で、なんでもそつなくこなすタイプなんだよな。
 二人とも優秀だから、俺は今でも二人に甘えっぱなしだ。
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