彼の素顔は誰も知らない

楓乃めーぷる

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第三章 ギルド長からのご指名

13.討伐準備

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 説明下手なリューに変わって、僕が後を引き継ぐ。

「私たちにお任せください。魔物がいる付近に住居がある皆さんは、念のために避難をお願いします。迅速に処理しますのでご安心を。討伐を終えましたら追って連絡がいくと思うので、二、三日は周辺には近づかず、後処理が終わるまで側に寄らないでください」
「分かりました。皆に伝えます。どうか、宜しくお願いします」

 村長たちは深々と頭を下げて、僕たちを小さな宿屋へと案内してくれた。
 一旦荷を下ろしてリューと討伐内容を確認する。

「村長の話によると、何か畑の側に急に生えてきて巨大化したってことだけど。何、突然変異かなんか?」
「さぁな。俺たちは依頼をこなすのが仕事だ。調査するのは別のチームの仕事だろう」
「それはまぁ、そうなんだけどね。で、どうしようか。僕は後方援護でいいの?」
「状況によるが、俺が前に出て牽制する。お前は後方で、逐一敵の動きを伝えてくれればいい」

 何かと戦う場合は大抵リューが前方で敵を引き付けて攻めていく。
 僕は持っている獲物が鞭なのもあって、得意な間合いは中から遠距離といったところだ。

 リューは体術も武器の扱いも慣れているのでどこの間合いでも得意らしい。
 なんていうか、戦うために生きているんじゃないかと思うくらいだ。

「了解。で、もう行くの?」
「準備をしたら出る」
「少しくらい休んでも……」
「討伐依頼は迅速にこなせばこなすほど、ギルドの評判が上がる。ひいては自分への評価へと繋がるのだから、早く済ますことに越したことはない」

 正論を淡々と述べられてしまうと、こちらも返す言葉もない。苦笑しながら分かったというくらいだ。
 リューは銃とナイフをホルダーに差し、手にはナックル、靴は仕込み靴である黒のブーツの具合を確認し、黒いコートを羽織った。
 そして僕の準備が整ったと見越してから、行くぞと声を掛けてくる。

 リューはこれだけ装備しておいて、動きが俊敏なのだから謎だ。
 見た目の色合いが黒ばかりで、暗殺者と言われても過言ではないので余計に誰も近寄らないだろう。

「はいはい……じゃあさっさと終わらせて、ギルド長に褒められるとしましょうかね」

 僕もお気に入りの黒のロングコートを羽織って後を追う。
 僕の服装は見た目重視なので、軽装で防御力に優れているものだ。

 最新式の装備が実家から流れてくるので着心地が良かったらギルドにも紹介したりするが、如何にもという装備ではなく、シャツとタイ、そしてパンツという簡単なセットで十分だ。
 着こなせて尚且つ、いざという時に脱ぎやすいのも良い。

 (さて……何事もなければいいんだけど、やっぱり嫌な予感がする)

 予感が当たらないことを祈りながら、リューに置いていかれないように早足で宿を後にした。
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