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32.オルお兄さんは力持ち

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 オルお兄さんがググッと力をこめると、とびらからギシっと音が聞こえてきた。
 地面に足がめりこんできてるし、すごい力を入れているみたい。

「熊だから力が強いってこと? この感じならいけるかも!」

 ルナちゃんも応援し始めると、とびらが少しずつ動いてきてる。
 ポイもぐるぐる飛びながら、ピィと鳴きながら応援してるみたい。

「……複数の足音が聞こえる。どうやら逃げ出したのを感づかれたみたいだな」

 ラグお姉さんが剣を構えて、後ろからくる人たちをやっつけようと準備を始めたから僕も怖いけどナイフを構えてみる。

「もう少しで……」

 オルお兄さんの声で振り返ると、ガシャンという音と一緒にとびらがこわれて外へ転がった。
 外は夜みたいだけど、この通路よりは明るく見える。

「やるじゃない! じゃあ、私が先に出て様子をみるわ。ラグ、後ろからくるやつらは頼んだわよ」
「皆が外出たら通路をふさいでしまおう。フィロ、私は大丈夫だからルナを助けてやってくれ」
「うん、分かった。ラグお姉さんも気を付けてね」

 僕もみんながうまく逃げられるようにお手伝いしながら、一緒に外へ出る。
 外は近くの森に繋がっていたみたいで、みんなは嬉しそうに飛びはねて喜んでくれてる。
 あとは、後から来る人たちを止められたらいいんだけど……。
 ラグお姉さんもまだ追いつかれてないからって、外に出てきた。

「さて、どうやってふさごうか……」
「それなら、この木をつっこんでしまおうか」

 オルお兄さんは、木の幹に腕を回すとまた力を入れていく。
 じっと見守っていると、少しずつ木がメリメリっていいながら上へ持ち上がっていくのが分かる。
 すごい力持ちでビックリ! 木まで引っこ抜いちゃうだなんて!

「やるな。じゃあ、好き放題やっていた奴らに投げ込んでやるといい」
「分かった」

 オルお兄さんは抱えた木をポカリと空いた通路の出入り口にグサっと差しちゃったから、ここからはもう出られなそうだ。
 黒い服の人たちにギリギリ追いつかれてなかったみたいだけど、奥からなんだなんだっていう声が聞こえてくる。

「さて、ここから帰れる者はこのまま帰っていいぞ。保護が必要な者は私たちがギルドまで連れていこう。報告もしようと思っていたしな」
「悪い奴らだし、さっさと通報しちゃいましょ! あたしたちもよくやったってほめられるかもしれないわよ?」
「だったらいいね」

 魔物のみんなは人間に捕まらないように森の奥へ逃げていったけど、めずらしい動物さんとエルフさんは僕たちと一緒にギルドへ行くことになった。
 警備隊がいるところより、ギルドへ行く方がこの場所から近いみたい。
 ギルドなら色々なところへ連絡もしやすいんだって。

「オルお兄さんはどうする?」
「フィロと言ったか。君とゆっくりと話してみたい」
「あ、うん。じゃあギルドに行ってから、オルお兄さんは宿屋に来る?」

 僕が話しかけると、オルお兄さんは頷いてくれる。
 きっと騒ぎになるだろうし、僕たちも早くここから離れないとね。
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