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73.大きくなったかな?

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 いっぱい食べたあとは部屋に戻って、また少しみんなでおしゃべりした。
 お腹いっぱいで、すぐには動けないや。
 もう少し時間が経つのを待ってから、シャワーへ入ることにした。

「オルはひと眠りしてるって言い残して、すぐ寝たな。やはり熊だ」
「ホントよね。まあ休めるときに休むべきだから間違ってないけど」
 
 オルお兄さんは食休みだって言って、部屋に戻ってからベッドにゴロンって横になって眠っちゃった。
 ラグお姉さんとルナちゃんがクスクス笑ってるんだけど、オルお兄さんは笑い声も聞こえないくらいぐっすり眠ってるみたいだ。

「重たい荷物をカステロッシからノイオゾまで持ってくれてたし、オルお兄さんもずっと僕のことを気にしてくれてたから……疲れてても頑張ってくれたんだよね」
「そうだな。オルはフィロの具合をずっと気にしていたから、宿屋に戻ってきて安心できたんだろう」

 オルお兄さんの寝顔を見ながら僕たちはまた少しおしゃべりしてたんだけど、いっぱいしゃべったらやっと動けるようになってきた。
 眠くなる前にシャワーを浴びなさいって言われたから、僕とポイで一緒にシャワーへ行く。

 +++

「次はあたしが入っちゃうから、ラグはフィロの面倒見てあげなさいよ」
「言われなくてもいつもやってるだろう。そんな悔しそうに言うのならルナがやってあげればいい。」
「あたしもさっぱりしたいんだから仕方ないでしょ。フィロのことはラグに任せたから」

 ルナちゃんはいっつも僕の面倒を見たがるんだけど、頭を拭くのは僕でもできる。
 別に拭いてもらうのが嫌なわけじゃなけど、みんなもやることがあるのに僕の面倒ばかり見ていたら自分のことができなくなっちゃうんじゃないかな?
 
 ラグお姉さんは僕にベッドへ座るようにって、ポンポンとベッドを叩く。
 ここで僕が無理に自分でやるのも変だし、髪の毛を拭いてもらえるのはうれしい。
 少し、甘えてもいいかなあ?
 
 僕はラグお姉さんの側へ行って、ベッドの端へぴょんっと腰かける。

「フィロはグラム村を出てから、どんどん大きくなっているな」
「大きくなってる? 僕、背も伸びてないと思うけど……」

 ラグお姉さんはお話しながらタオルで頭を拭いてくれてたんだけど、僕の頭の上でラグお姉さんがクスクスと笑ってる声が聞こえてきた。

「すまない、言い方が悪かったな。身体も一回り大きくなったかもしれないが、私が言ったのは中身の成長だな」
「中身って?」
 
 中身って言ったらなんだろう?
 身体の中身が大人に近づいていってるってことなのかな?
 僕が考えてると、ラグお姉さんが僕の頭を優しくきゅっと抱きしめてくれた。

「中身というのは心のことだ。心が成長して大人びてきたんじゃないか?」
「そうかな? でも僕……心配かけてばっかりだよ?」
「それも大人になった証拠みたいなものだ。これからどんどん成長するのだろうな」
 
 タオルが離れていったか気になって、上を見上げる。
 ラグお姉さんはすごく優しい顔で、僕を見ていた。
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