【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

文字の大きさ
23 / 119
第四章 黙々と育成からのお手伝いループ

21.カティと光の精霊

しおりを挟む
 俺は二人が話している隙に黙々とアイテムを取り出して育成準備を始める。
 恵みの樹を包んでいた光が消えると、カティの樹は輝きながら枝を伸ばし葉をつけていく。
 カティの樹はカティの背丈くらいには成長していた。

「すごーい! さすがレリオル様だぁ!」
「カティ、その名で呼ぶことは……」
「もう! 別にいいじゃないですか。下級精霊だってみんなそう呼んでいるのにー」

 やり取りが耳障りで気になってしまい、ちらりと二人の方を見てしまう。
 カティはぷぅと両頬を膨らませて、じぃっとアウレリオルの顔を覗き込んでいた。
 
 ……相変わらずカティを見ているだけで疲れる。
 俺は二人を無視して自分の樹の側へ行き、ゆっくりとリュックを下ろす。

「そなた……」
「え? あぁー! ハルだ! 恵みの樹のところへ来るなんて初めてじゃない?」

 静かにしていたつもりだけど、側へ寄ったら気づかれるよな。
 さすがに無視するわけにはいかない。おれは渋々、どうもと挨拶をする。

「漸く心を入れ替えたか」
「そのようですね。すみませんが、記憶がないもので」
「記憶がないほうが頑張るなんて変なの。でも、精霊様もいないのにどうするつもりなの?」

 カティはきょろきょろと辺りを見回しているみたいだけど、もしかして樹を成長させるのはアイテムでもいいって知らないとか?
 俺はカティの言葉を無視して、さっき手に入れた土色のスコップを握り樹の根本を優しく掘り返していく。

「え? 急に砂遊び?」
「カティ……そなた、何を聞いていたのだ。我らの力が込められたアイテムを使用しても恵みの樹の育成は可能だ」
「アイテムー? そういえば、そんなこと言われたような……でも、精霊様たちのお力を借りた方が簡単だし、楽しいじゃないですか」
「楽しいとは……そなた、自らの使命を理解しているのか?」

 俺は二人の会話には入らずに黙々と作業を続けていく。
 しかし、カティの喋り方といい性格と言い……さすが妹が考えただけあって妹にそっくりだ。
 相手に取り入ってソイツを上手いこと操って、自分は見ているだけ。
 自分はやりたいことだけをやり、面倒ごとをやらせたヤツには甘いことを言ってまた同じことをやらせる。
 
 ……思い出すのはやめよう。それだけで疲れるしやる気が失せてしまう。

「……ハル」
「……」
「我の言うことを聞いているのか?」

 考え事をしながら作業に没頭していたせいか、呼びかけられていたことに気づかなかったらしい。
 俺は一旦顔をあげて、なんでしょうか? と端的に返す。

「急にやる気を出した理由は?」
「特にこれと言って理由はありません。これが精霊の卵としての使命ですし、当たり前のことをしているだけです」
「でも、今までボクの邪魔したりサボったりしてたのにー?」
「それは……覚えてないけど、もうするつもりはない」

 意外と嫌味を言ってくるな、カティのヤツ。悪気がなさそうなところが余計に腹が立つ。
 普段妹に対してもここまで腹立たしくならないはずだけど、やっぱり俺がライバルポジションだからか?
 俺はイライラを吐き出すように、息を長く吐く。

「お二人はもう終わったのですよね? 俺は作業を続けますので」
「……まあいい。では、カティ。私も戻るとする」
「えぇー。折角ですしお茶しましょうよー。今日はお天気もいいですし」
「悪いが、断る」

 そういえば、ゲームの中でも午後のお茶の誘いが選択肢としてあったな。
 好感度がある程度高くてタイミングが良い時、お茶に誘うと精霊が付き合ってくれるんだよな。
 どうやら、光の精霊とはまだそこまで仲が良くないようだ。

「酷い! 少しくらい付き合ってくれてもいいのにー。じゃあ、せめてレリオル様のお家まで行きますっ」
「……仕方あるまい」

 カティがきゅっとアウレリオルの腕へ絡みつくと、アウレリオルも呆れた顔をしながら受け入れる。
 身体を触らせるってことは、好感度はそこまで悪くもないのか?
 よく分からないな。

「……」

 アウレリオルは何故か最後まで俺を見ていたので、一応軽く頭だけ下げておいた。
 どうせ俺との好感度は高くないだろうし、無視してもいいんだけど後々面倒そうだからな。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...