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第五章 突発イベントフラグ乱立中
36.俺に対して思うこと
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リバイアリスは眉を下げて、相手を労わるように優しい口調で話を続ける。
「ハル、昨日は無理やりラウディの話を聞かせてしまってすみませんでした。どうか、ラウディのことを嫌いにならないでくださいね」
「はい。今朝も適度な距離を保ちましょうとお伝えしてきましたから。きっと分かってくださると思います」
「そうですか……」
リバイアリスは少しだけ寂しそうに微笑んだけど、すぐに柔和な表情へ戻る。
俺にもっと何か言いたそうなんだけど、聞いたらまずい気がする。
でも……一度気になってしまうと引き下がれなくなってしまうのが俺の悪い癖だ。
気になって育成に集中できなくなるのも困るし、心を落ち着かせようとお茶を一口飲んでから口を開く。
「リバイアリス様、他にも言いたいことがあるなら……聞きますよ。グラウディ様のことは受け止めきれないと思いますが、俺に対してのことだったらお伺いします」
「ハル、ありがとうございます。逆に気遣わせてしまいましたね。昨日言いかけたことなのですが……貴方とラウディはとても似ているなと思ったのです」
「俺とグラウディ様がですか?」
「ええ。来たばかりの頃の貴方は皆を拒絶していました。今は態度が軟化したけれど、やはり一歩距離を置こうとしていますよね」
俺とグラウディが似ているって、オブディシアンも言っていた気がする。
ライバルの態度についてはイメージでしか分からないが、現状はその通りなので何も言い返せない。
だが、俺にとってはギリギリの距離感なんだ。
この世界でどう立ち回ればいいのか、正直不安だし元の世界へ帰れる保証なんてどこにもない。
それでも帰りたいと思っているから、この世界に深入りしたくない。
深入りすればするほど、未練が断ち切れなくなりそうだからだ。
「はい。その方が俺と皆さんにとってもいいと考えたからです。それが、グラウディ様と似ているということですか?」
「それだけじゃないのですが……いえ、貴方が適度な距離を保とうとして下さっているのにこれ以上私から立ち入るような話をすべきではありませんね」
リバイアリスは何を言いたいのだろう? 結局全ては話してくれなさそうだ。
好感度がもっとあがったら、教えてくれるのだろうか?
俺は好感度を上げるつもりはないから、きっとここまでなのだろう。
「お茶に付き合ってくださって、ありがとうございました。また誘わせてくださいね」
「はい。ありがとうございました」
話しながら結構お菓子もいただいてしまったし、そろそろお暇しようかと立ち上がる。
すると、ユニコがそうだ! と急に姿勢を正して家の中へ入って何かを持って戻ってきた。
「イアリス様、ハルも気に入ってくれたみたいだしもう少し持って行ってもらいましょうよ」
「ユニコ、それは良いことですね。ハル、よろしかったら疲れたときにまた召し上がってください」
ユニコは取っ手のついたカゴバッグを持ってきて、ひょいっと角をリバイアリスへ向けた。
角はユニコの手の代わりなんだろう。器用に受け渡しするのを見るのは二回めか?
リバイアリスはカゴを受け取って、中に紙ナプキンを敷く。
そして、皿に並んでいた焼き菓子たちをカゴの中へ詰めていった。
「このお茶は冷めても味が変わらないので、また後で飲んでください。こちらのポットとカップを一緒に入れておきますね」
リバイアリスが手のひらを空へ向けると、水がしゅるしゅると湧き出て形作っていく。
あっという間に透明のポットと数個のカップが現れて、中に飲んでいたお茶がすーっとポットの中へ満たされていった。
まるで魔法みたいな出来事に目を奪われる。
「このポットは水の力で作ったものですが、割れたりしませんので安心してください」
「ありがとうございます」
さすが精霊。サラッと能力を使ってくれるのはすごいな。
このカゴを持つと、おばあさんのところへ向かう赤ずきんみたいなイメージだけど俺はただの地味系なヤツだしな。
ずきんも被ってる訳じゃないから、変な感じだ。
「ハル、昨日は無理やりラウディの話を聞かせてしまってすみませんでした。どうか、ラウディのことを嫌いにならないでくださいね」
「はい。今朝も適度な距離を保ちましょうとお伝えしてきましたから。きっと分かってくださると思います」
「そうですか……」
リバイアリスは少しだけ寂しそうに微笑んだけど、すぐに柔和な表情へ戻る。
俺にもっと何か言いたそうなんだけど、聞いたらまずい気がする。
でも……一度気になってしまうと引き下がれなくなってしまうのが俺の悪い癖だ。
気になって育成に集中できなくなるのも困るし、心を落ち着かせようとお茶を一口飲んでから口を開く。
「リバイアリス様、他にも言いたいことがあるなら……聞きますよ。グラウディ様のことは受け止めきれないと思いますが、俺に対してのことだったらお伺いします」
「ハル、ありがとうございます。逆に気遣わせてしまいましたね。昨日言いかけたことなのですが……貴方とラウディはとても似ているなと思ったのです」
「俺とグラウディ様がですか?」
「ええ。来たばかりの頃の貴方は皆を拒絶していました。今は態度が軟化したけれど、やはり一歩距離を置こうとしていますよね」
俺とグラウディが似ているって、オブディシアンも言っていた気がする。
ライバルの態度についてはイメージでしか分からないが、現状はその通りなので何も言い返せない。
だが、俺にとってはギリギリの距離感なんだ。
この世界でどう立ち回ればいいのか、正直不安だし元の世界へ帰れる保証なんてどこにもない。
それでも帰りたいと思っているから、この世界に深入りしたくない。
深入りすればするほど、未練が断ち切れなくなりそうだからだ。
「はい。その方が俺と皆さんにとってもいいと考えたからです。それが、グラウディ様と似ているということですか?」
「それだけじゃないのですが……いえ、貴方が適度な距離を保とうとして下さっているのにこれ以上私から立ち入るような話をすべきではありませんね」
リバイアリスは何を言いたいのだろう? 結局全ては話してくれなさそうだ。
好感度がもっとあがったら、教えてくれるのだろうか?
俺は好感度を上げるつもりはないから、きっとここまでなのだろう。
「お茶に付き合ってくださって、ありがとうございました。また誘わせてくださいね」
「はい。ありがとうございました」
話しながら結構お菓子もいただいてしまったし、そろそろお暇しようかと立ち上がる。
すると、ユニコがそうだ! と急に姿勢を正して家の中へ入って何かを持って戻ってきた。
「イアリス様、ハルも気に入ってくれたみたいだしもう少し持って行ってもらいましょうよ」
「ユニコ、それは良いことですね。ハル、よろしかったら疲れたときにまた召し上がってください」
ユニコは取っ手のついたカゴバッグを持ってきて、ひょいっと角をリバイアリスへ向けた。
角はユニコの手の代わりなんだろう。器用に受け渡しするのを見るのは二回めか?
リバイアリスはカゴを受け取って、中に紙ナプキンを敷く。
そして、皿に並んでいた焼き菓子たちをカゴの中へ詰めていった。
「このお茶は冷めても味が変わらないので、また後で飲んでください。こちらのポットとカップを一緒に入れておきますね」
リバイアリスが手のひらを空へ向けると、水がしゅるしゅると湧き出て形作っていく。
あっという間に透明のポットと数個のカップが現れて、中に飲んでいたお茶がすーっとポットの中へ満たされていった。
まるで魔法みたいな出来事に目を奪われる。
「このポットは水の力で作ったものですが、割れたりしませんので安心してください」
「ありがとうございます」
さすが精霊。サラッと能力を使ってくれるのはすごいな。
このカゴを持つと、おばあさんのところへ向かう赤ずきんみたいなイメージだけど俺はただの地味系なヤツだしな。
ずきんも被ってる訳じゃないから、変な感じだ。
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