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第六章 バグる距離感
47.なかなか始まらない育成
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紫の商人は数少ない人間だから、つい色々と喋っちゃうんだよな。
やっぱり商売人は喋りもうまくないとダメなのかもしれない。
「すまんすまん。今度なんか情報を掴んだら教えたるわ。こう見えても手広くやってる商人やからまかしとき」
「ありがとうございます。俺も何か思い出したらお伝えします」
といっても、ライバルの情報ってランダムで見る夢くらいしか今のところ伝えられることがないんだけど……なんか他人事とは思えないんだよな。
元々ライバルが俺と同じ名前なのか、上書きされたのかも分からないけど。
そのまま名前で呼ばれちゃってるから、今まで自然に受け入れてたけど……ゲーム的にはどうなんだろう?
あ、そういえばクッキーのこと聞かないと。忘れるところだった。
「そういえばこの前いただいたクッキーですけど、あのクッキー何か特別なクッキーだったりします?」
「特別っちゅう訳でもないけど、魔法使いが願いを込めた愛のクッキーだかなんだかって言ってたか?」
「は? なんですかそのクッキー! めちゃくちゃ怪しいし!」
「いやぁ……ほら、ハルが嫌われたままってのもかわいそうやし? 効き目ありそうやろ。でもハルが食べたんか?」
そう、食べたのは俺じゃない。ラウディだ。
精霊にそんなクッキーの効果があるのかは謎だ。
「俺は食べませんでした。はぁ……もういいです。今日もいつものをお願いします」
「すまんすまん。堪忍な? せや、そろそろ来てくれるころやと思ってな。バッチリ用意してあるで。今日も精霊様たち全員分やな?」
「はい。いただいたリュックも持ってきたので。これに詰めます」
「おおきにー。じゃあ、金貨をいただくで」
俺は持ってきた金貨を支払って、前と同じようにリュックに詰めてもらう。
借りていたカゴは手に持ち、荷物を詰めたリュックを背負い直す。
重量軽減機能は本当に助かる機能だ。
「またお世話になると思いますけど、ありがとうございました」
「ああ、いつでも待ってるで。どうぞごひいきにー」
ニッと笑う笑顔まで商売人って感じがするけど、ただの商人がイケメンってのがやっぱり違和感なんだよな。
絶対腐女子が喜ぶ裏設定があるはずなんだけど……やっぱり思い出せない。
「哩夢がいたら分かるんだろうけど……今の俺じゃ分からないか」
変な話、内部好感度を上げていけば教えてもらえるのかもしれないけど……これ以上あげるのは何となく俺の身が持たない気がする。
「深入りはよくないしな。今はとにかく育成しないと!」
俺は最初の目的通り、この世界を抜け出せると信じて育成へ向かう。
だけど……この世界を抜け出そうと考えた時、胸の奥底でチクリと刺されるような感覚がした気がした。
+++
途中湖に立ち寄ると、今日もユニコが水やりをしていた。
俺が手を振ると、ユニコも気が付いて俺の方へ寄ってきてくれた。
「ハルだ! こんにちは」
「どうも。今日はこれを返しに寄っただけなので」
「わざわざありがとう! そういえば、もっと気軽に話してもらって大丈夫だよ? イアリス様がいいよって言ってるのにボクに対しても他人行儀なのはおかしくない?」
随分難しい言い回しをするんだなっていう感想は置いておいて。
確かに、イアリスは愛称呼びを許してくれてるんだもんな。
ユニコはどうも神秘的なユニコーンっていう見た目だし、自然と敬うべきみたいな感覚でいたのかもしれない。
「分かった。お茶とお菓子は全部美味しくいただきましたって伝えておいて」
「はーい! 今日はハルも忙しそうだし、またゆっくりできるときに遊びに来てよ」
「ありがとう。じゃあ、また」
ユニコの角にカゴを引っかけると、ユニコも笑顔でバイバイと見送ってくれた。
用事も済んだし、これでやっと恵みの樹のところへ行くことができる。
そう、思ったんだけど……――
俺が恵みの樹の下についた時には、また先客がいた。
やっぱり商売人は喋りもうまくないとダメなのかもしれない。
「すまんすまん。今度なんか情報を掴んだら教えたるわ。こう見えても手広くやってる商人やからまかしとき」
「ありがとうございます。俺も何か思い出したらお伝えします」
といっても、ライバルの情報ってランダムで見る夢くらいしか今のところ伝えられることがないんだけど……なんか他人事とは思えないんだよな。
元々ライバルが俺と同じ名前なのか、上書きされたのかも分からないけど。
そのまま名前で呼ばれちゃってるから、今まで自然に受け入れてたけど……ゲーム的にはどうなんだろう?
あ、そういえばクッキーのこと聞かないと。忘れるところだった。
「そういえばこの前いただいたクッキーですけど、あのクッキー何か特別なクッキーだったりします?」
「特別っちゅう訳でもないけど、魔法使いが願いを込めた愛のクッキーだかなんだかって言ってたか?」
「は? なんですかそのクッキー! めちゃくちゃ怪しいし!」
「いやぁ……ほら、ハルが嫌われたままってのもかわいそうやし? 効き目ありそうやろ。でもハルが食べたんか?」
そう、食べたのは俺じゃない。ラウディだ。
精霊にそんなクッキーの効果があるのかは謎だ。
「俺は食べませんでした。はぁ……もういいです。今日もいつものをお願いします」
「すまんすまん。堪忍な? せや、そろそろ来てくれるころやと思ってな。バッチリ用意してあるで。今日も精霊様たち全員分やな?」
「はい。いただいたリュックも持ってきたので。これに詰めます」
「おおきにー。じゃあ、金貨をいただくで」
俺は持ってきた金貨を支払って、前と同じようにリュックに詰めてもらう。
借りていたカゴは手に持ち、荷物を詰めたリュックを背負い直す。
重量軽減機能は本当に助かる機能だ。
「またお世話になると思いますけど、ありがとうございました」
「ああ、いつでも待ってるで。どうぞごひいきにー」
ニッと笑う笑顔まで商売人って感じがするけど、ただの商人がイケメンってのがやっぱり違和感なんだよな。
絶対腐女子が喜ぶ裏設定があるはずなんだけど……やっぱり思い出せない。
「哩夢がいたら分かるんだろうけど……今の俺じゃ分からないか」
変な話、内部好感度を上げていけば教えてもらえるのかもしれないけど……これ以上あげるのは何となく俺の身が持たない気がする。
「深入りはよくないしな。今はとにかく育成しないと!」
俺は最初の目的通り、この世界を抜け出せると信じて育成へ向かう。
だけど……この世界を抜け出そうと考えた時、胸の奥底でチクリと刺されるような感覚がした気がした。
+++
途中湖に立ち寄ると、今日もユニコが水やりをしていた。
俺が手を振ると、ユニコも気が付いて俺の方へ寄ってきてくれた。
「ハルだ! こんにちは」
「どうも。今日はこれを返しに寄っただけなので」
「わざわざありがとう! そういえば、もっと気軽に話してもらって大丈夫だよ? イアリス様がいいよって言ってるのにボクに対しても他人行儀なのはおかしくない?」
随分難しい言い回しをするんだなっていう感想は置いておいて。
確かに、イアリスは愛称呼びを許してくれてるんだもんな。
ユニコはどうも神秘的なユニコーンっていう見た目だし、自然と敬うべきみたいな感覚でいたのかもしれない。
「分かった。お茶とお菓子は全部美味しくいただきましたって伝えておいて」
「はーい! 今日はハルも忙しそうだし、またゆっくりできるときに遊びに来てよ」
「ありがとう。じゃあ、また」
ユニコの角にカゴを引っかけると、ユニコも笑顔でバイバイと見送ってくれた。
用事も済んだし、これでやっと恵みの樹のところへ行くことができる。
そう、思ったんだけど……――
俺が恵みの樹の下についた時には、また先客がいた。
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