【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

文字の大きさ
51 / 119
第六章 バグる距離感

48.光と闇

しおりを挟む
 内心何でいるのと思ったけど、口に出さなかった俺を褒めてほしい。
 今度はアウレリオルとオブディシアンの二人が俺の目の前に現れた。

「やはり来たか。待っていたぞ」
「ったく、その言い方だとハルがビビるだろ。もう少し優しい言い方はできないのかよ」
「……お二人とも、こんにちは」

 なんで、こうも次々と巻き込まれるのか。俺はただ育成をしたいだけだってのに。

「ルカンは今自宅で反省するように伝えてある。ウルフから詳細は聞いているが、怪我はないようだな」
「おかげさまで。ラウディに助けてもらいました」
「へえー。ラウディのヤツがな。というか、ラウディはそこまでハルに気を許したんだな」

 あ、無意識で愛称呼びをしてしまった。
 オブディシアンにすぐに感づかれて突っ込まれる。アウレリオルはそのことには触れずに俺の方をじっと見つめてきた。
 二人はどうして俺のことを待っていたのだろう? というか、対応が早すぎて驚くしかない。

「ウルフがすぐに知らせに来てくれたのだ。ルカンの言い分も聞いたが、念のためハルの言い分も聞く必要がある」
「コイツはそう言ってるが、ハルはどうせ巻き込まれたんだろ?」
「シアン、少し黙れ」
「はいはいっと」

 生真面目なアウレリオルと自由なオブディシアン。相性は悪そうだな。
 俺は腹をくくると、素直に自分視点の話をアウレリオルへ説明した。
 アウレリオルはその間もずっと眉間に皺を寄せていたけど、俺の話を聞いて深く頷いた。

「成程。ウルフが言っていた話とも一致するな。今回はハルに非はなさそうだ」
「だから言ってるだろう。どうせルカンのヤツが突っ走っただけだって。アイツのカティへの肩入れっぷりはすさまじいからな。お前こそどうなんだよ?」
「カティは我に対しても茶の誘いや出かける誘いをしてくるのは確かだ」
「ほーら。やっぱりな。お前、自分の立場をわきまえてるよな? 仮にも俺様たちを束ねてるっていう自覚があるなら、公平な立場で判断してもらわないとな」

 オブディシアンはふざけた口調かと思っていたけど、最後の方は俺のことを考えて言ってくれてるってことだよな。

「そういう貴様こそ。ハルに随分肩入れしているように見えるが? 精霊とはどちらの精霊使いの卵にも公平に接すると言ったのはどの口だ」
「フン。この口だ。俺様はいいんだよ。お前とは立場が違うからな」
「我は貴様のようなやからを取り締まるために、こうして皆の間に立って……」

 この口論はいつ終わるんだ? これをずっと聞かされるのは困る。
 はあ……参ったな。

「あの……お二人とも。俺が話せることは以上です。ウルフは俺をかばってくれたので、ウルフへのおとがめはなしでお願いします」

 遠慮がちに口を挟むと、一旦口論は止まってくれた。
 本当に疲れるんだよな、間に挟まれると。用が終わったのなら移動してほしい。

「ああ、分かっている。だが、主の暴走は自分の責任もあると言って主の側で見張っているようだ」
「ウルフ……さすが兄貴肌」
「兄貴? あー、確かにな。アイツはなかなか根性もあっていいな。カラスもいつも褒めてる」

 オブディシアンが明るく笑うと、アウレリオルは盛大にため息を漏らす。
 闇と光の名の通り、本当に対照的な二人なんだろうな。

「まあいい。ハルの言い分が聞けたので我は戻る。貴様は好きにしろ」
「お前に言われなくても好きにするさ」

 アウレリオルは行ってしまったけど、オブディシアンはもしかしてこの場から離れないつもりか?

「あの……オブディシアン様?」
「ったく、俺様は表立って言うほどでもないからと思ってたってのに。ラウディのヤツまで許すなら話は別だ」
「……もしかして、愛称の話を蒸し返してます?」

 俺が少し嫌そうに言うと、オブディシアンはニィっと意地悪そうに口端を吊り上げて笑って見せた。
 うわー……また嫌な予感がする。精霊たちってノリで生きてるのか?
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡
BL
超覇権BLゲームに転生したのは──ゲーム本編のシナリオライター!? その場のテンションで酷い死に方をさせていた悪役令息に転生したので、かつての自分を恨みつつ死亡フラグをへし折ることにした主人公。 創造者知識を総動員してどうにか人生を乗り切っていくが、なんだかこれ、ゲーム本編とはズレていってる……? ヤンデレ攻略対象に成長する弟(兄のことがとても嫌い)を健全に、大切に育てることを目下の目標にして見るも、あれ? 様子がおかしいような……? 女好きの第二王子まで構ってくるようになって、どうしろっていうんだよただの悪役に! ──とにかく、死亡フラグを回避して脱・公爵求む追放! 家から出て自由に旅するんだ! ※ 一日三話更新を目指して頑張ります 忙しい時は一話更新になります。ご容赦を……

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...