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第八章 真のハッピーエンディングを目指して
83.誓いの言葉
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翌日、今日の分の育成を終えると日が傾きかけていることに気付く。
ラウディとの約束もあるし、七色の木の下へ急いだ。
前はカティが地雷を踏みぬいて暴走していたけど、ラウディは大丈夫なのか?
最近ラウディは良く笑うようになったし、俺に対してはかなり言いたい放題な気もするけど……まだ親しい人たちの前以外で話すのは抵抗があるらしい。
それに、無口でいるのが癖になってしまったと言っていた。
「ラウディは……いた」
まだ日は完全に落ちていないけど、ラウディは七色の木の下に立っていた。
俺も急いでその場所へ向かうと、ラウディも俺に気付いたみたいだった。
「お待たせ。ここで話って……話をしても大丈夫なのか?」
「大丈夫。この木の下だからこそ、ハルに聞いて欲しかった」
ラウディは少し不安げに、前のように憂いを帯びた暗緑色の瞳で俺を真っすぐに見つめてくる。
俺も負けないようにじっと見つめ返した。
「ハル……ごめん。待つって言ったのに……先に僕から話させて」
「分かった」
俺はラウディの言葉をゆっくり待つ。ラウディに一歩近づいて、彼を見上げた。
陽が落ちてくると、七色の木が七色に輝いてくるのがよく分かる。
その光の下で、ラウディの灰緑の髪がさらりと揺れた。
ラウディの手が静かに俺の頬へ伸びてくる。
「ハル、僕はハルに拒まれたとしても……ずっと一緒にいたい。でも、ハルの気持ちは尊重したいと思ってる。だから……断るのなら今、断ってほしい」
俺はラウディの真摯な想いに対して、返す言葉が出てこなかった。
じっとラウディを見つめることしかできない。
「この木の下で、改めて誓いたかった。僕は……ずっと過去に囚われたままだった。誰も信じられず、喋ることも億劫になっていた。元気を出せ、気にしなくていい。そんな言葉を何度も聞いた」
「ラウディ……」
「だけど、励ましの言葉すら聞くのを拒んでいた。もう、全て疲れてしまっていたから。だから、来るものを全て拒絶して静かに過ごすしかないのだと思っていた」
ラウディの左手も、俺の頬へ伸ばされた。
俺の顔は自然と上向きにされて、ラウディ以外は視界に入らない。
七色の光の下で、暗緑色の瞳は戸惑いながら憂いて俺に訴えかけてくる。
「ハル、僕は……俺はハルのことが好きだ。その気持ちは変わらない」
俺、今ラウディに告白されてる?
しかも、いま俺って言わなかったか?
何か返さなくちゃいけないのに、全く言葉が出てこない。
俺の返事を待っているはずなのに、一声も出ないなんて……!
そんな俺を見て不安だろうと思って、必死に目は逸らさないでいたけど……俺を見下ろす瞳はとても優しく慈愛に満ちたものだった。
「一方的でごめん。でも、もう何があっても揺らがない。ハルにどう思われてもいい。それでも……好きで居続ける」
ラウディの覚悟は尊いとも言えるものだった。
自分が深く傷つく原因になった七色の木の下で、今度は俺へ誓いの言葉を述べている。
今までのラウディだったら、ありえないことだっただろう。
それを、俺の為だけに……。
「……ありがとう、ラウディ。今はそれしか言えなくて、本当にごめん。全てが終わったら必ず、答えを出す。ただ一つだけ、これだけは伝えておくよ」
「何?」
「ラウディ……俺もラウディの側にいたい。元々いた世界への未練も断ち切れた訳じゃないけど……全てを乗り越えて、必ず最高のハッピーエンディングに辿り着くから。待っていて欲しい」
「分かった。待ってるよ、ハル」
ラウディの顔が近づいてくる。俺は素直に受け止めようと静かに目を閉じた。
ふんわりと唇が重なり合う。
そして、いつものように何度か唇を啄まれたあと――俺が息継ぎしようと唇を開けたタイミングで、滑らかな舌が入りこんできた。
「んっ……」
俺の口から、妙な声が漏れた。すごく恥ずかしいけど、なぜか声が止められない。
丁寧に舌を絡まされると、ちゅっと舌に吸い付かれる。
舌を吸われる度に頭がぼーっとして、だんだん身体の力が抜けてきてしまう。
「……可愛い」
ぼんやりとした意識の中で、ラウディの嬉しそうな声が耳に届いた。
ラウディとの約束もあるし、七色の木の下へ急いだ。
前はカティが地雷を踏みぬいて暴走していたけど、ラウディは大丈夫なのか?
最近ラウディは良く笑うようになったし、俺に対してはかなり言いたい放題な気もするけど……まだ親しい人たちの前以外で話すのは抵抗があるらしい。
それに、無口でいるのが癖になってしまったと言っていた。
「ラウディは……いた」
まだ日は完全に落ちていないけど、ラウディは七色の木の下に立っていた。
俺も急いでその場所へ向かうと、ラウディも俺に気付いたみたいだった。
「お待たせ。ここで話って……話をしても大丈夫なのか?」
「大丈夫。この木の下だからこそ、ハルに聞いて欲しかった」
ラウディは少し不安げに、前のように憂いを帯びた暗緑色の瞳で俺を真っすぐに見つめてくる。
俺も負けないようにじっと見つめ返した。
「ハル……ごめん。待つって言ったのに……先に僕から話させて」
「分かった」
俺はラウディの言葉をゆっくり待つ。ラウディに一歩近づいて、彼を見上げた。
陽が落ちてくると、七色の木が七色に輝いてくるのがよく分かる。
その光の下で、ラウディの灰緑の髪がさらりと揺れた。
ラウディの手が静かに俺の頬へ伸びてくる。
「ハル、僕はハルに拒まれたとしても……ずっと一緒にいたい。でも、ハルの気持ちは尊重したいと思ってる。だから……断るのなら今、断ってほしい」
俺はラウディの真摯な想いに対して、返す言葉が出てこなかった。
じっとラウディを見つめることしかできない。
「この木の下で、改めて誓いたかった。僕は……ずっと過去に囚われたままだった。誰も信じられず、喋ることも億劫になっていた。元気を出せ、気にしなくていい。そんな言葉を何度も聞いた」
「ラウディ……」
「だけど、励ましの言葉すら聞くのを拒んでいた。もう、全て疲れてしまっていたから。だから、来るものを全て拒絶して静かに過ごすしかないのだと思っていた」
ラウディの左手も、俺の頬へ伸ばされた。
俺の顔は自然と上向きにされて、ラウディ以外は視界に入らない。
七色の光の下で、暗緑色の瞳は戸惑いながら憂いて俺に訴えかけてくる。
「ハル、僕は……俺はハルのことが好きだ。その気持ちは変わらない」
俺、今ラウディに告白されてる?
しかも、いま俺って言わなかったか?
何か返さなくちゃいけないのに、全く言葉が出てこない。
俺の返事を待っているはずなのに、一声も出ないなんて……!
そんな俺を見て不安だろうと思って、必死に目は逸らさないでいたけど……俺を見下ろす瞳はとても優しく慈愛に満ちたものだった。
「一方的でごめん。でも、もう何があっても揺らがない。ハルにどう思われてもいい。それでも……好きで居続ける」
ラウディの覚悟は尊いとも言えるものだった。
自分が深く傷つく原因になった七色の木の下で、今度は俺へ誓いの言葉を述べている。
今までのラウディだったら、ありえないことだっただろう。
それを、俺の為だけに……。
「……ありがとう、ラウディ。今はそれしか言えなくて、本当にごめん。全てが終わったら必ず、答えを出す。ただ一つだけ、これだけは伝えておくよ」
「何?」
「ラウディ……俺もラウディの側にいたい。元々いた世界への未練も断ち切れた訳じゃないけど……全てを乗り越えて、必ず最高のハッピーエンディングに辿り着くから。待っていて欲しい」
「分かった。待ってるよ、ハル」
ラウディの顔が近づいてくる。俺は素直に受け止めようと静かに目を閉じた。
ふんわりと唇が重なり合う。
そして、いつものように何度か唇を啄まれたあと――俺が息継ぎしようと唇を開けたタイミングで、滑らかな舌が入りこんできた。
「んっ……」
俺の口から、妙な声が漏れた。すごく恥ずかしいけど、なぜか声が止められない。
丁寧に舌を絡まされると、ちゅっと舌に吸い付かれる。
舌を吸われる度に頭がぼーっとして、だんだん身体の力が抜けてきてしまう。
「……可愛い」
ぼんやりとした意識の中で、ラウディの嬉しそうな声が耳に届いた。
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