【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

文字の大きさ
112 / 119
第十章 変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

109.ただいま

しおりを挟む
 ハルミリオンに呼ばれたかと思ったら、いきなり元の場所へ戻ってきていた。
 スイッチした直後は確かにハルミリオンを不思議な空間から見守っているような感覚だった。
 ハルミリオンを通して、全て見渡せていた感じだ。
 一つ違うのは、ハルミリオンの考えも全て流れ込んでくるところかな?

 今は逆に俺が見られるはずだけど、ハルミリオンは久しぶりに外へ出て疲れたから、眠らせてもらうと言って返事をしてこない。
 本当かどうかは分からないけど……妹と会って考えることもあるだろうしな。

「驚かせてすみません。モーングレイさん」
「いや、構わへんでって。今度はハルミリオンじゃない方のハルやな? 見た目はほぼ変わらん気はするが、目つきとか雰囲気はやっぱり違うんやな」
「そんなにジロジロ見られても……俺は貴族ではないので、剣を握ったことなんてないんです。だから、いざというときはハルミリオンに代わってもらおうと思ってました」
「なるほどな。別の世界ってのは未だによく分からへんけど、目の前のハルは貴族じゃないってのはよく分かるわ」

 俺はただの地味な一般男子だからな。ハルミリオンみたいにしっかりと教育を受けた人間でもない。
 っていうか、ハルミリオンって剣が得意ってすごいよな。
 もしかしたら、勉強よりも身体を動かす方が好きなのかもしれない。

「さて、俺らもそろそろ戻るとするか。帰りもこの馬車しかないんやけど……」
「あはは……頑張ります」

 乗り心地の悪い馬車だけど、ここで夜明かしする訳にもいかない。
 エーテルヴェールのみんなが心配してるし、早く戻らないとな。
 俺たちも乗ってきた馬車へ乗り込んで、神殿へ急ぐことにした。

 +++

 お尻の痛さと吐き気をこらえて何とか神殿まで戻ってきた。
 行きと同じように帰りも最奥で祈りを捧げると、光に包まれてエーテルヴェールの神殿へ運ばれる。

「……やっぱりここの空気の美味しさには敵いませんね」
「せやな。やっぱり特別な世界って感じがするわ。ほな、俺はさっさと退散させてもらうわ」
「モーングレイさん、本当にありがとうございました」
「二人とも律儀やなー。ほな、またな。買い物はいつでも待ってるで」

 悪戯な笑みを浮かべて、モーングレイさんは手を振りながら行ってしまった。
 俺はグッと背伸びをして、神殿から一旦家へと戻ることにした。
 ラウディや他のみんながどこにいるのか分からないけど、この服装じゃ大げさすぎるしな。
 冒険者風の服からいつもの服へ着替えたい。

 家まで歩いていく途中、大量のまきを抱えたカラスに出くわす。
 カラスは俺の恰好を見て、口元に微笑を浮かべていた。
 たぶん、腰の剣に気付いてくれたんだろう。

「ハル、どうやらオレも役に立てたみたいだな」
「カラスのおかげで助かったよ。この剣のおかげだ、ありがとう」
「そうか。なら、いい」

 それだけの会話だけど、俺の気持ちは伝わったみたいでカラスは優しい表情のまま去っていった。
 しかし、あの大量の薪は工房で使うのかな?

「あ……戻ってきた! ハルさぁーん!」
「ん……? あれ、モグ?」

 家の前まで帰ってくると、家の扉の前にちょこんとモグがいるのが見えた。
 ブンブンと小さな手を振ってくれているのが可愛らしくて、エーテルヴェールへ帰ってきたんだなと安心できる。

「ただいま、モグ。俺の家で待っていてくれたのか?」
「はいー。ラウディ様もお待ちですよー? ハルさんはきっと一度お家へ帰ってくるんじゃないかっておっしゃって。装備をお一人で脱ぐのも大変じゃないかと、ハルさんの帰りをお待ちしてたんですー」
「そっか。ありがとな」

 モグへ手を差し伸べてモグを抱き上げてから、家の中へ入る。
 すると、中には読書しながら待っていたラウディがいた。

「ラウディ、ただいま」
「ハル、おかえり」

 ラウディは本を置くと、嬉しそうに俺の側まで来てくれた。
 そして、俺の頬に遠慮なく口づける。
 ラウディはキスをするのが好きだよな。あいさつだって言ったせいか、会う度にしてくる気がする。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...