ゼロ距離からはじまる二人の夜

楓乃めーぷる

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ゼロ距離からはじまる二人の夜

1.勝負

 俺たちは今、ベッドの上で身体を繋ぎ合っている。
 酒のせいで頭が回らなかったにせよ、俺はコイツに対面座位を強要されてからもう何回達したか数えていない。
 俺は隠れゲイだし、その日限りの相手と夜遊びをしたこともあるが……会社の同僚とするのは想定外だ。

「うぁっ、あっ……」
「大分元気がなくなってきましたけど? オレはまだまだ満足してませんよ」
「……っく、うぅっ」

 奥の方を擦られると、目の前がチカチカする。
 だけど、俺はまだ負けてない。このくらい余裕だし、負けを認めてたまるか!

 +++

 この日は仕事がうまくいかずに取引先と揉めてしまい、もう少しで契約を切られるところだった。
 俺は自分の不甲斐なさに嫌気がさして、居酒屋で一人ヤケ酒していた。
 それなのに今一番顔を見たくない会社の後輩に見つかってしまったのだ。

栞川しおりかわさん……何してるんですか?」
「……」

 俺が無言で睨むと、後輩の藤帆ふじほは更に俺の顔を覗き込んでくる。
 コイツは新人なのに愛想も良くて、部署の女性陣はもちろん上司の心も掴んでいた。
 そりゃあ、芸能人顔負けの整った顔とくれば見た目的にも得だろう。
 年齢の割には大人びたクール系だし、着ているスーツもセンスがいいとかなんとか。

「飲みすぎですよ」
「……」

 無視だ無視。というか、いつも俺に絡んでくるコイツが正直ウザったい。
 俺は一応先輩だし年齢も五個上だから、本来は見本となる行動を見せなければならない。
 だけど、この顔のせいなのかいつも威圧的で感じが悪いと取引先相手に勘違いされる。
 
 三白眼ってヤツのせいなんだから、取引先へ出向くのは向いてないと何度も訴えてるってのに。
 今回は俺しか手が空いてなかったせいで、無理やり行かされた結果は……悲惨だったって訳だ。
 
「無視しないでくださいよ。ねえ? ほら、お店も閉店ですって」
「……るせぇな。俺に構うなって、言ってんだよ。お前のせいで、酒がまず……」

 こうなったら家で飲み直そうと立ち上がろうとするが、足元がふらついた。
 藤帆が俺を支えてきたが、その腕を振り払おうとして逆にテーブルへぶつかりそうになる。

「ああ、もう! すみません、料金はこれで。ほら行きますよ!」

 俺がぼんやりしている間に、藤帆がさっさとキャッシュレス決済で会計を済ませたらしい。
 こういうスマートなところも、本当に腹立たしい。

「んだよ。俺のことバカにしにきたのかよ……笑えよ、どうせ俺なんて目つきが悪くて嫌われ者だっての。社内でも不人気ランキング殿堂入りって知ってるかぁ?」
「なんですかそれは……もう。とりあえず落ち着きましょう」

 藤帆に適当に文句を言ってたのは何となく覚えている。
 そのあとは、タクシーに詰め込まれた。
 眠くなってきて目的地が言えなかったんだが、どうやら藤帆の家に連れていかれたらしい。
 で、俺は何も考えずにただ藤帆を何とか負かしたいとなぜか勝負を挑んでいた。

「っし。お前に勝てることが一つある。俺と勝負しろ! いいか、先に達した方が負けっていう単純なゲームだ。野郎同士、腹を割るにはちょうどいい」

 俺の提案は蹴られて終わりなはずだった。自分でもよく分からないことを言ってたなと思う。
 今の時代、下手すりゃ俺の首が吹っ飛んでもおかしくない発言だ。
 だけど、藤帆の返事はイエスだった。
 
「……いいですよ。その代わり、勝負に負けた方は何でも言うことを聞くということでどうです? ありがちですけど」
「よし、じゃあ始めるぞ」

 俺はベッドに腰かけてさっさと服を脱ぎ始めた。で、藤帆も服を脱ぎ始めたんだが……その後だ。
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