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第四章 行動に移す魔塔主と色々認めたくない弟子
81.友として、騎士として<ウルガー視点>
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「そういえば、この前の魔獣討伐はお前たちが行ったのだったな」
「あぁ。レイヴンたちと一緒にな。だが、咄嗟の反応が遅れてレイヴンが傷を負った。そのせいでレイヴンが……」
「成程な。大体の状況は飲み込めた。それで、団長に一発やられて顔を赤く腫らしていると」
「そうだよ。何も殴ることないのにな。そりゃあ、団長はレイヴンを可愛がりすぎだし。俺より物凄い形相してたから、逆に何か冷静になってきたっていうか。団長こそ、自分への怒りに満ち溢れ過ぎててさ。団長でもそうなんだから、俺なんてまだまだだよな」
コイツに話していたら大分落ち着いてきた。
普段の調子を取り戻して軽口混じりに溜め息を吐くと、クゥルテもフフ、と笑う。
「確かに。テオドール様とは別の意味でレイヴンのことを可愛がっているのは誰もが見て分かるな。その気持ちも分からないでもないが」
「それは俺も十分理解してる。凄いヤツだけど、何かいつも危なっかしいんだよ」
「私にはお前も十分過保護に見えるけどな。それは友としてなのか……」
「いやいや。確かに男の癖に綺麗な顔してるし、線も細いし、たまにちょっと危ない時はあるけども。俺はそういう目では見てないって。というより、テオドール様の横からちょっかい出せると思う?」
あのテオドール様だぞ?
あんなに分かりやすく可愛がっているのに、気づいてないのは本人だけだ。
レイヴンとは新人の頃からの付き合いで、アイツは色々気にしてたけど、俺は最初から綺麗で可愛いヤツだなーくらいしか思ってなかった。
付き合っていくうちに色々抱えてそうだし、危なっかしいで目が離せない存在だとは思ってるけど、どちらかと言えば可愛い弟分で、親友だ。
俺のツッコミにクゥルテが苦笑する。
「アレでも可愛がっているつもりなんだろうな。テオドール様としては。それがレイヴンに伝わっているかどうかは微妙な線だが」
「レイヴンもまんざらではなさそうだけど、変なところで意地っ張りというか、子どもっぽいというか。恋愛ベタなのか……」
「……お前も大変だな。まあ、愚痴くらいなら付き合うぞ」
「そういうクゥルテも見回り中にどうも。そういう気遣いできるところは、ありがたいと思ってるよ」
こういうところ、サバサバとしていて付き合いやすい。
余計な深入りもしないし、だからと言って無視もしない。
クゥルテもなー、もうちょい笑えば美人だし男なんてコロっといくだろうけど。
何せ実力者だから、自分より弱い男なんて眼中にないんだろうな。
素直に礼を述べたのにクゥルテは少し驚いたような表情を浮かべたが、その後はいつもの真面目なお硬い表情を向けてくる。
「居る場所は違えど、同じ騎士として、副団長として。切磋琢磨していけば、我々も成長できると、そう思う」
「……だな。引き止めて悪かったな。俺ももう少ししたら戻るよ」
手をあげてクゥルテを見送る。
見回りの途中だったのに、俺のために優しいよな。
今度改めて何かお礼するかな。
さて、大分スッキリしたし。
我らが団長にきちんと自分の考えを、思いを伝えてこないと。
剣を納めて、たぶんまだ同じ場所にいるであろう団長の元へと急ぎ向かった。
「あぁ。レイヴンたちと一緒にな。だが、咄嗟の反応が遅れてレイヴンが傷を負った。そのせいでレイヴンが……」
「成程な。大体の状況は飲み込めた。それで、団長に一発やられて顔を赤く腫らしていると」
「そうだよ。何も殴ることないのにな。そりゃあ、団長はレイヴンを可愛がりすぎだし。俺より物凄い形相してたから、逆に何か冷静になってきたっていうか。団長こそ、自分への怒りに満ち溢れ過ぎててさ。団長でもそうなんだから、俺なんてまだまだだよな」
コイツに話していたら大分落ち着いてきた。
普段の調子を取り戻して軽口混じりに溜め息を吐くと、クゥルテもフフ、と笑う。
「確かに。テオドール様とは別の意味でレイヴンのことを可愛がっているのは誰もが見て分かるな。その気持ちも分からないでもないが」
「それは俺も十分理解してる。凄いヤツだけど、何かいつも危なっかしいんだよ」
「私にはお前も十分過保護に見えるけどな。それは友としてなのか……」
「いやいや。確かに男の癖に綺麗な顔してるし、線も細いし、たまにちょっと危ない時はあるけども。俺はそういう目では見てないって。というより、テオドール様の横からちょっかい出せると思う?」
あのテオドール様だぞ?
あんなに分かりやすく可愛がっているのに、気づいてないのは本人だけだ。
レイヴンとは新人の頃からの付き合いで、アイツは色々気にしてたけど、俺は最初から綺麗で可愛いヤツだなーくらいしか思ってなかった。
付き合っていくうちに色々抱えてそうだし、危なっかしいで目が離せない存在だとは思ってるけど、どちらかと言えば可愛い弟分で、親友だ。
俺のツッコミにクゥルテが苦笑する。
「アレでも可愛がっているつもりなんだろうな。テオドール様としては。それがレイヴンに伝わっているかどうかは微妙な線だが」
「レイヴンもまんざらではなさそうだけど、変なところで意地っ張りというか、子どもっぽいというか。恋愛ベタなのか……」
「……お前も大変だな。まあ、愚痴くらいなら付き合うぞ」
「そういうクゥルテも見回り中にどうも。そういう気遣いできるところは、ありがたいと思ってるよ」
こういうところ、サバサバとしていて付き合いやすい。
余計な深入りもしないし、だからと言って無視もしない。
クゥルテもなー、もうちょい笑えば美人だし男なんてコロっといくだろうけど。
何せ実力者だから、自分より弱い男なんて眼中にないんだろうな。
素直に礼を述べたのにクゥルテは少し驚いたような表情を浮かべたが、その後はいつもの真面目なお硬い表情を向けてくる。
「居る場所は違えど、同じ騎士として、副団長として。切磋琢磨していけば、我々も成長できると、そう思う」
「……だな。引き止めて悪かったな。俺ももう少ししたら戻るよ」
手をあげてクゥルテを見送る。
見回りの途中だったのに、俺のために優しいよな。
今度改めて何かお礼するかな。
さて、大分スッキリしたし。
我らが団長にきちんと自分の考えを、思いを伝えてこないと。
剣を納めて、たぶんまだ同じ場所にいるであろう団長の元へと急ぎ向かった。
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