【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

267.いつもの魔塔主と補佐官<レイヴン視点>

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 朝、目が覚めてからは何事もなかったかのように振舞った。
 いちいち思い出してしまうと、俺が恥ずかしくなるだけだし。
 やるべきことを順次こなさないといけない。
 
 テオは昨夜の続きで魔法薬の調合で個室に籠る宣言をしているし、代わりに俺が魔塔の魔法使いたちの様子を見に魔塔内を巡回することになった。
 といっても、大体は俺が見て回ることが多くてテオはたまに覗きにくるくらいだ。
 大事な時にはちゃんと顔を出して的確に指示をするけど、訓練は見てても面白くねぇとかなんとか言って、なかなか見に来ないことが多い。
 
 テオが顔を出すと逆に皆が緊張するから、いいような悪いような気もするけど。
 魔塔主テオドールなんだから、先頭に立って動いてほしいと思っているのが本音だ。

「補佐官様、お疲れ様です」
「お疲れ様。調子はどうだ?皆、少しずつ連携は取れてきているようだが」
「はい、第一陣と第二陣の切り替わりの練習もしたので、連続して攻撃魔法を打つことが可能になってきています」
「攻撃及び補助は連続して素早く唱えることが重要視されているからな。連携力を高めていくことは大切なことだ」

 国に所属している魔法使いたちは個々の能力はそこまで高くないが、何人もが一斉に魔法を放つことに意味があるとされている。
 普通、魔法使いは団体で動くことを常としている。
 個人で動くのは冒険者と呼ばれる類の者たちくらいだ。

 テオは魔法使いとしては異例だし、あの人は枠に当てはまらない人だから。
 戦力としては個人で数えられる人だ。
 それくらい国にとって偉大な魔法使いなのに、素の性格のせいでいつも誤解されている。
 
「補佐官様の得意な魔法はあるのですか?」
「得意? そうだな……属性であれば風魔法か。その辺りは好みもあるかもしれないな」
「成る程。魔塔主様もそういったものがあるのでしょうか?」
「あの方は……あまり参考にはできないな。生活に密着しているものは好まないだろうが、大抵何でもできるお方だから」

 改めて考えてみても、テオが苦手というか好まないものがこじんまりとした魔法なのは知っているけど、弱点をあげてみろと言われたとしても、ないと答えるしかない。
 攻撃魔法に関しては全属性網羅しているし、移動テレポートはテオの独自の魔法だから真似できる人は今現在、存在していない。
 テオのお師匠様という方はできるかもしれないと聞いたことはあるけど、俺は会ったこともない方なので想像がつかない。
 
 魔法の研究に関しては熱心だから、気づくと自分だけ使える固有魔法まで作り出すし、テオは本当に底が見えない。
 尊敬できる魔法使いのはずなのに、尊敬しきれないこのもやもやを何とかしてほしいとずっと思い続けている。
 
 この後も一人一人の様子を見て指導と指示をした後に、自分の魔法の確認もしなくてはと数日ぶりに自室へと戻ることにした。
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