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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子
266.甘いチョコレートのように
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レイヴンは俺になされるがまま身体を洗われても、煽るように触れなかったことで安心したのか、おとなしかった。
大きめのタオルで身体をすっぽりと包んでやり、そのまま腕を差し入れて抱き上げる。
でかい赤ん坊を抱っこしている気分だ。
レイヴンは若干恥ずかしそうにしていたが、そのまま優しくベッドにおろしてやると、無言のまま静かに様子を伺ってくる。
「なんだ、もう眠くなったのか?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……」
「そういや、飯食ってねぇから腹は空いただろ?」
「あぁ、そうでしたね。言われると、お腹が空いてきた気もしますけど」
レイヴンがお腹を擦ると、ぐぅ、と、分かりやすく腹の虫が鳴く。
お腹を押さえたところで音は鳴りやまねぇ。
ベッドの淵に腰かけていた俺は、ククと肩を揺らして笑う。
「分かりやすくていいじゃねぇか。この部屋に食うもん……この前、買ったヤツがあったか」
「……記憶から抹消してください。食べ物……何かありましたっけ?」
レイヴンがタオルを頭から被ってちらちらとこっちを伺う姿が完全に小動物みたいだな。
薄目で見てから一旦立って、台所の棚に仕舞い込んでた、薄い板上のものを取り出す。
レイヴンの傍に戻って包みを開けると、チョコレートが姿を現した。
「それ、この前の?」
「甘い方だな。買ったの忘れてたんだよなぁ。とりあえずコレ食っとけ」
レイヴンの口元にチョコレートを持っていくと、反射的に流れで口を開く。
面倒なのか口だけ開いて齧りつくと、一口大で器用に割ってからチョコレートを頬張る。
パキ、と口だけで折って、横着に食べ進めてくのが面白い。
餌付けしている気分だな。
チョコレートの反対側を口で咥え、続きを食べろと顎で促す。
この状態でも食べ進められるのか、視線で煽った。
「この人は……はいはい。いただきます」
レイヴンはもぐもぐと口を動かして飲み込み、また口を近づけてパキ、と折って食す。
その行為を繰り返す度に、俺との距離は自然と縮まってくる。
「……こういうことがしたかったんです? どうせ誰かとしてたんでしょう?」
ニヤリと笑んで無言で促す。
俺の意図がレイヴンに伝わってるのは間違いねぇが、半ば諦めて最後の一口も食べようと口を開ける。
最後の一欠片がレイヴンの口の中へと潜り込むのを眺めて、右手で後頭部を引き寄せた。
そのまま唇を重ねて口内を探られるとチョコレートの甘さが舌の上でより広がっていく。
充分に堪能してから、ゆっくりと唇を離した。
口の中がやたらと甘ったるい。
「予想以上に甘いな」
「いろんな意味でお腹がいっぱいです」
レイヴンがトンと俺の肩に額を預けると、被っていたタオルがパサリと落ちる。
手を離してから、まだ少し濡れている髪を優しく梳いて宥めてやると、顔を上げたレイヴンの方から優しく俺に口付けた。
「今日も負けた気がします」
「なんで勝ち負けに拘るんだよ。まぁ、俺は何でもいいけどよ」
「ヤラれっぱなしなので何となく。でも、テオは俺に触れてないとダメみたいなので、そういう意味では勝ちですね」
「まぁ、仕方ねぇよなぁ。それでいいならいつでも勝ちは譲ってやるよ」
自然と再び唇が重なっていく。
貪り尽くしても、まだまだ足りてねぇ。
甘さと熱が、じわじわと身体に浸透してくる。
俺も湿っていた服を全て脱ぎ捨てて、肌を密着させていく。
レイヴンも、もう拒まない。
こうなれば夜が更けて眠くなるまで、お互いに求め合うまでだ。
身体も心も重ね合わせて、溶け合うように一つになる。
快楽に身を任せて、何も考えねぇ時間は至福の一時ってな。
大きめのタオルで身体をすっぽりと包んでやり、そのまま腕を差し入れて抱き上げる。
でかい赤ん坊を抱っこしている気分だ。
レイヴンは若干恥ずかしそうにしていたが、そのまま優しくベッドにおろしてやると、無言のまま静かに様子を伺ってくる。
「なんだ、もう眠くなったのか?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……」
「そういや、飯食ってねぇから腹は空いただろ?」
「あぁ、そうでしたね。言われると、お腹が空いてきた気もしますけど」
レイヴンがお腹を擦ると、ぐぅ、と、分かりやすく腹の虫が鳴く。
お腹を押さえたところで音は鳴りやまねぇ。
ベッドの淵に腰かけていた俺は、ククと肩を揺らして笑う。
「分かりやすくていいじゃねぇか。この部屋に食うもん……この前、買ったヤツがあったか」
「……記憶から抹消してください。食べ物……何かありましたっけ?」
レイヴンがタオルを頭から被ってちらちらとこっちを伺う姿が完全に小動物みたいだな。
薄目で見てから一旦立って、台所の棚に仕舞い込んでた、薄い板上のものを取り出す。
レイヴンの傍に戻って包みを開けると、チョコレートが姿を現した。
「それ、この前の?」
「甘い方だな。買ったの忘れてたんだよなぁ。とりあえずコレ食っとけ」
レイヴンの口元にチョコレートを持っていくと、反射的に流れで口を開く。
面倒なのか口だけ開いて齧りつくと、一口大で器用に割ってからチョコレートを頬張る。
パキ、と口だけで折って、横着に食べ進めてくのが面白い。
餌付けしている気分だな。
チョコレートの反対側を口で咥え、続きを食べろと顎で促す。
この状態でも食べ進められるのか、視線で煽った。
「この人は……はいはい。いただきます」
レイヴンはもぐもぐと口を動かして飲み込み、また口を近づけてパキ、と折って食す。
その行為を繰り返す度に、俺との距離は自然と縮まってくる。
「……こういうことがしたかったんです? どうせ誰かとしてたんでしょう?」
ニヤリと笑んで無言で促す。
俺の意図がレイヴンに伝わってるのは間違いねぇが、半ば諦めて最後の一口も食べようと口を開ける。
最後の一欠片がレイヴンの口の中へと潜り込むのを眺めて、右手で後頭部を引き寄せた。
そのまま唇を重ねて口内を探られるとチョコレートの甘さが舌の上でより広がっていく。
充分に堪能してから、ゆっくりと唇を離した。
口の中がやたらと甘ったるい。
「予想以上に甘いな」
「いろんな意味でお腹がいっぱいです」
レイヴンがトンと俺の肩に額を預けると、被っていたタオルがパサリと落ちる。
手を離してから、まだ少し濡れている髪を優しく梳いて宥めてやると、顔を上げたレイヴンの方から優しく俺に口付けた。
「今日も負けた気がします」
「なんで勝ち負けに拘るんだよ。まぁ、俺は何でもいいけどよ」
「ヤラれっぱなしなので何となく。でも、テオは俺に触れてないとダメみたいなので、そういう意味では勝ちですね」
「まぁ、仕方ねぇよなぁ。それでいいならいつでも勝ちは譲ってやるよ」
自然と再び唇が重なっていく。
貪り尽くしても、まだまだ足りてねぇ。
甘さと熱が、じわじわと身体に浸透してくる。
俺も湿っていた服を全て脱ぎ捨てて、肌を密着させていく。
レイヴンも、もう拒まない。
こうなれば夜が更けて眠くなるまで、お互いに求め合うまでだ。
身体も心も重ね合わせて、溶け合うように一つになる。
快楽に身を任せて、何も考えねぇ時間は至福の一時ってな。
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