【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

271.弟子に格好悪いところを見せたくない師匠

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 最近、レイヴンには内緒で新魔法を組み上げることに没頭しちまってるな。
 自分の実力は自負してるが、この歳になると伸びしろなんて言われてもピンとこねぇし。
 若いレイヴンならばがむしゃらにでも伸びていくだろうが、大切な者を守るためには自分自身でなんとかするしかねぇからな。

「別に好きだからいいんだけどよ。なんか格好悪くて口にはしたくねぇよな」

 いちいち頑張ってますーとか、言えるかってんだよな。
 しかも弟子の前でとか、いい年した野郎がなぁ。
 
 苦笑しながら、数冊の本と自分の書き留めた物を見比べ、頭の中で綿密な計算を組み上げていく。
 この工程が面倒臭ぇが、一番楽しいところでもあるんだよな。
 
 今ある魔法を組み合わせ、解いて、また結びつけていく。
 そうすることによって変わった組み合わせが生み出されていき、それが新しい魔法へと開花していく。

「アイツ、とか言うと笑顔で怒られそうだが、まだどっかで生きてっかなぁ」

 ふと昔を思いだす。
 郷愁に浸るとか柄じゃねぇし、なんか落ち着かねぇ。
 手を伸ばして煙草を手に取り一本咥え、サッと火を付けて煙を燻らせる。
 
 肺に染み渡る慣れた味は、気分も落ち着くし目元が緩む。
 しっかりと身体で煙を味わってから、フゥと吐き出した。

 俺に魔法の才能があることを見つけ出し、後に魔塔へ推薦した人物。
 その人は俺にとっての師匠で、旅の魔法使いとして何処かに留まることなく旅をしていたみたいだが、俺も最初はどんな人物かよく知らなかった。
 後々大魔道士と呼ばれている人物だと知って驚いたもんだが、言われりゃ納得の実力者だったよなぁ。

 その域に達する日も近いかもしれねぇし、まだ、少し足りないとも思う。
 ぶっちゃけ、師匠の全力を見たわけでもなさそうだし、生きてるのか死んでるのかも分からねぇ。
 あの人がいれば、色々と相談することもできたかもしれないが。
 まあ、いないものを強請っても仕方ねぇ。

「俺の勘が正しければ、目立ちたがり野郎がそろそろ仕掛けてくるはずだ。その時までにはコイツを完成させておかねぇとな」

 灰皿に煙草を押し付け、開いた本に魔法言語を書き連ねていく。
 その本はいつか弟子に残すための物だと言うことも、勿論内緒だ。
 
 「たまには、一応師匠らしいこともしてやらねぇと。時々、俺が師匠ってことを忘れて文句ばっかり言うからな、ウチの弟子は」

 いつまでもふざけて適当に生きられれば楽なんだが、どうもそうはいかねぇみたいだしな。
 ったく、誰だか知らねぇが。
 俺がレイヴンを可愛がる時間を奪いやがって。

 あったらただじゃおかねぇ。
 全部ソイツにぶつけてやるつもりで、更に攻撃的な魔法もいくつか用意しておくか。
 俺をその気にさせたことを後悔させてやる。
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