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第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子
297.合流
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「な、何を……」
「――風撃」
間髪入れずに魔法を複数発動して、賊を壁に吹き飛ばしていく。
路地裏の壁を壊さない程度の威力に調節するのが面倒なんだよな。
内臓に入るように風を押し込めてぶつけてやってるし、暫くは動けねぇだろ。
賊が全員沈黙したことを確認し、ズンズン歩いてレイヴンの側に寄る。
レイヴンは子どもを撫でながらゆっくりと立ち上がり、何もない空間にふわりと微笑みかけた。
「ありがとう」
俺には不可視状態で見えねぇが、目の前にいるらしい妖精へわざわざ礼を言ったんだろうな。
レイヴンが静かに息を吐きだすと、髪と瞳の色は元の黒と焦げ茶に戻っていく。
「ありがとうございます、テオ」
「で、子どもがいる場所は分かったのか?」
「はい。妖精さんの映像を共有したので」
二人で話しているところに、魔法使いたちと騎士たちが駆け込んで来る。
剣の柄に手をかけていたウルガーも、目視で事態を把握したみてぇだな。
賊は、気絶しているか動けなくなってうずくまってるかのどちらかだ。
ウルガーは柄から手を離し、一緒に連れてきた騎士に指示を飛ばしていく。
言われた騎士は手にした魔道具のロープで、動けない賊を捕縛したあとに地べたへ転がしていき一か所に固めた。
普段から賊を相手にしてる騎士団は、やっぱ慣れてるよな。
「切羽詰まっているのかと思いましたけど、そう簡単にテオドール様がやられたりしませんよね」
「俺は余裕に決まってんだろ。レイヴンが突っ走るから念のために副団長をお呼びしたって訳だ。ここに居たのは雑魚だったが、子どもがいる場所はさすがに警戒してるだろうしな」
「そうですね。しっかし現場を押さえたのは魔法使いの皆さんが初ですよ。俺らは毎晩見回りに駆り出されてたっていうのに……子どもがフラフラとしているっていう目撃情報は、ちょうど今さっき掴んだところでしたけど」
「たまたまだよ。でも、この子が無事で良かった。正気じゃなかったし、誰かが魔法を使って特定の場所に歩かせていた形跡があったから、解除したんだけど……」
子どもはレイヴンの腕の中で、すやすや眠ってるみたいだな。
何するつもりだったか知らねぇが、研究材料として弱い子どもを使う可能性はある。
反吐が出るが、狂った魔法使いだか研究者なら実験と称してやりそうなことだ。
レイヴンは騎士に眠る子どもを預けて、俺に顔を向けてくる。
「今から俺の見た場所へ行きますか? 行くならば少数精鋭で様子を見るのか、ウルガーたち騎士団にも協力を仰いで一気に突入する方がいいでしょうか?」
「気配に気づかれて、人質を盾に余計な行動を起こされても面倒だ。少し離れたところに騎士を待機させておいて、潜入するのは少数精鋭だな」
俺の話を聞いたレイヴンは、ウルガーと騎士を連れてきた魔法使いに別の隊に合流するよう指示を出していく。
愛弟子は、常に有能で助かるな。
俺らで怪しい場所を探索している間、他のヤツらは引き続きうろうろしてる子どもや不審者がいねぇか街中を見回ればいい。
俺が頼もしいレイヴンを見守ってると、側に寄ってきたウルガーがすみませんと声をかけてきた。
「力仕事なら、ウチの団長呼び出しますけど」
「そうだな。ココにいる雑魚が適当な陽動の下っ端だとすると、レイヴンが見つけた場所にいるのは格上のヤツが見張っている可能性が高い」
聖女の予知夢が当たっているのならば、子どもが捕えられているはずだからな。
「暑苦しいがディーもいた方がいいかもな。陛下への報告をアイツに押し付けられるし」
「またそんなこと言って。言っときますけど、その役目が回ってくるのは多分ウルガーですよ。愚痴に付き合うのは誰だと思っているんですか。師匠は話をややこしくしないでください」
ウルガーは雑用処理が得意だから問題ねぇだろ。
側でわざとらしく嫌そうな顔をしてるが、どうせうまくやるんだから顔芸もいらねぇんだよな。
ウルガーを軽く睨んでやると、両肩を竦めながら耳に手を当てて魔道具を作動させた。
「――風撃」
間髪入れずに魔法を複数発動して、賊を壁に吹き飛ばしていく。
路地裏の壁を壊さない程度の威力に調節するのが面倒なんだよな。
内臓に入るように風を押し込めてぶつけてやってるし、暫くは動けねぇだろ。
賊が全員沈黙したことを確認し、ズンズン歩いてレイヴンの側に寄る。
レイヴンは子どもを撫でながらゆっくりと立ち上がり、何もない空間にふわりと微笑みかけた。
「ありがとう」
俺には不可視状態で見えねぇが、目の前にいるらしい妖精へわざわざ礼を言ったんだろうな。
レイヴンが静かに息を吐きだすと、髪と瞳の色は元の黒と焦げ茶に戻っていく。
「ありがとうございます、テオ」
「で、子どもがいる場所は分かったのか?」
「はい。妖精さんの映像を共有したので」
二人で話しているところに、魔法使いたちと騎士たちが駆け込んで来る。
剣の柄に手をかけていたウルガーも、目視で事態を把握したみてぇだな。
賊は、気絶しているか動けなくなってうずくまってるかのどちらかだ。
ウルガーは柄から手を離し、一緒に連れてきた騎士に指示を飛ばしていく。
言われた騎士は手にした魔道具のロープで、動けない賊を捕縛したあとに地べたへ転がしていき一か所に固めた。
普段から賊を相手にしてる騎士団は、やっぱ慣れてるよな。
「切羽詰まっているのかと思いましたけど、そう簡単にテオドール様がやられたりしませんよね」
「俺は余裕に決まってんだろ。レイヴンが突っ走るから念のために副団長をお呼びしたって訳だ。ここに居たのは雑魚だったが、子どもがいる場所はさすがに警戒してるだろうしな」
「そうですね。しっかし現場を押さえたのは魔法使いの皆さんが初ですよ。俺らは毎晩見回りに駆り出されてたっていうのに……子どもがフラフラとしているっていう目撃情報は、ちょうど今さっき掴んだところでしたけど」
「たまたまだよ。でも、この子が無事で良かった。正気じゃなかったし、誰かが魔法を使って特定の場所に歩かせていた形跡があったから、解除したんだけど……」
子どもはレイヴンの腕の中で、すやすや眠ってるみたいだな。
何するつもりだったか知らねぇが、研究材料として弱い子どもを使う可能性はある。
反吐が出るが、狂った魔法使いだか研究者なら実験と称してやりそうなことだ。
レイヴンは騎士に眠る子どもを預けて、俺に顔を向けてくる。
「今から俺の見た場所へ行きますか? 行くならば少数精鋭で様子を見るのか、ウルガーたち騎士団にも協力を仰いで一気に突入する方がいいでしょうか?」
「気配に気づかれて、人質を盾に余計な行動を起こされても面倒だ。少し離れたところに騎士を待機させておいて、潜入するのは少数精鋭だな」
俺の話を聞いたレイヴンは、ウルガーと騎士を連れてきた魔法使いに別の隊に合流するよう指示を出していく。
愛弟子は、常に有能で助かるな。
俺らで怪しい場所を探索している間、他のヤツらは引き続きうろうろしてる子どもや不審者がいねぇか街中を見回ればいい。
俺が頼もしいレイヴンを見守ってると、側に寄ってきたウルガーがすみませんと声をかけてきた。
「力仕事なら、ウチの団長呼び出しますけど」
「そうだな。ココにいる雑魚が適当な陽動の下っ端だとすると、レイヴンが見つけた場所にいるのは格上のヤツが見張っている可能性が高い」
聖女の予知夢が当たっているのならば、子どもが捕えられているはずだからな。
「暑苦しいがディーもいた方がいいかもな。陛下への報告をアイツに押し付けられるし」
「またそんなこと言って。言っときますけど、その役目が回ってくるのは多分ウルガーですよ。愚痴に付き合うのは誰だと思っているんですか。師匠は話をややこしくしないでください」
ウルガーは雑用処理が得意だから問題ねぇだろ。
側でわざとらしく嫌そうな顔をしてるが、どうせうまくやるんだから顔芸もいらねぇんだよな。
ウルガーを軽く睨んでやると、両肩を竦めながら耳に手を当てて魔道具を作動させた。
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