【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

文字の大きさ
301 / 488
第十一章 強気な魔塔主と心配性の弟子

299.洞窟の中で

しおりを挟む
 レイヴンが俺らを案内したのは、城下町から徒歩で三十分ほど離れたところにある洞窟だった。
 中は薄暗く人が入れる程度の広さはあるが、この辺りは時々野生の魔物がうろつく場所で町民が来ることはねぇ場所だ。
 
 入り口に古ぼけた看板あったが、薄汚れていて文字は読めなくなっている。
 地面には何本かの杭が打ち付けられていて、杭自体に上下二枚の板が張られていた。
 板を繋ぎ合わせることで入口を塞ぎ侵入禁止にしていたようだが、板自体が腐って朽ちてしまい隙間から誰でも中に入れそうだ。

「この場所も探索したはずなのに、どうして気づかなかったんだ? これじゃあ騎士は仕事してないとか言われちゃうじゃないですか」
「ウルガー、お前のせいじゃねぇよ。認識妨害がかかっていやがる。魔道具みたいに分かりやすいヤツじゃねぇな……それなりの魔法が使えるヤツの仕業だ」

 ウルガーのヤツ、茶化すような口調の癖に責任を感じてんのか?
 珍しく真面目じゃねぇか。
 確かに人命がかかってるから、それを見逃したってなると落ち込みもするか。
 
 ウルガーの肩を軽く叩いてやる。
 仕方ねぇから、優しい魔塔主様が慰めてやろうじゃねぇか。

 パッと見はただの洞窟だが、俺ら魔法使いは魔力マナを感じとることができる。
 魔法を使うと、使った場所には魔力マナが残る。
 目に見えるモノと目に見えないモノがあって、見えないモノは接近すればより強く感じ取る。
 
 相手がかなり手練れのヤツで、そいつが認識妨害をかけた場合。
 遠距離からの捜索サーチじゃ、違和感に気づくことはできない。
 仮に俺が認識妨害をかけた場合、俺よりも優れた魔法を使いこなせるようなヤツじゃなければパッと見で見破られることはないって訳だ。
 この洞窟自体にかけられた認識妨害は、言うほど強固なもんじゃねぇ。
 ただ、ある程度魔法に精通したヤツじゃなければ素通りしちまうだろうな。
 
 魔力マナの残滓は絶対的なモノって訳じゃねぇが、一種の勘みたいなもんだ。
 肌で感じたり、匂いで感じ取ったり。
 人によって感じ方は様々だが、優れている魔法使いほど察しやすい。
 
「やはり魔法の知識がある、何者かが関わっていると?」
「ま、そういうこった。俺とレイヴンは魔法を使えるから、違和感に気づけるってだけだ」
「はい。普通に見ただけでは分からないし、捜索サーチでも引っかからない類のものです。近づいたことによって、違和感に気づきました」

 レイヴンも同じく魔力マナの残滓を感じ取ったらしいな。
 俺に同意してからウルガーよりもやりきれない表情を浮かべているディーを、必死に励ましてやってる。
 相変わらずディーには優しいよなぁ。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...