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2章 最高に推せる騎士との出会い
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しおりを挟む「騎士団の連中が授業をするですって?」
王立学院の生徒たちの間で、騒めきが広がっていた。今日は待ちに待った特別授業として騎士団からの講師が来ることになっていた。
「フィレリア、喜んでるのはあなたくらいよ!信じられないわ!」
同級生のエレノアがゾッとしたように言った。
「あの不細工たちが教室に来るなんて…」
「国を守る人々の仕事を知ることは大切よ」
フィレリアは平静を装ったが、内心では期待で胸を躍らせていた。
(今日はどの騎士が来るのかな…?あの金髪の人がいいな…)
教室のドアが開き、二人の騎士が入ってきた。一人は先日見かけた金髪の騎士、もう一人は赤毛の壮年の騎士だった。どちらも鎧を身に着け、凛々しい姿で教壇に立った。
教室内がシーンと静まり返る。女子生徒たちはそっぽを向いたり、顔をしかめたりしていた。男子生徒たちも明らかに不快そうな表情を浮かべていた。
(ええー!この素晴らしい肉体美が分からないなんて!みんな審美眼なさすぎ!)
フィレリアは内心で叫びながらも、表情には出さず、むしろ熱心に聞く姿勢を見せた。
「本日は特別にお時間をいただき、騎士団の役割と責務についてお話しさせていただきます」
金髪の騎士が丁寧に頭を下げた。その声は低く、響くような心地よい音色を持っていた。
(きゃー!声も最高!まるでラウル様のCVそのもの!)
「私は騎士団訓練指導官のゼファルド・イルムガルドと申します。こちらは副団長のドニク・フェルトハイムです」
フィレリアはゼファルドの名を心に刻んだ。
(ゼファルド…カッコいい名前…!)
講義は騎士団の歴史から始まり、任務内容、訓練方法と続いた。他の生徒たちは退屈そうにしていたが、フィレリアは一言一句聞き逃すまいと真剣に聞き入っていた。
「騎士の最も重要な誓いは、『我が剣と盾は王国と民のためにあり、己の命よりも民の安寧を優先することを誓う』というものです」
ゼファルドがそう言った時、フィレリアの胸が高鳴った。
(まさにラウル様が言ってた台詞そのもの!ああ、これぞ騎士道…!)
授業の終わりに質問の時間があったが、誰も手を挙げなかった。フィレリアは勇気を出して手を挙げた。
「貴族の家に派遣される護衛騎士と、あなた達のような国の騎士とでは大きく違って見えますがどうしてでしょうか?」
ゼファルドは少し驚いたような表情を浮かべた後、丁寧に答えた。
「…我が国は基本的に平穏ですからパーティなどに派遣される護衛騎士は場を華やかにする意味合いと、見守りの意味合いが強いのです。そのような護衛騎士は見た目も重視されるため貴族出身の者がほとんどですね。……やはり鍛えるという行為が忌避されるからでしょう」
その言葉にフィレリアは驚いた。
(どうりで派遣されてくる騎士は騎士らしさの欠片もないはずだわ…、お飾りの騎士ということね…どうにか本物の騎士を雇えないかしら…ほんの少しでも交流できたら眼福なのに…!)
授業後、生徒たちがさっさと教室を出て行く中、フィレリアはゆっくりと騎士たちに近づいた。
「素晴らしい講義をありがとうございました、ゼファルド様、ドニク様」
二人は驚いたように彼女を見つめた。
「ベルナデット嬢…様など必要ありません。私も副団長も平民ですから」
ゼファルドがフィレリアに丁重に頭を下げる。
「まぁ、そんなことお気になさらないでください。お二人とも私にとっては立派に使命を果たされている年長者ですもの、こちらこそ、家名でなくフィレリアで結構です。もしお時間があれば、もっと騎士団について教えていただけませんか?図書館で歴史の勉強をしているのですが、本だけではわからないことも多くて…」
彼女の真摯な眼差しに、ゼファルドは戸惑いながらも頷いた。
「承知しました。お役に立てるかはわかりませんが…」
「明日、学院の図書館でお会いできますか?」
「はい、騎士団に申請していただければ可能です。職務扱いでこちらにくる事になりますが、喜んで」
フィレリアに聞こえない程度にドニクがゼファルドに小声で言った。
「おい、大丈夫か?こんな美人から話しかけられるなんて前代未聞だぞ」
「さっきも言ったが任務だと思えばいい」
ゼファルドは平静を装ったが、その表情には戸惑いが見えた。
フィレリアは満足げに教室を後にした。
(やった!これで毎日イケメン騎士と会える!しかも独り占めよ!)
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