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5章 推しが積極的になる時
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しおりを挟むそれから数週間後、王国全体を揺るがすニュースが発表された。
「国王陛下が騎士団の改革を宣言されたわ!」
エレノアが学園で朝一番に息を切らせて報告してきた。フィレリアは驚いて新聞を受け取った。
「騎士団の改革…?」
「ええ、これまでの見た目で選別しての護衛任務の仕事は廃止して、騎士としての実力の無い者の階級を見直しするみたいよ。能力主義を取り入れるんですって。貴族出身でなくても、能力と功績があれば上位職に就けるようになるそうよ」
フィレリアの目が輝いた。
(これは…ゼファルドが言ってた「良い知らせ」?)
記事を読み進めると、さらに驚くべき情報があった。
「騎士団の地位向上のため、優秀な騎士には貴族の位が与えられることもある…」
フィレリアの心臓が跳ねた。これが実現すれば、身分の違いという壁が小さくなる。
(これって…私たちにとってチャンス?)
その予感は的中した。数日後、四人で集まった時にクラウスから新たな情報が齎された。
「あなたの騎士に関する噂があります」
クラウスは微笑みながら伝えた。
「彼が騎士団改革の一環として、下級貴族の位を授与される可能性が高いそうです」
「本当?」
「はい、父から聞きました。王室顧問会議で決まったことだそうです」
クラウスは頷いた。
「彼の功績と能力が認められたのでしょう」
フィレリアの胸に希望が膨らんだ。ゼファルドが平民の騎士の身分のままでも変わらず彼を愛していた。しかし、彼が下級貴族の位を得ることで、二人の関係は社会的にもずっと受け入れられやすくなる。
(ついに…私たちの道が開けるかも…!)
しかし、喜びもつかの間、新たな問題が発生した。
「フィレリア、話がある」
ある日、父が厳しい表情でフィレリアを呼び出した。書斎には母フレデリカと、交流の記憶がない中年の貴族が座っていた。
「こちらはロバート・アシュフォード伯爵だ」
父キースが紹介した。アシュフォード伯爵は礼儀正しく頭を下げた。
「初めまして、フィレリア嬢」
「ご挨拶申し上げます、アシュフォード伯爵様」
フィレリアは丁寧に挨拶したが、内心は疑問だった。
(これは…何?)
「伯爵は王国東部の広大な領地を治めておられる。そして…」
父は少し言いよどんだ。
「伯爵の次男であるエドワード殿がお前との縁組みを望んでいるそうだ」
フィレリアは驚いて言葉を失った。
「でも、私はクラウス様と婚約しています」
「その点については」
アシュフォード伯爵が口を開いた。
「ヴェスタール家との婚約がうまくいっていないという噂を聞いています。我が家としては、もし破談になった場合に備えて、事前に申し入れをさせていただきたいと」
(ええ!?新たな政略結婚の話?噂が広まりすぎて逆効果に?)
フィレリアは困惑した。彼女とクラウスの「性格の不一致」を演じる作戦は成功しすぎたようだ。噂が広まり、他の貴族が彼女に興味を示し始めたのだ。
「それは…まだ婚約中ですし、突然すぎます」
「もちろん、今すぐ返事は求めていません」
アシュフォード伯爵は表向きは紳士的に言った。
「しかし、私の息子は次の夜会であなたと踊りたいと熱望しております」
フィレリアは仕方なくダンスには同意した。アシュフォード伯爵が帰りフィレリアと父、母だけになった時、フィレリアは不安を隠せなかった。
「お父様、これはどういうこと?」
「フィレリア」
父は静かに言った。
「クラウス殿との婚約があまりうまくいっていないことは、もう王都中の噂になっている。アシュフォード家は一応は名門だ。それに婚約とは別に事業の話しも持ちかけてきたからな、彼らの申し入れを無視するわけにはいかない」
「でも…」
「心配しないで」
母が優しく言った。
「まだ何も決まっていないわ。時間をかけて考えましょう」
フィレリアは部屋に戻り、混乱した思いを整理しようとした。
(どうすればいい?クラウスとの偽装婚約を解消する前に、新たな縁談が…ゼファルドとの関係はどうなるの?)
彼女が悩んでいる時、小さなノックの音がした。ノーニャがメッセージを持ってきたのだ。
「エレノア様からです」
フィレリアはそれを開き、急いで読んだ。
『緊急事態!あなたの騎士が任務中に重傷を負ったらしいわ…今、王宮の医務室にいる。詳しいことは分からないけど、あなたに知らせないとと思って…』
フィレリアの顔から血の気が引いた。
(ゼファルドが…重症?)
彼女は即座に行動した。クラウスに連絡を取り、王宮に行く手立てを探した。
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