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それから一週間

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あれから1週間。
よく読んでいた小説的展開がようやくやってきたのだ。

食事と排泄と愛想振りまく仕事がひと段落したら、毎日欠かさず天に居るであろう神様に向かってお願いをしていた。
転生のときにチート能力貰ってませんとか、めっちゃ強くしてくださいとかわがまま言いませんから、どうか俺の願いを聞いてください、と。
一週間しつこいくらいにお願いしていたら、本当に現れたのだ。

「うるさ~い!!今何時だと思っておるのじゃ!夜中じゃぞ、夜中!耳元で何度も何度も呪詛の様にブツブツブツブツと!」

小学生か?と思うほどのロリ神様が。

「誰がロリ神様じゃ!見た目に騙されおって!これだから若いやつは嫌なんじゃ!」

と、まるでプンスカと効果音まで聞こえてきそうなほど、怒っているように見えないロリ…

「ロリ神ではない!!わしは天から地、地獄から天国、はたまたすべての世界を滑る最強の神、ゼウスであるぞ!その小さき体と脳にしかと刻み込むがいいわ!デァハハハハっ!」

見た目が小さい神様に小さいと言われるとなんだかムッとする。
ってあれ?会話が…


「できておるじゃろう?いいじゃろ?おぬしはこんな能力ちからが欲しいのではないのか?えぇ?」

うぉぉぉ!まさしく求めていたものです!
欲しいです!
お願いです、頂けませんか?
もうロリ神様とは二度と言いませんから、ゼウス様!

そう言って横たわった状態で、ヘコへコと頭だけを動かす。
そこまでやるとさすがのゼウス様も若干引き気味で、


「う、うむ、赤ん坊の姿でそこまで遜られるとやらんわけにはいかんな」

とのこと。

ありがとうございます!
ありがとうございます!
そう言って手足をばたつかせ頭をブンブン振り回して喜んでいると、頭が取れるからやめろと怒られた。


そうして、ゼウス様は何やら呪文?のようなものを唱えると、俺の頭を人差し指でつんと小突いた。

「ほれ、これでおぬしにさきの能力ちからが定着したはずじゃ。どれ、試しに…こヤツと話をしてみるとよかろう」

ゼウス様がなにやら手を握って俺の前で手のひらを広げるしぐさをする。
ポンっという音と共に小さなトカゲがその手のひらに乗っていた。

そのトカゲは手足を小刻みに動かし、ゼウス様の手から飛び降りると寝ている俺の胸の上に乗ってきた。
人以外とも話せるのか?なんて思っているとそれに答えるようにトカゲが喋りだす。

「どもども、初めましてっス!俺はえっと…う~ん、なんスかね?俺って何ですか?ゼウス様」

そうゼウス様に聞くトカゲ。
ゼウス様は顎に手を置き、一呻りするとニヤリと笑い、

「わしの力で顕現させたただのトカゲじゃ。だから名もない。おぬしが名付けてやれ」

なにやら含みがある感じの笑い方な気はするがスルーしておく。
面倒なことになりそうな気もしなくもない。

そうしていると、トカゲはキョロキョロと小刻みに頭を動かして、俺に向き直る。

「ってことなんで名前お願いできるっスか?できるだけカッコいいのがいいっス!」

う~んなんだろうか、何かいい名前…
と、ひねり出したのが…

ベータ…お前は今日からベータだ。
どうかな?

「べぇたっスか…べぇた?、ベータ…いいっスね、気に入ったっス!ところでなんでベータって名前にしたんスか?」

なかなかにおしゃべりな奴だな。
名前の意味なんて大したものじゃないけど、強いて言えば俺がアルファって呼ばれているから、ベータがいいかなって。あとは、この能力ちからのベータテストって意味もあるかな。

「べぇたてすと?っスか…まぁよくわからないっスけど、かっこいいんでベータでいいっスよ!」

そうかそうか。
気に入ったのならよかった。

小さな体を起こし、尻尾と後ろ足で器用に立ち上がってお辞儀をするベータ。
さすがは異世界、トカゲでも立つことができるとは驚きだ。
俺はまだ頭と手足をばたつかせるくらいしかできないというのに。

そんな声が漏れていたのか、甲高い声で笑うベータ。

そこに、

「水を差すようで悪いのじゃが、わしからもう一つおぬしにプレゼントをやろう」

とゼウス様が割って入ってきた。


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