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狩りへGO

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狩り開始30分。

索敵を開始したが、いかんせん獲物が一向に見つからない。
周辺の魔物たちに俺が来たことが感知されたのだろう。
ここらでベータと二人でだいぶ暴れまわったからなぁ…

お母さんが言うように危険な目には合わないが、一番の目的であるレベル上げもできず、晩御飯のステーキにもありつけない。

まぁ予想はしてたけど…昨日もそうだったし。

じゃぁどうするか。
答えは簡単。

ここで絶対会話マスタートーカーの出番ってわけです。

まずは、風と大地あたりに聞いてみるかな

『もしも~し、ここらで魔物見かけませんでしたか?…あぁ、はいはい、わかりました、ありがとうございました』

はい発見。

「ベータ、ここから西の方に500メートル進むとグレートボアの群れがいるみたいだから、まずはそこから行こうか」

「了解っす!相変わらず便利な能力っスねソレ」

「まぁね、じゃぁ行こうか」

そう、これが俺がもらった能力の一つ。
絶対会話マスタートーカーの能力の一端である。

基本的には他者と話をするだけの能力ではあるが、Lvが上がると共にその対象範囲を効果は上がっていく。
今のレベルは4だから、最終レベルになるにはあと1足りない。
それでも現状ではかなり役に立っている。

絶対会話マスタートーカー
Lv1:言語が違う種族、人種に関わらず言葉が通じ、理解できる。
Lv2:自分の言葉を直接相手に届ける&受け取ることができる(念話のようなもの)
Lv3:能力の効果範囲を自分以外にも広げることができる。
Lv4:自然などの形のないものや無機物に宿る精霊と会話ができる。
Lv5:???


はじめに与えられた時は、すでにLv2(ゼウス様のおまけで)だった。
だから言葉を発せずとも意思の疎通ができたみたいだったが、能力自体にはレベルのほかに熟練度…つまりは慣れというものがあり、意図して効果を発揮させたり対象を指定したりもできるようになるようだった。

あの時、ゼウス様に暴言を吐いたのは効果が発動したままの状態で聞こえていないものと思ってしまったせいだったのだ。

説明の一つもあってもよかったんんじゃないかと今では思う。
そしてちょこっとイラっともしてしまう。

あの神ときたらあれから一度も俺の呼びかけには答えなかった。
気が向いたら答えるとは言っていたが、気が向かなすぎだろ。
まったく…

っと、思考が過去に飛びかけてた。
いかんいかん、まずは目先ことに集中だ。


とかなんとか言っているうちに到着。
いたいた、えっと…大体6匹はいるな。

だいぶ高い木の上から見降ろす。
一応、用心には越したことはないから絶対会話マスタートーカーで周囲の木々に他にいないか尋ねてみるが、今のところは下の奴らしかいないようだった。

さて、あれだけいると晩御飯どころか一週間分のメシには困らない。
ってことで絶対に一匹たりとも逃がさん。

生唾を飲み込みにんまりと笑う。

「さぁベータ、今日もおいしい晩御飯のためにひと汗かこうか!」

「そうっスね、ママさんの料理はここらじゃ一番っスからね、とりあえず俺っチから行ってもいいっスか?」

「OKだけどちょっと待ってね~、逃げられないようにするから……さっ!」

の声と同時に同時に左手を上に向け、煽るようにクイッと五指を上に向けると同時にグレートボアの群れがいる周囲の地面が一斉に隆起し、サークル上に囲んだ状態にして、おまけに高質化をプラスする。
ご存じかと思うが、土の魔法だ。
まぁ威力と範囲は少し高めにしてあるけど、そこまで珍しいもんでもない。

「今回は魔法まで使うなんてよほど気合が入ってるっスね」

「当たり前だ、絶対に一匹も逃がさないよ」

肉は正義だ。
これさえあれば一生生きていける。

「なんだか怖いっス…。俺っチも気合い入れないとっスね。これで逃がしたら大変なことになりそうっスから…」

「大丈夫、打ちもらしても俺が逃がさないから」

「そ、それは俺っチをっすか?それともボアの方っスか?」

「ご想像にお任せします」

不穏な空気を醸す俺に、小さい背筋を震わせるベータ。
「じゃぁ行ってくるっス」と言って木から飛び降りたベータのその目は変なヤル気に満ち溢れていた気がしたは、きっと気のせいだろう。

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