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ベータの狩り

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久しぶりにいろんな意味でヤル気なってるアルファを見たっス…
肉が好きなのはわかってたっスけどあれほどとは思わなかったっスよ。

まだ8歳の子どもなのに…
異常なのは無駄に高い戦闘力くらいにして欲しいっスね。

木の上から自由落下しながらブツブツと悪態をつく。

まぁ俺ッチも肉は好きだからいいんスけどね。
いつまでも愚痴ってても仕方なしっスからそろそろ始めるっス。


さてと、一番右のボアの頭狙い…と行きたいとこっすけど、確実に全員仕留めたいっスからね。
まずはこれっス!

そう言いながら、体を変化させる。

小さな体は次第に膨れ上がり、巨大なモンスターに変身する。
獅子と山羊の頭を持ち背には蝙蝠のような翼が生え、尾は蛇となっており、極めつけは両前足の肩からは蟷螂のものであろう巨大な鎌が生えていた。

土ぼこりを上げ、ボアの目の前に降り立ち、耳をつんざく程の鳴き声を上げる。

「グルァァァァァァ!!」

ボアはベータを見たまま、まるで石になったかのように硬直する。

「ハイ、終わりっス」

見た目の醜悪さに反して、かわいらしい声で終わりを告げ、肩の鎌が空を切る。
その瞬間、すべての足を胴から切り離されたボアがあたりに転がる。

「アルファ、終わったっスよ~」

これくらいなら楽勝っス。
逃がさないか心配だったっスけど…

元の姿に戻りつつアルファを呼ぶ。
呼ばれたアルファはご満悦と言った感じでニッコニコで降りてきた。

「おつかれさま、ボア6匹、確かに全部仕留めてるね、さすがはベータ!」

「いやいや、俺ッチがやらなくてもアルファのがもっとスマートにできたんじゃないっスか?」

「さすがにそんなことないよ、こんなに見事に生け捕りにできたんだから万々歳じゃないか。いいなぁその能力、欲しいなぁ」

俺はベータにその能力を?と聞いてみる。
冗談だが。

ベータもそれをわかって「嫌っスよ!」と軽く返してくる。

しかし本当にいい能力なのは間違いない。
ベータが教えてくれたその能力はざっとこんな感じ。
今後の連携のためにとのことだった。


擬似真似メタモル
・自身が10秒以上触れたものに一定時間変身できる。
・限度時間は変身するものによる。(最長1日)
・過去に変身したものはすべて記憶できる。
・部位のみの変身も可能。
・変身ストックから混ぜ合わせることも可能。
・変身後、一定時間変身できなくなる。
・変身後はその個体能力の2割の能力値がベータ本人に加算。
・変身後は各個体のスキルを8割の威力で使用できる。


まぁ大概だよね。
流石は神様の創造物(とはいってもただのトカゲ)だ。

いつだったか、そんなに強力なら俺に変身して戦えば2倍以上の戦力になるんじゃない?と言ったことがあるが、うまくいかなかった。

いや、姿や声は俺そのものになることはできたのだが、スキルの使用やステータスの加算ができなかったそうだ。
そうなると、基礎ステータスは高めのベータであっても、ただの人間になっただけの状態だからそこまで強くもなんともないわけで…

という事で他の人になっても同じようなことが起こるのかが気になり、試しにお母さんや父さんに変身してもらったが、そこはなぜかうまくいった。
スキルの使用もステータス加算もうまくできていた。

う~ん…
やはり条件みたいなものはあるんだろう。
とりあえず現状はこのままでも特に困らないからいいんだけどね。



「さぁ、サクッと終わったし血抜きして帰ろうか」

「そうっスね、晩御飯が楽しみっス!」

足を失って胴のみとなりもがくグレートボアを前に、手を合わせてから苦しまないように一気にその命を絶つ。
臭みが出る前に急いで血抜きをしないと。
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