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帰宅….1
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ギッ…ズズ…ギッ…ズズ…
急になり出した音。
ゆっくりと歩くような音についてくるように引きずるような音。
明らかに上から聞こえてくる。
「屋根裏があるんですか?」
俺はそうカノウさんに問いかける。
「はい、あります。もしかして姉はそこにいるんじゃ…」
俺は「たぶん…」と言いつつ頷く。
それと同時に、「ここからの会話はできるだけ小声でお願いします」と付け加える。
カノウさんは俺の方を見つめ頷く。
上に姉がいるのにとは思っているだろうが、「なぜ」とは言わなかった。
今、自分の姉がどんな状態かわかっているのだろう。
感染後の姿を見たくはないと思うと同時に、自身含め俺の命も危険に晒すと思ったのだろう。
とても優しいいい子だが、その分自分を苦しめてしまう、今のこのご時世では辛い性格をしている。
俺とは真逆だ。
さて、いつまでもここに留まっているのは得策ではない。
今見つけた必要なものをさっさと外に持ち出してしまおう。
俺は、カノウさんに小声で指示をだし、できる限り静かに物資を持ちだした。
本当に必要なものから順に少しずつゆっくりと。
無理して沢山運べば、バランスを崩して落としてしまうかもしれないし転ぶ危険性もある。
何より、それが原因で怪我でもしてしまったら、今後の生活にも、いざという時に逃げることもできない。
それから何度か往復してあらかたのモノは外のシャッターに移動した。
若干汗ばむ額を拭い、その場に疲れて座り込んでいるカノウさんに、持ってきていたタオルを手渡す。
起きてすぐに重労働はかなりきつかっただろう。
休ませておけばよかったのだが、いかんせんこの状況ではそんな余裕はない。
人手はいくらでも必要なのだ。
ただし信用に足る人材のみだが。
とはいえ、ここまで来たらあとはもう物資を持ってこの家を離れてしまえばいいのだ。
という事で、乗ってきた自転車の前後の荷台に必要なものをせっせと乗せていく。
持てない重いものや、持ちきれない食料や水は小分けにして持っていく。
とりあえず今日の分は確保して、あとは明日ゆっくりともっていけばいい。
若干浮かれつつほくほく笑顔で積み込んだものをひもで縛りあげていく。
と、ここでカノウさんは俺に声をかけてきた。
「あの、サトウさん。お願いが…あるのですがよろしいでしょうか」
何だろう…食料だけは置いてけってことかな?
まぁさすがに持っていきすぎか。
う~む、ちょっと交渉だな。
「お願いですか?であれば俺からもお願いがあります。食糧なのですがいま自転車に積んでいる分だけでも分けて頂けないでしょうか?さすがに全部だとカノウさんも困ってしまいますでしょうし…」
「食料はいくらも持っていって構いません!なので、あの、その…サトウさん!」
「は、はいっ!」
「私を…私を一緒に連れて行ってくれませんか?お願いします!」
「えっと…」
ポリポリと頬を搔きながら間が開く。
正直嬉しいことは嬉しいが、俺は悩んだ。
「料理もできます!掃除も洗濯もできます!サトウさんの身の回りのことは何でもしますからお願いです!どうか連れて行ってください。こんな状況で…世界では私一人で生きていけません」
連れて行きたくないから…そういった意味で俺が悩んだわけではない。
ついてきてくれるのは全く問題ないのだが、本当に俺についてきてもいいのか?
一応こう見えても年頃の男なのだ。
いつ襲われるかとか考えないのだろうか…
不安そうに俺の答えを待つカノウさん。
今のこの状況が辛いのは分かるのだが…
俺は全く問題ないと言い切れるとは思っているのだが、カノウさんは焦って決めているのではないかと疑ってしまう。
だが、一次の気の迷いかもしれないとはいえ、自身で考えて出した答えなのだ。
「わかりました。じゃぁ、一緒に行きますか?」
そう答え、振り返ると…
カノウさんの首から上がなくなっていた。大量の血を吹出して。
そしてその後ろには、足元に転がる頭に一心不乱にかぶりついている感染者…ゾンビがいた。
急になり出した音。
ゆっくりと歩くような音についてくるように引きずるような音。
明らかに上から聞こえてくる。
「屋根裏があるんですか?」
俺はそうカノウさんに問いかける。
「はい、あります。もしかして姉はそこにいるんじゃ…」
俺は「たぶん…」と言いつつ頷く。
それと同時に、「ここからの会話はできるだけ小声でお願いします」と付け加える。
カノウさんは俺の方を見つめ頷く。
上に姉がいるのにとは思っているだろうが、「なぜ」とは言わなかった。
今、自分の姉がどんな状態かわかっているのだろう。
感染後の姿を見たくはないと思うと同時に、自身含め俺の命も危険に晒すと思ったのだろう。
とても優しいいい子だが、その分自分を苦しめてしまう、今のこのご時世では辛い性格をしている。
俺とは真逆だ。
さて、いつまでもここに留まっているのは得策ではない。
今見つけた必要なものをさっさと外に持ち出してしまおう。
俺は、カノウさんに小声で指示をだし、できる限り静かに物資を持ちだした。
本当に必要なものから順に少しずつゆっくりと。
無理して沢山運べば、バランスを崩して落としてしまうかもしれないし転ぶ危険性もある。
何より、それが原因で怪我でもしてしまったら、今後の生活にも、いざという時に逃げることもできない。
それから何度か往復してあらかたのモノは外のシャッターに移動した。
若干汗ばむ額を拭い、その場に疲れて座り込んでいるカノウさんに、持ってきていたタオルを手渡す。
起きてすぐに重労働はかなりきつかっただろう。
休ませておけばよかったのだが、いかんせんこの状況ではそんな余裕はない。
人手はいくらでも必要なのだ。
ただし信用に足る人材のみだが。
とはいえ、ここまで来たらあとはもう物資を持ってこの家を離れてしまえばいいのだ。
という事で、乗ってきた自転車の前後の荷台に必要なものをせっせと乗せていく。
持てない重いものや、持ちきれない食料や水は小分けにして持っていく。
とりあえず今日の分は確保して、あとは明日ゆっくりともっていけばいい。
若干浮かれつつほくほく笑顔で積み込んだものをひもで縛りあげていく。
と、ここでカノウさんは俺に声をかけてきた。
「あの、サトウさん。お願いが…あるのですがよろしいでしょうか」
何だろう…食料だけは置いてけってことかな?
まぁさすがに持っていきすぎか。
う~む、ちょっと交渉だな。
「お願いですか?であれば俺からもお願いがあります。食糧なのですがいま自転車に積んでいる分だけでも分けて頂けないでしょうか?さすがに全部だとカノウさんも困ってしまいますでしょうし…」
「食料はいくらも持っていって構いません!なので、あの、その…サトウさん!」
「は、はいっ!」
「私を…私を一緒に連れて行ってくれませんか?お願いします!」
「えっと…」
ポリポリと頬を搔きながら間が開く。
正直嬉しいことは嬉しいが、俺は悩んだ。
「料理もできます!掃除も洗濯もできます!サトウさんの身の回りのことは何でもしますからお願いです!どうか連れて行ってください。こんな状況で…世界では私一人で生きていけません」
連れて行きたくないから…そういった意味で俺が悩んだわけではない。
ついてきてくれるのは全く問題ないのだが、本当に俺についてきてもいいのか?
一応こう見えても年頃の男なのだ。
いつ襲われるかとか考えないのだろうか…
不安そうに俺の答えを待つカノウさん。
今のこの状況が辛いのは分かるのだが…
俺は全く問題ないと言い切れるとは思っているのだが、カノウさんは焦って決めているのではないかと疑ってしまう。
だが、一次の気の迷いかもしれないとはいえ、自身で考えて出した答えなのだ。
「わかりました。じゃぁ、一緒に行きますか?」
そう答え、振り返ると…
カノウさんの首から上がなくなっていた。大量の血を吹出して。
そしてその後ろには、足元に転がる頭に一心不乱にかぶりついている感染者…ゾンビがいた。
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