吸血鬼VS風船ゾンビ

畑山

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昼、民家の攻防戦終わり

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 民家

「どうなっているのかしら」
 輪子は首をかしげた。
 屋根裏に入り込んでくるゾンビは、徐々に減っていき、やがて来なくなった。それどころか、ベランダや壁面に飛びついてくるゾンビの数も減った。
「なんか、弱っている?」
 堀田がベランダの窓を少し開け、覗きながらいった。日が昇り、朝になっている。
「どういうこと」
「ゾンビの様子が変なんだ。動きが遅いというか、やたらと転んでやがる」
 ゾンビの数は減っていなかったが、方々でぶつかり転んでいた。
「屋根に来るゾンビも急に来なくなったわ」
「夜の間に何かあったのか」
 堀田は首をひねった。
「集まりすぎて、気分が悪くなったとか」
「学校の朝礼じゃあるまいし、そんなこと聞いたことないぞ」
「体力が切れた。なんてことはないよな」
 野口が言った。
「あいつら、疲れたりしないだろう。ずっと動いているもんだろ」
「そうだよな、ゾンビってそういうものだよな」
「どうなんですかね。ゾンビのことなんて、わからないことだらけですから」
 里山がいった。
「将棋倒しが起こったとか」
「集まりすぎて、自滅したってわけか。ありかもな」
「いや、あいつら体重軽いからな。丸くて浮いてるだろ。将棋倒しには、ならないんだ」
「そっか、踏まれても、軽いからつぶれないのか」
「そもそも、あいつら、ちゃんと距離をとって立ってるよな。パーソナルスペースっていうのか。そういうの大事にしているよな」
「手を前に出したりしてるだろ。あれで距離感とっているんじゃないか。前のゾンビに手が当たったら、ちょっと距離をとろうとか」
「人間を見つけたらそういうのお構いなしになっちゃいますけどね」
「その辺は、生きている人間と一緒だな。欲しいものがあると、手を伸ばして、できるだけ近づこうとするもんだ」
「それで、どうするんだ。何か弱ってるようだが、一か八か突破してみるか」
 栗山が言った。
「いや、それはちょっと、弱っているといっても、数はあんまり変わっていないようだからな。ここは、救助を待とう」
「弱っているのは、今だけかも知れないぞ」
「そういう可能性はあるが、無理して噛まれても困る」
 六人は、屋根の補修や建物の守りをかためた。

 救助隊

 ゾンビの様子がおかしかった。
 足の動きが遅く、片足を引きずるゾンビや、ジャンプしようとして、転ぶゾンビがいた。
「なにがあったんだ」
 戸惑いながらも、小久保はゾンビの頭に竹棒を打ち込んだ。

 それから、三日ほどかけ、弱体化したゾンビを駆除し続け、民家に立てこもった六人を無事救助した。


 署長室

「ゾンビが弱体化したのか」
 署長の田志沢栄太郎は言った。救出が成功し二日ほど経った後、堀田と小久保から、署長室で報告を受けていた。
「ええ、急に動きが鈍くなったんです」
 堀田が言った。
「そんなことがあるのか。奴らは、脳か頸椎を破壊しない限り、動き続ける。そう聞いているが」
「私も、そう聞いています」
「なら、どうしてそんなことが」
「わかりません。そもそも、死体は動きません。何が起こったって不思議では、ないでしょう」
「それは、まぁ、そうだが」
「エネルギー切れとか」
 副署長の森浩介が言った。
「奴らが現れてから五年経つ、エネルギー切れを起こしたゾンビなんて聞いたことはないが、まぁ、何が起こってもおかしくはないということか」
「弱体化というか。動き自体がおかしかったんです」
 小久保が言った。
「というと」
「足が悪いようで、引きずって歩いていました」
「ゾンビって、そういうもんじゃないのか」
「いえ、まぁ、確かに、そういう感じで歩いてはいますけど、それより、もっと、ひどい感じで、膝の関節が壊されていたような、そんな感じです。飛び上がろうとしても、膝に力が入らないような感じで倒れ込んでいました」
「壊されていたというと、誰かが、壊したということなのか」
「ズボンの膝部分や膝そのものにも打撲痕のような跡がありました。何体か、足でゾンビの膝を踏んでみたんですが、骨が砕けたような感触がありました。膝のみが正確に壊れるとしたら、人にやられたとしか自分には思いつきません」
 小久保は膝の辺りをさすった。
「ちょっと、待ってくれ。弱体化する前は、普通に歩いていたんだろ」
「ええ、壁とか屋根とか、元気によじ登っていました」
「それが、一晩のうちに弱体化した。原因は膝の打撲ということか」
「その可能性があります」
「誰がやったんだ。どうやって、一晩で、何百体もいるゾンビの膝を壊せるんだ。そもそもなんのために、そんなことができるなら、頭をやればやればいいだろう」
 署長の田志沢栄太郎の疑問に答えられる人間はいなかった。

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