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ゾンビの歌、ゾンビの群れ、市役所
しおりを挟む元教団
元合唱団の川山に、志賀山は地下のゾンビの歌が外のゾンビを引きつけるので、歌をやめるように伝えた。川山は悲しそうな顔をしたが、了承した。
ラジカセを片付け、川山が地下の施設から出ようとしたとき、一体のゾンビが声を上げた。
それは歌声だった。
悲しげなうなり声、それに呼応するかのように他のゾンビも歌い始めた。
「ああ、歌を、あなたたち歌を」
川山は涙を流した。
「すばらしい、彼らは彼女らは、人の心をとりもどしたのだ」
志賀山が胸に拳を当て感激した様子で言った。
「あの、どうするんです。歌声につられてゾンビ来ちゃいますよ」
森山が言った。
「それは、困るな。歌うのをやめろ。はいはい、やめやめ」
志賀山は手を叩き、やめさせようとしたが、しばらくゾンビ達は歌うのをやめなかった。
南から
野勝市を南北につっきる国道を三土松市のゾンビ達は、ゆっくりと北上していた。
国道沿いの歩道を、ゾンビ達は密になって歩いていた。車道を歩くゾンビもいたが、あまり少なかった。その中に、ゾンビ婆こと、柊梅子もいた。その所為かは知らないが、ゾンビの平均年齢は高めであった。
歌声は、もうほとんど聞こえていなかった。それでも前に進んでいた。
懐かしい日本の歌、名も、人の心もなくしてしまったが、子供の頃に歌った懐かしい日本の歌は、忘れていなかった。
たまらない懐かしさに引き寄せられていた。
北から
柄の悪いゾンビだった。目つきも悪く、膨れあがった背中に入れ墨がある者もいた。屋絵図刑務所のゾンビである。それが等間隔に並び南下していた。刑務所内では、移動の際は整列していた。その癖であろう。
柄は悪いが統制はとれていた。
東から
異質だった。でかく太いゾンビが何体か混じっていた。
荒船部屋所属のゾンビ力士である。
体は、ぱんぱんに膨れあがっていたが、その動きは軽やかだった。ガス肥大した分、体重が軽くなり、力士の筋力と合わさり、意外な速度を手に入れていた。
道中、人を見つけては噛みついた。
西からは、あまりゾンビは来ていなかった。
市役所
ゾンビが集団で移動しているという情報を野勝市でも把握していた。野勝市役所では、無線機や様々な方法で、市民の避難を呼びかけ、警戒を促した。
所長の田志沢は周辺の地図を広げ、ゾンビの目撃情報を元に、ゾンビの移動方向を推測した。
「こっちに、集まってきてるよなぁ」
頭を抱えた。
ゾンビをあらわす赤い点は、どれも野勝市に向かってきているように見えた。
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