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【4】レイフの友人たちに婚約者と紹介される
レイフにエスコートされて、豪奢なブルネル公爵家に入る。
カタリーナとグスタフの婚約が発表され、マリールイスはレイフに連れられて主催の二人に挨拶をした。
「カタリーナ、グスタフ、婚約おめでとう!」
「ありがとう、レイフも一目惚れをしたという可愛らしい婚約者を紹介してくれるわよね」
「ああ、もちろん。僕の婚約者のマリールイスだ。僕らの同級生にエーギル・エングダールがいただろう? 彼の妹なんだ。マリー、今日の主役のカタリーナとグスタフだ。どちらも僕の同級生で、この婚約を友人としてとても喜んでいるんだ。さあ、挨拶を」
レイフに促されると、周囲の人たちがじっとマリールイスを見た。
「この度はご婚約おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。エングダール伯爵家が娘マリールイスと申します。ブルネル公爵令嬢様が……とても美しくて……真紅のドレスがとてもお似合いで、まるでフレイヤ様のようです……」
マリールイスは緊張から言葉が震えてしまったが、カタリーナを美の女神にたとえたことで、緊張からの震えはカタリーナの美しさに感動したものと捉えられた。
マリールイスはカタリーナの華やかな美しさを目の当たりにして、またカタリーナを見るレイフの瞳の持つ熱量にもそっと気づいた。
「フレイヤ様のようだなんて、嬉しいわ。マリールイスさん、カタリーナと呼んでくださるわね? 私たちの友人であるレイフの婚約者ですもの、仲良くしましょう」
「……カタリーナ様とお呼びできる幸せを、ありがとうございます」
「あまり今夜の主役の二人をここに留めてしまっては、他の皆様に申し訳ないからね。僕らはこれで」
「レイフもマリールイスさんもパーティを楽しんでね!」
カタリーナはグスタフに肩を抱かれて、マリールイスたちから離れて行った。
それからレイフの何人かの知り合いに紹介されて挨拶をした。マリーは紹介された人たちのことを、課題を覚えるように記憶していった。
「君の挨拶はまあまあ良かったよ、七十点というところかな。少し疲れただろう」
レイフはマリールイスをホールのすぐ外のソファに座らせ、給仕からグラスをひとつ受け取り手渡した。
「白葡萄の炭酸水だそうだ。少しここで待っていてくれないか。まだ挨拶をしていない友人のところへ行ってくる。君は決してここを動かないようにね」
「はい、かしこまりました」
マリールイスはホールに戻っていくレイフの後ろ姿を見送り、炭酸水を飲んでほっと一息ついた。
(七十点をいただいたわ。これは及第点ということなのかしら。残りの三十点の内訳を尋ねたら叱られてしまうのでしょうね……)
ここはホールを囲むようにして置かれているソファの一つで、常に人目がある。ホールの女性たちのドレスを見ていると、それほど退屈でもなかった。
壁際にもソファは置かれているが、ホールの近くのこのソファは安心できた。
時々、給仕係の女性が飲み物やカナッペやフルーツの小皿をソファ横の小さな丸テーブルに置いてくれる。
その時、マリールイスのソファにカタリーナが近づいてきた。
「あらマリールイスさん、我がブルネル公爵家のパーティは退屈かしら」
マリールイスは慌てて立ち上がった。
「いいえ、こうした華やかな場所に慣れていないものですから……少し休んでおりました。申し訳ございません」
「そうね、休憩は招待客の当然の権利だったわね、どうぞごゆっくり」
カタリーナが去ると、マリールイスはへたり込むようにまたソファに座る。
給仕の女性が、今度は果実の炭酸水ではなくオレンジを浮かべた水を持ってきてくれた。
マリールイスは、それがありがたくて礼を言った。
「ご令嬢、お一人で退屈でしょう。向こうでお話でもしませんか?」
どこかの令息に話し掛けられたが、マリールイスは丁寧に断った。
「婚約者がすぐに戻りますから」
同じようにもう一人から声を掛けられたが、また同じように返した。
それにしても、レイフはなかなか戻ってこない。
(きっと私といても、レイフ様は退屈なのよ。だとしてもずいぶん遅いわ……)
そろそろ一時間くらいは過ぎただろうか、マリールイスはパウダールームに行くことにした。
手持ち無沙汰だったとはいえ、冷たい飲み物を四杯も飲んだのは失敗だったのかもしれない。
歩いていくと、壁際のつい立ての向こうからレイフの声が聞こえた。
マリールイスはつい立てに背中を向けて誰かを待っているようにして、レイフの声に耳をそばだてる。
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