GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也

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沖縄決戦に向けて。

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3月24日、ようやく機体と燃料のまとまった補充を得た第五航空艦隊。
特攻機72機、直掩戦闘機81機とこの局面とすれば比較的大規模な攻勢をかける。
そう司令長官の宇垣は決断した。
そして…
渡久地率いる8機も直掩戦闘機として、初陣を飾る事となる。
「おいおいおい…」
「信じられねえ感覚。海軍の面汚しだな。」
「直掩とか言って、結局特攻機に守られたりしてな笑」
荒木程アレではないとしても、8人の存在をクソ面白くなく感じる(主に)地上勤務の士官達は少なくなかった。
と、陰口の方向に振り返り視線を向けたものがいる。
中村剛介少尉であった。
とくに本人に睨むような意識があったわけではない。
だが…何故か先程の士官達は気圧された。

何だこいつらの目…。
特攻隊員の澄み切った覚悟とは違う。
いや覚悟以上に強力な意志。
闘志…殺意…!?
それ以降。茶化すような空気は消え去った。

そして、栄エンジンの轟音と共に…。
次々と、深緑色の翼が飛び立つ…。
半分は確実に還らず、そしてもう半分も還って来られる確率は低い。
敵はより万全の態勢を敷いているであろう。

それでも、彼らは征く。
司令長官宇垣纏はいつも通りの敬礼を、編隊が見えなくなるまで続けた。

高度5000メートルにとり、基地から南南東200キロまで進出。
渡久地は麾下の7人に伝える。
「来るぞ」
そして周囲の他の機体にも翼をバンクさせ合図を送る…。

「今日こそは食い放題だ。」
シャーザー米戦闘機隊隊長は舌なめずりした。
F6Fヘルキャット123機
それが優位な位置から攻撃すれば…。
負ける方がどうかしている。
相次ぐ空母中心へのラッキーパンチに、一時撤収を考えたわが艦隊だが、もっと貸しを取り立てないと気がおさまらねえ。
元の母艦を大破させられたパイロットもこの中にいるのだ。
覚悟しろジャップ!

日本編隊が射程内に入る3秒前。
小魚の群れが一斉に散るように、敵編隊は散開した。
!!?
状況が把握できないうちに、敵のゼロに後ろを取られていた。
しかもパイロットは渡久地でなく、斎藤勇希と中村の両少尉…!
「「死ね!」」
20ミリ機関砲合計4門、加速、ダイヴして逃れる暇もないとは…。
5発が左翼に集中。さしものタフネスを誇る機体も燃料タンクに火が付き、ぐらりと傾く。
両者示し合わせてコンビネーションを取ったわけではないが、上出来!
口元を緩める渡久地。
例によっていの一番に総指揮官が狩られ、それ以下の中級指揮官も渡久地が次々と墜として行く。
結局中堅以下のパイロットは、特攻機はじめ
敵機を狩らねばという使命感、あるいは功名心に狩られ、グラマンF6Fヘルキャットなる戦闘機の強みを活かせず、みすみす乱戦に巻き込まれてしまう。

「それにしてもだ…」
自身も3機目を墜しつつ、岩本は内心ひとりごちる。
あの学徒連中はどう考えても飛んで着陸するのがやっとの連中の筈。
3日か4日で何をしたらああなる?
明らかにエースパイロットの機動ではないか!?
そして渡久地自身の腕も…。
2、3発の機関砲弾の半単発撃ちで、次々とF6Fのコクピットの風防を狙い撃つ。
アレをやられては、いや、出来ればだが、如何な「鉄鋼所」の異名をとる奴でもひとたまりもない。
腕に加えて恐ろしいのは、機体や艦船以上に、「敵兵をしらみ潰しに殺す」ことを徹底させている事だ。
多分、パラシュートで脱出した敵パイロットもこいつは平然と撃つであろう。
確かに正しい。
戦争に勝ち抜き、自分や味方が殺されるリスクを排除する事に思考を特化させれば。
…まぁそんな思考を巡らせながら更に4機目を叩き墜とした岩本も十二分に人外の類なのだが。

なんやかやで態勢を立て直した、アメリカ戦闘機隊の前に、徐々に日本側の被害が拡大する。
が、知らず知らず高度3000メートルを切り、しかも護るべき艦隊の前衛が肉眼で見えてくる。
結局、特攻機41機がグラマンの手からまんまとすり抜け、アメリカ機動部隊に殺到する。
「よし、お前ら、お疲れ!警戒は解かず、しかし速やかに離脱だ。」
了解!!
麾下の7機とも無事、あとはどさくさに紛れ低空を這い逃れていく。
さて、なんとか4分の1でもかましてくれればいいが…。
逃れ切った後も半径80から100キロの巨大な輪形陣、濃密な対空砲火の嵐を突き抜けねばならないが…。
まず特攻組の餌食になったのは、4隻のレーダーピケット…前衛駆逐艦であった。
そこで生じたわずかな穴から、残りが突入。
続いて重巡洋艦ペンサコーラに命中2機。
さらには遂に正規空母エセックスに1機が命中し、いずれも大火災、各艦3桁前後の戦死者を出す事となる。
無論、特攻機サイドも26機が突入前に墜とされたが、ミッチャーやスプルーアンスらアメリカ艦隊首脳陣の苦悩を益々深める事となる。
特にエセックスは単機の突入としては甚大な人的損害。
パイロット41名含め411人の戦死者…。
何故か爆発由来以外の火災が激しく消火に手間取ったことも仇となった。

「どうせなら、特攻組にも燃料満タンで入れてやれば?」
前夜宇垣らに、渡久地がそう言ったのである。
「片道燃料と言ったって、現実飛行のロス分の考慮やよく分からん人情要素でかなり余裕を持って毎回入れてるだろ?
今更燃料節減ったって大した差はないって。
それよりも突入した時の焼夷効果が無視できない。特に甲板の弱い空母にはな。」
宇垣らは数分考え込んだ後、承諾したと言う。

いずれにせよ、他の直掩戦闘機と共に、「死に損ない」7名は堂々と鹿屋に凱旋したのまであった。
合わせて19機と言う撃墜戦果をひっさげて。


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