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本命の敵は。
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参謀本部航空副参謀長、樋端少将と慌ただしく引き継ぎを済ませ、連山改で本土へと向かう久保拓也。
その日の1100には帝都大本営入りしていた。
「あら本国に召喚?
半端に近いと大変ですわね。
…そうそ、ご明察。
合衆国の政界にもマスコミにも、アカがまだ入り込んでるのよ。
だから総力戦体制に中々議会も世論も同調しないの。
貴方の御国は益々危険かもしれないから気をつけてね。
愛してるわ…♡」
…と、そのような内容を最前線で見た戦況そのものにプラスして、久保は山本五十六参謀総長に報告した。
「うむ、ご苦労様。
おおよそこちらで把握している諸々とズレはないが…やはり中国共産党…人民解放軍は脅威だなぁ。
いや、不気味というべきか。
支那事変の頃は国民党の陰で戦力を温存しつつゲリラ戦。
今回はそれを交えつつ超人海戦術で押し出して来る…か。
近代戦術を極めたアメリカが本腰入れてくれてなお厳しいかもしれぬ。」
山本は腕組みをした。
「仰る通りです。」
久保は一礼しつつ、資料の束を差し出す。
「故に、この戦争を、対ソ連やライアン一党も含め、『埒を開ける』為に…。
この計画を日米独、共同で加速させたいのです。」
山本はページをめくり、流石に顔色を変える。
「勿論我が日本でも細々やって来ておるし、知ってはいたがな…。
これをもし実行すれば、お前さんも『一線を超えた一人』になるぞ。」
「承知しております。
ですが当然のごとくライアンらも亡命時、ノウハウと、モノもソ連に持ち込んでいる筈…。
正直亜威音以上の脅威、人類文明を一歩間違えれば破壊しかねない。
腹を据えて、『我が陣営』が先に握り、ライアン達ごと共産主義体制を滅却せねばなりませぬ。」
「成る程。『この先』を身をもって味わったお前さんとしては当然の結論だわな。」
大きく溜息をつく山本。
「まあ、まず東條さんもだが、お上の御心次第であるがな…。
なんとか通してみる。」
「お手数をおかけしますが、何卒。」
改めて深々と頭を下げる久保拓也。
その後形式的な会議を経て、夕刻に参謀本部を出る。車に乗り込んだ。
まだ、当然七割がた生々しいあの大空襲の爪痕…といより焼け野原に近い。
はぁ…このダメージからも…まぁ流石に米国の支援はあるとはいえ、回復しつつ大陸での厳しい戦いを貫かねばならない。
あまりアメさんに寄りかかるわけにもいかない。
まぁ別の一線超えて米空軍のカリスマ?
ルメイ将軍のアレをああしてこうしたから自分の知る歴史よりは対等の関係で事を進められるだろうが。
我が国の国民にはまだ重荷を被せることとなる。
つくづく戦争…そして軍人とは業深きものよ。
そしてホモサピエンスのオスたる自分も…。
(はぁ、宮様元帥のご意向とは言え、現段階で亜威音大改装にめぐみを立ち合わせる必要はないのに…。)
みなぎったモノはナニで鎮めるか…。
そのうちに…。
懐かしの?戦略空軍地下仮司令部へと着く。
まぁ、既に機能は地上に戻っているので、久保個人の巨大な官舎と化していたが。
結局、久保は悶々とする間もなく、暖かい内地の飯で腹を満たすと眠くなり、個室のベッドでなんやかや溜まっていた疲労分眠りこけてしまった。
同時期、ソビエト連邦、要衝スターリングラード近傍。
「一気に近傍の敵を蹂躙し、今度こそ逆包囲網を完成させよ!」
1945年の年明けまもなく、コーネフ将軍の号令一下、第二次北極星作戦が発動された。
装甲車両5000両。
歩兵込みで75万の大兵力である。
これに対し第5SS装甲師団の増派を得たドイツ、マンシュタイン元帥は、寒冷地仕様のパンター中戦車の機動力を活かし、スターリングラード周囲で鶴翼を広げたソ連の4個親衛戦車群の側背を突き、痛撃を与えては離脱するを繰り返して、再度彼らを停滞させていた。
そして勇猛かつ熟練したルフトヴァッフェ…
ドイツ空軍の荒鷲達は、無謀を承知で荒天を衝き敵地上軍に猛攻を加える。
「よーし、これで撃破898両!」
スツーカJ改の後席のガーデルマンが吠える。
「おい、人のスコアを勝手に盛るな。
精々500を超えたくらいだぞ。」
「またまたぁ、勲功立て過ぎると昇進やらなんやらで飛べなくなるから、若手にスコア譲ってるんでしょ?俺知ってるんですよー?だからせめて後世に正確なスコアを残そうと…ね?」
「フン、勝手にしろ。」
「魔王」と一体になった機体は、ソ連軍の復讐の対空砲火の嵐を悠々すり抜け上昇。
どこぞの紺色の雲の中へ消えていった。
そして…戦略機ノルニル。
「今のところ敵戦闘機の影はないわね…。
と言っても航空支援無しのままってことも…。」
無論、カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ中将である。
「流石に今日はないだろう、とは言え、油断はできないすね。」
隣を固める杉田。
何も裏を掻こうと言うのはこちらだけではない。
!!
方位026に複数の輝点!
あれは…敵の新鋭機!?
「フッケバイン…そっくりじゃねえか!」
杉田は思わず叫ぶ。
「この世界」のMiG15の実戦デビューであった。
その日の1100には帝都大本営入りしていた。
「あら本国に召喚?
半端に近いと大変ですわね。
…そうそ、ご明察。
合衆国の政界にもマスコミにも、アカがまだ入り込んでるのよ。
だから総力戦体制に中々議会も世論も同調しないの。
貴方の御国は益々危険かもしれないから気をつけてね。
愛してるわ…♡」
…と、そのような内容を最前線で見た戦況そのものにプラスして、久保は山本五十六参謀総長に報告した。
「うむ、ご苦労様。
おおよそこちらで把握している諸々とズレはないが…やはり中国共産党…人民解放軍は脅威だなぁ。
いや、不気味というべきか。
支那事変の頃は国民党の陰で戦力を温存しつつゲリラ戦。
今回はそれを交えつつ超人海戦術で押し出して来る…か。
近代戦術を極めたアメリカが本腰入れてくれてなお厳しいかもしれぬ。」
山本は腕組みをした。
「仰る通りです。」
久保は一礼しつつ、資料の束を差し出す。
「故に、この戦争を、対ソ連やライアン一党も含め、『埒を開ける』為に…。
この計画を日米独、共同で加速させたいのです。」
山本はページをめくり、流石に顔色を変える。
「勿論我が日本でも細々やって来ておるし、知ってはいたがな…。
これをもし実行すれば、お前さんも『一線を超えた一人』になるぞ。」
「承知しております。
ですが当然のごとくライアンらも亡命時、ノウハウと、モノもソ連に持ち込んでいる筈…。
正直亜威音以上の脅威、人類文明を一歩間違えれば破壊しかねない。
腹を据えて、『我が陣営』が先に握り、ライアン達ごと共産主義体制を滅却せねばなりませぬ。」
「成る程。『この先』を身をもって味わったお前さんとしては当然の結論だわな。」
大きく溜息をつく山本。
「まあ、まず東條さんもだが、お上の御心次第であるがな…。
なんとか通してみる。」
「お手数をおかけしますが、何卒。」
改めて深々と頭を下げる久保拓也。
その後形式的な会議を経て、夕刻に参謀本部を出る。車に乗り込んだ。
まだ、当然七割がた生々しいあの大空襲の爪痕…といより焼け野原に近い。
はぁ…このダメージからも…まぁ流石に米国の支援はあるとはいえ、回復しつつ大陸での厳しい戦いを貫かねばならない。
あまりアメさんに寄りかかるわけにもいかない。
まぁ別の一線超えて米空軍のカリスマ?
ルメイ将軍のアレをああしてこうしたから自分の知る歴史よりは対等の関係で事を進められるだろうが。
我が国の国民にはまだ重荷を被せることとなる。
つくづく戦争…そして軍人とは業深きものよ。
そしてホモサピエンスのオスたる自分も…。
(はぁ、宮様元帥のご意向とは言え、現段階で亜威音大改装にめぐみを立ち合わせる必要はないのに…。)
みなぎったモノはナニで鎮めるか…。
そのうちに…。
懐かしの?戦略空軍地下仮司令部へと着く。
まぁ、既に機能は地上に戻っているので、久保個人の巨大な官舎と化していたが。
結局、久保は悶々とする間もなく、暖かい内地の飯で腹を満たすと眠くなり、個室のベッドでなんやかや溜まっていた疲労分眠りこけてしまった。
同時期、ソビエト連邦、要衝スターリングラード近傍。
「一気に近傍の敵を蹂躙し、今度こそ逆包囲網を完成させよ!」
1945年の年明けまもなく、コーネフ将軍の号令一下、第二次北極星作戦が発動された。
装甲車両5000両。
歩兵込みで75万の大兵力である。
これに対し第5SS装甲師団の増派を得たドイツ、マンシュタイン元帥は、寒冷地仕様のパンター中戦車の機動力を活かし、スターリングラード周囲で鶴翼を広げたソ連の4個親衛戦車群の側背を突き、痛撃を与えては離脱するを繰り返して、再度彼らを停滞させていた。
そして勇猛かつ熟練したルフトヴァッフェ…
ドイツ空軍の荒鷲達は、無謀を承知で荒天を衝き敵地上軍に猛攻を加える。
「よーし、これで撃破898両!」
スツーカJ改の後席のガーデルマンが吠える。
「おい、人のスコアを勝手に盛るな。
精々500を超えたくらいだぞ。」
「またまたぁ、勲功立て過ぎると昇進やらなんやらで飛べなくなるから、若手にスコア譲ってるんでしょ?俺知ってるんですよー?だからせめて後世に正確なスコアを残そうと…ね?」
「フン、勝手にしろ。」
「魔王」と一体になった機体は、ソ連軍の復讐の対空砲火の嵐を悠々すり抜け上昇。
どこぞの紺色の雲の中へ消えていった。
そして…戦略機ノルニル。
「今のところ敵戦闘機の影はないわね…。
と言っても航空支援無しのままってことも…。」
無論、カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ中将である。
「流石に今日はないだろう、とは言え、油断はできないすね。」
隣を固める杉田。
何も裏を掻こうと言うのはこちらだけではない。
!!
方位026に複数の輝点!
あれは…敵の新鋭機!?
「フッケバイン…そっくりじゃねえか!」
杉田は思わず叫ぶ。
「この世界」のMiG15の実戦デビューであった。
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