新訳 零戦戦記 選ばれしセカイ

俊也

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和式機動戦of満州新京

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再び。満州に還りし男。久保拓也。
しかし既に満州と言っても、興安省一帯は人民解放軍に(50万に迫る人的損害を与えたにも関わらず)9割がた制圧され、日本軍+米空軍義勇軍は首都新京を中心とした防衛線を引き、なんとか支えていた。
北東部、黒河方面のの対ソ開戦に備えた部隊も、結局目前の火の手に対処しなければならぬ状況。
ただ恐らく、中ソ間の協定で、ソ連赤軍が雪崩込み切り取る分を「お膳立て」しておると見られ、そちらに圧力自体はさほどない。
その、Xデーはいつか。
どう考えても、米軍主力が参戦してくれるより早くなるよな。
新京第二空軍基地の司令部応接室。
米国の主要新聞に目を通しつつ、頭をひねる久保。
「民主党、共和党双方に潜っているわねぇ。
ライアンのシンパは。
後デモを各都市で行なっている連中にも、相当の資金が渡されているわね。」
ルメイ自らがコーヒーを出してくれた。
「それをさらにマスコミが煽り、反戦運動につなげる…か。」
「そうなのよ。あいつらもしっかり置き土産を急所急所に…。」
隣に座り、久保の肩にもたれかかるルメイ。
それに対して頭なでなでで返す。
「そんな中、済まないが…レシプロ機でいい。
空軍に手配されている対地攻撃機スカイレイダー改良型、200機ほど用立てて欲しい。」
「んもう、拓也はすぐこれなんだから。
わかった、なんとかするわ♡」
今度は泊まりでね、との声を背に久保は部屋を後にする。
施設内を歩く間。当然の如く米各将兵が最敬礼で見送る。
そして帰りの車の乗り際…
「曇天…か…。」
気象班はこの近傍、数日長雨が続くと言っていたな。
………。

翌日早朝5時前。新京より西方80キロ。
幾重もの履帯の軋み。
段々とそれは号音と化す。
中共人民解放軍版Tー34 44式戦車。
それら1200両 戦闘車両諸々で計2000両。
それらが新京一点を目指して進撃を開始した。
「この荒天を最大限に活かす!
奴らが航空戦力使えぬうちに、一点突破でこじ開け、新京を解放する!」
第五戦車軍団指揮官曹彪大佐は高らかに吠える。
この規模ならば、随伴歩兵を装甲車両に乗せられる。無論、いわゆるタンクデサント込みだが。

やがて、塹壕、トーチカを掘った日本軍最前線に突き入る。
申し訳程度に対戦車砲や軽機関銃を撃ち返すが、しかしうるさい蠅とばかりに掃射すると蜘蛛の子を散らし車両や駆け足で逃げていく。
「はっは!ざまあねえぜ!」
「大した帝国軍人様だ笑」
方々で中共軍の兵士たちが嘲笑する。
「とにかく速度戦だ!
本日日中(雲は低くどす黒いままだが)に新京から日本鬼子を駆逐する!」
「御意!」
そこらの集落を蹂躙しつつ、順調に都市部の至近に迫ったころ。
!!
「敵装甲車両…。」
言いかけた所で、前衛指揮車両からの連絡が途絶える。
「!備えてやがったか!」
曹彪は舌打ちしつつ、他車両に状況報告をさせる。
「敵の戦車部隊!視認できる範囲では100両以上かと!?」
その程度だよなぁ。
勝利を確信する曹彪。
日本軍はかなり改善されたとは言え、全般に機械化率はドイツ等に圧倒的に劣る。
流石に連中なりに新型を投入はしているだろうが、質量ともそのドイツを追い込んでいるソ連の潤沢な支援を元手に、現在もこれからも、圧倒的な機甲戦力がもたらされつつあるのだ。

一方、新京第二空軍基地。
「いやらしいわね。
昨日各種爆弾ナパーム、カンバンになるまで念入りに絨毯爆撃したのにまた沸いてきて…。
それも後ろで錬成していた機甲師団?」
「ルメイ閣下!日本第七師団が中共軍と会敵とのこと。」
「ウフフ、お手並拝見といこうかしらねえ。」

「よし…落ち着いていくぞ。」
西中佐の「愛馬」五式中戦車 いわば和製魔改造パンターG型…。それら150両が迎撃していた。
「テーッ!」
1500m先の目標に、恐るべき精度で命中する五式中チセの長砲身7.5センチ砲。
次々とあり得ない距離から被弾炎上する麾下の44式に、血色を喪う中共軍指揮官曹彪。
「怯むな!撃っては押し出せ!」
言われたとおりに応射する44式戦車の大群。
だが向こうの射撃はまるで衰えない。
こちらはほとんど照準が的外れと言うより、数に任せての盲射に近い。
それでも直撃弾は出すが、オリジナルより更に改良された避弾経始、傾斜装甲に日本側の5式中戦車はほとんど実害皆無である。
距離1000m少しに迫る頃には、中共軍側は3割に迫る打撃を受けていた。

「流石に訓練が一番行き届いていても、実戦射撃…まして対戦車戦の経験はないからな向こうさんは。」
とは言え犠牲かえりみず、3割でも押し込んでこられたらキツいが…。
西がつぶやいた矢先、後方上空から爆音。
はは、御出馬か。

戦略機「零風」
そして…。
「時差ボケも治らんうちに…まぁいいハンデだけどね!がっつり手当はもらうわよ!」
「ああ、色々と手厚く、な。」
ノルニルであった。
カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ中将のご帰還である。
「クソ!この雨ん中でか、正気か!?」
中共軍指揮官の1人が叫ぶ。
挨拶がわりのナパームを蒔き、そして…。
 、掃射!!」
機首に一機のみ、ではない。
翼下外部に2門づつ、1機4門の対戦車掃射であった。
速度機動性は落ちるが、手練れのMiG15でも来ない限りは問題はない。
空陸で存分に敵44式戦車を狩りまくる日本軍。
そして激戦の中曹彪大佐は戦死、完全に中共虎の子の人民解放軍機甲師団は壊滅した。
だがそこから得意の超人海浸透戦術…。

が。

荒天を切り裂き、空爆とは別の鉄槌が中共軍に降りかかる!
砲兵!
「すまんな遅くなって。副長閣下。」
八原方面軍作戦参謀が自ら立ち会う中、かき集められた帝国陸軍の各種重砲430門が、戦略機2機の弾着観測の助けも得て吠えに吠えまくる。
「全戦線を面制圧、その勢いでいけ!全弾撃ち尽くせ!」
無論機甲師団もこれに加わる。


中共軍では、ナパーム絨毯爆撃とも質の違う地獄絵図が各所で…。
「ぐぬぬ、これでは何十万いようが、如何にゴリ押ししても…割に合わぬ。」
馬高歩兵軍団長は、自らの責任で撤退を命ずる。
戦略機や地上偵察班の複数の報告で、今回もとりあえず難を逃れたことを認識した日本側将兵は凱歌を上げる。
どうにか、凌いだか…だが今後はどうか。




…数時間後、互いに大陸の両端超えて再会した男女。
「ああんもう、いきなりキスもそこそこに乳にくる奴あるか。相変わらずバカ拓也…。
…あっんっんっ、また大きくなったか?知らないわよ。あっ、強く吸わないで…。」


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