悪役過ぎない気まぐれ財閥令嬢が野球と言うスポーツで無双します!?

俊也

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野球って何?

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東京 港区 聖ファラリス学園


ちょうど、穴場をみつけた。
街中に出て適当な仲間と遊び歩く時間帯だけど、今日はそう言う気分じゃない。
なんでここに作ったのか分からない学園内のベンチに腰掛けて、外の空気を吸いながら…。
ひとりスマホゲームをする。
パズル系でなくチームを組んでの銃の打ち合い…FPSであった。
と言うか彼女…総見寺彩奈そうけんじ あやなのワンマンチーム、ネットの向こう側の仲間達も呆れつつも彼女の腕前に頼り切ってる状態だったが。

ハァハァ…ゼェ…
場違いな?呼吸音が聞こえる。
スーツ姿の老紳士、確かに若々しいが明らかに無理した様子で全力で駆け寄って来たのだが…。
「ハッチーだ!大丈夫?」
「そっそっ、それはこちらの台詞ですお嬢様!
あの、今まさにお嬢様の再試験が始まる時間なのですぞ。
早く教室に…。」
「いいよ。めんどくさい。
ハッチーが悩む事じゃないって。」

「そのハッチーと言う呼び方も…私はこれでも執事です故。確かに名前は平八郎ですが。。
まだせめて爺と呼んでくださった方が…。」

ポン、コロコロ…。
転がって来たのはボールであった。
野球のそれだ、と言うことはスポーツ経験も関心もない彩奈にもかろうじてわかった。

なんとなく手に取ってしまう。
こんな硬いんだ…。

50mくらい先の野球部用グラウンドから転がって来たのは確かであった。
しかし夏の大会が近いのか、シート打撃と呼ばれる練習に集中している部員達はグラウンド外に出たファールボールの行方を気にかける余裕もない。

ただ…
「あれ?あいつ3年の総見寺じゃね?」
「ほんとだー、またぼっち受けるー笑」
「それより明智くんマジやばいよカッコいい!」
「それな!イケメン高身長!」
一部クラスメイトも混じった女子生徒の群れだった。

「ああ、多分あそこで投げている明智洸太郎というピッチャー目当てなんでしょうな、マスコミで時々出ます。プロ野球のドラフト候補…」
「そう…(無関心)」
数秒程彩奈がボールを握り、ぼんやり見つめる。
「ねえあいつボールで何する気?」
「まさか明智くんの気を引こうとか?」
「投げる?投げちゃうの?」
「無理っしょただのゲーマーにはw」
また同級生女子達の嘲笑が聞こえる。

(彼女らは総見寺家自体の凄さは知っていたが、そのきょうだい達の中で何一つ秀でた才能を見せず、努力をする様子も見えない彩奈が言葉は悪いが出来損ない扱いされていることを知っていて、カースト下位に勝手に認定していたのである)

「どれ、そのボールは爺が返して参りますから、お嬢様は直ぐに…」

平八が言いかけた時、いきなり彩奈はボールを持った右手を振りかぶる。

ちょ…
「ウケるーホントに投げる気だ。」
しかもいわゆる女投げ、下手なダーツのような腕の軌道。

ぴしいっ!
空気を弾く様な音が響く。
!!??
その音と殺気に似た何かで、野球部員達が振り向く程の…

放たれたボールはうなりを上げ、真っ直ぐグラウンドに…。
「明智!危ねえ!」
マウンド上のエースはちょうどチームメイトの1人を三振にとった直後だった。
で、彩奈の投じたボールに反射的にグラブを出す。
風船が弾けた様な捕球音。
明智洸太郎は端正な顔をしかめた。
いま目の前で起こった出来事を、目では理解できても脳と身体が拒否していた。
身長160センチ台半ば、細身の女子が明らかな素人投げで、70m前後の距離を届かせる。
しかも、レーザービームの様な軌道。
プロの強肩外野手達にギリギリ出来るかと言うレベル…!
何だ!?自分は何を見せられてるんだ!?

周囲の部員も、50代の小太りの監督も…。
そして、煽っていた女子生徒達も、呆然とフリーズするしかなかった。

「返したよー!じゃあね。」 
踵を返し、立ち去ろうとする彩奈。
ゲームの方は途中ログアウトする形になってしまったが、チームの連中は呆れつつ納得してくれるだろう。
ただ、ハッチー、執事が腕を握って離さない。このまま再試験にいくしか…。

「おい待てやコラ。」
野太い声。明智…ではない。
成川隆也。
次に打席に入ろうとしていたバッターである。
均整のとれた体格、ワイルド感ある精悍な顔。
実際彼のファンも多く、実力もチームで5番を打つ…明智には及ばないがプロのスカウトリストには高評価の欄に入っていると聞く。

成川はバットを突き出す。
「謝れよ。練習の邪魔しといてよ」
そうだそうだと一部の女子生徒達。
「は?なんで?」
ピキッ!
無言だが成川の怒りのオーラが周囲に伝わる。
「おい成川!」
監督がたしなめ、2年生の控えキャッチャーも間に入るが彼は不動、仁王立ちで彩奈を睨みつけたままだ。
「えっじゃあどーすれば納得するの?」
平八爺が謝罪ムーブに入ろうとするのを腕で制しながら、真顔で彩奈は切り返す。
「…お前、えらくタマに自信があるみたいじゃねーか」
「え?よくわかんないけどあんたと勝負すればいいの?」

ああ、言っちゃった。
平八が頭を抱える。

一瞬間が空き、女子生徒達のみならずグラウンドの部員達からも歓声に似た声がどっとあがる。
「ははっ、おもしれー!なんちゃって野球女子とドラフト候補のガチ勝負かよ!?」
「成川くーん!バットでわからせしてやってえ!」
「調子こいてんなよビ○チ!負けちまえ!」

監督は呆れて、好きにしろと言う風に頭を振った。
ふう、と明智は一息つくと、グラブを外す。
そして彩奈はゆっくりと、制服のままマウンドに向かう。

そして、三塁線に引かれた白いラインを超えたのである。




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