G〜超怪獣王黙示録 ヒトを超えし者

俊也

文字の大きさ
3 / 4

覇王上陸

しおりを挟む
俺はしばらく海中に潜った。
熱線の威力がさらに増している。
荷電粒子砲か?
スーパーレーザー的な何かか?

いや、そんな疑問より、ますますせめぎ合いが俺の世界で激しくなってしまっていた。
自らの持つ超破壊力への恐怖。
それを存分にふるい、かつての同族どもを蹂躙する圧倒的快感、万能感、破壊への衝動。
結局…後者が俺を支配することとなる。
とにかく俺に砲火を向けてきた。その事への怒り。敵と認定したものは徹底的に抹殺する肉体の本能。
そう言ったものが段々ヒトであった頃の思考回路を書き換えつつあった。

そして深海をぶらついたあと、立ち寄り感覚で浮上したのは…。
上海沖、多分10数キロの位置…そう脳か神経がざっくりとであるが把握していた。
どういう理屈かはわからないが…
それよりも。
咆哮し、ここからは半身を出して海上を突き進む。
ジェット戦闘機、数百機の爆音。
しかし、もはやミサイル発射をする暇も与えず予想空域を熱線で往復するように薙ぐ。
なすすべもなく蒸発、あるいは爆発炎上し、幾つものオレンジ色の筋となって落下していく大陸国解放空軍J20戦闘機「だった」残骸…。
最早うるさいハエにも満たないレベルであった。
そして、見えてきた高層ビルの群れ。
何度かネットやテレビで見た、ヒトの頃の記憶。
だが今は破壊対象にすぎない。
と…その前に…。
港湾や海岸線に、並んでいる鋼鉄の獣…いや、こちらから見れば虫ケラだが。
99式戦車を中心とした機甲部隊…それが軽く数百両。
耳障りな砲声が幾重にも重なり、当然俺の全身に爆炎がいくつも重なる。
が、こちらは足を止めない。
戦闘ヘリ、あるいは補充されて来たらしい戦闘機隊も加わるが…。
俺にそれらしきダメージや痛覚さえもない。
ただとにかくシンプルに怒りを増幅させただけである。
返答は熱線の一斉射であった。海沿いをなぞるように。
凄まじい爆炎。
戦闘ヘリが衝撃波か何かでバランスを崩し、墜ちていくのが見えた。
そして上陸寸前の地点で2度目の熱線。
最初に直撃したのは上海タワーであった。
真っ二つに、巨大なビルを快感。
そこからさらに、目につく構造物を薙いでいく。
青の光の筋とオレンジ色の爆炎のコントラスト。
それが、俺の快楽中枢をさらに刺激する。
気づけばその一撃で、この巨大都市の半分は業火に包まれていたのである。
初めて全体重で大地を踏み締める感覚。
そこで、上陸を宣言するかのように高らかに咆哮する。


インタビュー編
ファン・ホァ(仮名)
元IT大手企業、「スーザキュア」女性社員

「そうです、あの日、本社ビルに始業まもなく当局の脱税疑惑の抜き打ち捜査が入ってまして。
経営陣にとっては寝耳に水、会社の半国有化の口実、濡れ衣だなんて話がありましてー。
まあ一介の社員の私達もパソコンとスマホ押収されましたがどうせ何も出ないし、それ自体には大して動揺してなかったんですよ。
本当にプライベートなのはダーククラウドに入れてましたし笑
ただ、朝のネット掲示板やSNSの騒ぎが妙に気になりまして…フェイク画像だ、動画だデマと言っても色々な方面から同じ情報が入ってるんですよね…。
始業前スマホしまう直前に関連動画やつぶやきがいきなり削除され始めた。
その事が胸騒ぎにつながってましたね。
もし、あんなのが本当にって話なら…。
仕事どころじゃって言うか世界がひっくり返っちゃうって話でしょ?
当局の捜査員がそわそわし始めて、そそくさと帰り始めた。
これが決定打でしたね。
捜査官がCEOには当面営業停止を命じたらしいって話聞いた直後に、私トイレ行って来ます、ってオフィスを抜け出したんです。
で、一気にエレベーターに乗って、地上1階に降りたらタクシーを捕まえて。
その瞬間に地響きを聞いたんです。
なんでもいいから市街地から遠くに飛ばしてってドライバーには。
多分あと3分遅かったら逃げ出そうとする車列の大渋滞に巻き込まれてましたね。
政府…当局は「G」の存在をやっつけるまでは隠そうとしてたみたいですけど、少ないなりに私みたいな対応をした人はいたと思いますよ?
15分くらいで地響きがひどくなり、爆発音まで聞こえましたけど、とにかく走り続けてって。
なんだこれはアメリカとの戦争かなんてドライバーつぶやいてましたけど、そんなレベルの話だったらどんなに良かったか。
多分、途中から恐怖に震えてたんですね。私…。
1時間少し南西方向に行ったところで、ラジオがようやく避難命令を出して…。
ドライバーが、姉ちゃんすまないが仕事で行けるのはここまでだって。
で、多めに料金渡して降りたんです。
そこで初めて見た光景は忘れられません。
当たり前に見ていた高層ビル群。
職場を含めた日常が、燃えて崩れ去っていく様。
そしてあの大怪獣のシルエット。
今も耳に残るあの鳴き声。

それまで積み上げて来たものが本当に跡形もなく切り崩されちゃいましたからね。
共産党政府の少し怖い統治も、要領よくやれば適当にあしらえるとか、頑張ってスキルをつけて企業でお金を稼げばそれなりに楽しめるとか。
そういう人間の合理的な考えを根こそぎ破壊してしまえる存在がいるなんて…

私たちの祖先は、もしかしたら『彼』の同族をみて色んな聖獣や神獣の伝説として、記録に残したのかもしれませんね…?」

様々な苦労を経てインドまで逃れた彼女は、そこで民間用のG監視警報アプリの開発等に、国連関連の企業で貢献している。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...