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覇王上陸
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俺はしばらく海中に潜った。
熱線の威力がさらに増している。
荷電粒子砲か?
スーパーレーザー的な何かか?
いや、そんな疑問より、ますますせめぎ合いが俺の世界で激しくなってしまっていた。
自らの持つ超破壊力への恐怖。
それを存分にふるい、かつての同族どもを蹂躙する圧倒的快感、万能感、破壊への衝動。
結局…後者が俺を支配することとなる。
とにかく俺に砲火を向けてきた。その事への怒り。敵と認定したものは徹底的に抹殺する肉体の本能。
そう言ったものが段々ヒトであった頃の思考回路を書き換えつつあった。
そして深海をぶらついたあと、立ち寄り感覚で浮上したのは…。
上海沖、多分10数キロの位置…そう脳か神経がざっくりとであるが把握していた。
どういう理屈かはわからないが…
それよりも。
咆哮し、ここからは半身を出して海上を突き進む。
ジェット戦闘機、数百機の爆音。
しかし、もはやミサイル発射をする暇も与えず予想空域を熱線で往復するように薙ぐ。
なすすべもなく蒸発、あるいは爆発炎上し、幾つものオレンジ色の筋となって落下していく大陸国解放空軍J20戦闘機「だった」残骸…。
最早うるさいハエにも満たないレベルであった。
そして、見えてきた高層ビルの群れ。
何度かネットやテレビで見た、ヒトの頃の記憶。
だが今は破壊対象にすぎない。
と…その前に…。
港湾や海岸線に、並んでいる鋼鉄の獣…いや、こちらから見れば虫ケラだが。
99式戦車を中心とした機甲部隊…それが軽く数百両。
耳障りな砲声が幾重にも重なり、当然俺の全身に爆炎がいくつも重なる。
が、こちらは足を止めない。
戦闘ヘリ、あるいは補充されて来たらしい戦闘機隊も加わるが…。
俺にそれらしきダメージや痛覚さえもない。
ただとにかくシンプルに怒りを増幅させただけである。
返答は熱線の一斉射であった。海沿いをなぞるように。
凄まじい爆炎。
戦闘ヘリが衝撃波か何かでバランスを崩し、墜ちていくのが見えた。
そして上陸寸前の地点で2度目の熱線。
最初に直撃したのは上海タワーであった。
真っ二つに、巨大なビルを焼き切り倒す快感。
そこからさらに、目につく構造物を薙いでいく。
青の光の筋とオレンジ色の爆炎のコントラスト。
それが、俺の快楽中枢をさらに刺激する。
気づけばその一撃で、この巨大都市の半分は業火に包まれていたのである。
初めて全体重で大地を踏み締める感覚。
そこで、上陸を宣言するかのように高らかに咆哮する。
インタビュー編
ファン・ホァ(仮名)
元IT大手企業、「スーザキュア」女性社員
「そうです、あの日、本社ビルに始業まもなく当局の脱税疑惑の抜き打ち捜査が入ってまして。
経営陣にとっては寝耳に水、会社の半国有化の口実、濡れ衣だなんて話がありましてー。
まあ一介の社員の私達もパソコンとスマホ押収されましたがどうせ何も出ないし、それ自体には大して動揺してなかったんですよ。
本当にプライベートなのはダーククラウドに入れてましたし笑
ただ、朝のネット掲示板やSNSの騒ぎが妙に気になりまして…フェイク画像だ、動画だデマと言っても色々な方面から同じ情報が入ってるんですよね…。
始業前スマホしまう直前に関連動画やつぶやきがいきなり削除され始めた。
その事が胸騒ぎにつながってましたね。
もし、あんなのが本当にって話なら…。
仕事どころじゃって言うか世界がひっくり返っちゃうって話でしょ?
当局の捜査員がそわそわし始めて、そそくさと帰り始めた。
これが決定打でしたね。
捜査官がCEOには当面営業停止を命じたらしいって話聞いた直後に、私トイレ行って来ます、ってオフィスを抜け出したんです。
で、一気にエレベーターに乗って、地上1階に降りたらタクシーを捕まえて。
その瞬間に地響きを聞いたんです。
なんでもいいから市街地から遠くに飛ばしてってドライバーには。
多分あと3分遅かったら逃げ出そうとする車列の大渋滞に巻き込まれてましたね。
政府…当局は「G」の存在をやっつけるまでは隠そうとしてたみたいですけど、少ないなりに私みたいな対応をした人はいたと思いますよ?
15分くらいで地響きがひどくなり、爆発音まで聞こえましたけど、とにかく走り続けてって。
なんだこれはアメリカとの戦争かなんてドライバーつぶやいてましたけど、そんなレベルの話だったらどんなに良かったか。
多分、途中から恐怖に震えてたんですね。私…。
1時間少し南西方向に行ったところで、ラジオがようやく避難命令を出して…。
ドライバーが、姉ちゃんすまないが仕事で行けるのはここまでだって。
で、多めに料金渡して降りたんです。
そこで初めて見た光景は忘れられません。
当たり前に見ていた高層ビル群。
職場を含めた日常が、燃えて崩れ去っていく様。
そしてあの大怪獣のシルエット。
今も耳に残るあの鳴き声。
それまで積み上げて来たものが本当に跡形もなく切り崩されちゃいましたからね。
共産党政府の少し怖い統治も、要領よくやれば適当にあしらえるとか、頑張ってスキルをつけて企業でお金を稼げばそれなりに楽しめるとか。
そういう人間の合理的な考えを根こそぎ破壊してしまえる存在がいるなんて…
私たちの祖先は、もしかしたら『彼』の同族をみて色んな聖獣や神獣の伝説として、記録に残したのかもしれませんね…?」
様々な苦労を経てインドまで逃れた彼女は、そこで民間用のG監視警報アプリの開発等に、国連関連の企業で貢献している。
熱線の威力がさらに増している。
荷電粒子砲か?
スーパーレーザー的な何かか?
いや、そんな疑問より、ますますせめぎ合いが俺の世界で激しくなってしまっていた。
自らの持つ超破壊力への恐怖。
それを存分にふるい、かつての同族どもを蹂躙する圧倒的快感、万能感、破壊への衝動。
結局…後者が俺を支配することとなる。
とにかく俺に砲火を向けてきた。その事への怒り。敵と認定したものは徹底的に抹殺する肉体の本能。
そう言ったものが段々ヒトであった頃の思考回路を書き換えつつあった。
そして深海をぶらついたあと、立ち寄り感覚で浮上したのは…。
上海沖、多分10数キロの位置…そう脳か神経がざっくりとであるが把握していた。
どういう理屈かはわからないが…
それよりも。
咆哮し、ここからは半身を出して海上を突き進む。
ジェット戦闘機、数百機の爆音。
しかし、もはやミサイル発射をする暇も与えず予想空域を熱線で往復するように薙ぐ。
なすすべもなく蒸発、あるいは爆発炎上し、幾つものオレンジ色の筋となって落下していく大陸国解放空軍J20戦闘機「だった」残骸…。
最早うるさいハエにも満たないレベルであった。
そして、見えてきた高層ビルの群れ。
何度かネットやテレビで見た、ヒトの頃の記憶。
だが今は破壊対象にすぎない。
と…その前に…。
港湾や海岸線に、並んでいる鋼鉄の獣…いや、こちらから見れば虫ケラだが。
99式戦車を中心とした機甲部隊…それが軽く数百両。
耳障りな砲声が幾重にも重なり、当然俺の全身に爆炎がいくつも重なる。
が、こちらは足を止めない。
戦闘ヘリ、あるいは補充されて来たらしい戦闘機隊も加わるが…。
俺にそれらしきダメージや痛覚さえもない。
ただとにかくシンプルに怒りを増幅させただけである。
返答は熱線の一斉射であった。海沿いをなぞるように。
凄まじい爆炎。
戦闘ヘリが衝撃波か何かでバランスを崩し、墜ちていくのが見えた。
そして上陸寸前の地点で2度目の熱線。
最初に直撃したのは上海タワーであった。
真っ二つに、巨大なビルを焼き切り倒す快感。
そこからさらに、目につく構造物を薙いでいく。
青の光の筋とオレンジ色の爆炎のコントラスト。
それが、俺の快楽中枢をさらに刺激する。
気づけばその一撃で、この巨大都市の半分は業火に包まれていたのである。
初めて全体重で大地を踏み締める感覚。
そこで、上陸を宣言するかのように高らかに咆哮する。
インタビュー編
ファン・ホァ(仮名)
元IT大手企業、「スーザキュア」女性社員
「そうです、あの日、本社ビルに始業まもなく当局の脱税疑惑の抜き打ち捜査が入ってまして。
経営陣にとっては寝耳に水、会社の半国有化の口実、濡れ衣だなんて話がありましてー。
まあ一介の社員の私達もパソコンとスマホ押収されましたがどうせ何も出ないし、それ自体には大して動揺してなかったんですよ。
本当にプライベートなのはダーククラウドに入れてましたし笑
ただ、朝のネット掲示板やSNSの騒ぎが妙に気になりまして…フェイク画像だ、動画だデマと言っても色々な方面から同じ情報が入ってるんですよね…。
始業前スマホしまう直前に関連動画やつぶやきがいきなり削除され始めた。
その事が胸騒ぎにつながってましたね。
もし、あんなのが本当にって話なら…。
仕事どころじゃって言うか世界がひっくり返っちゃうって話でしょ?
当局の捜査員がそわそわし始めて、そそくさと帰り始めた。
これが決定打でしたね。
捜査官がCEOには当面営業停止を命じたらしいって話聞いた直後に、私トイレ行って来ます、ってオフィスを抜け出したんです。
で、一気にエレベーターに乗って、地上1階に降りたらタクシーを捕まえて。
その瞬間に地響きを聞いたんです。
なんでもいいから市街地から遠くに飛ばしてってドライバーには。
多分あと3分遅かったら逃げ出そうとする車列の大渋滞に巻き込まれてましたね。
政府…当局は「G」の存在をやっつけるまでは隠そうとしてたみたいですけど、少ないなりに私みたいな対応をした人はいたと思いますよ?
15分くらいで地響きがひどくなり、爆発音まで聞こえましたけど、とにかく走り続けてって。
なんだこれはアメリカとの戦争かなんてドライバーつぶやいてましたけど、そんなレベルの話だったらどんなに良かったか。
多分、途中から恐怖に震えてたんですね。私…。
1時間少し南西方向に行ったところで、ラジオがようやく避難命令を出して…。
ドライバーが、姉ちゃんすまないが仕事で行けるのはここまでだって。
で、多めに料金渡して降りたんです。
そこで初めて見た光景は忘れられません。
当たり前に見ていた高層ビル群。
職場を含めた日常が、燃えて崩れ去っていく様。
そしてあの大怪獣のシルエット。
今も耳に残るあの鳴き声。
それまで積み上げて来たものが本当に跡形もなく切り崩されちゃいましたからね。
共産党政府の少し怖い統治も、要領よくやれば適当にあしらえるとか、頑張ってスキルをつけて企業でお金を稼げばそれなりに楽しめるとか。
そういう人間の合理的な考えを根こそぎ破壊してしまえる存在がいるなんて…
私たちの祖先は、もしかしたら『彼』の同族をみて色んな聖獣や神獣の伝説として、記録に残したのかもしれませんね…?」
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