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スメラギ皇国 その窮地に

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「ここは、我がスメラギ皇国の領土、貴重な鉱山です。
シナックス連邦の皆様はご退去ください。」
当たり前のように自国の鉱山から貴重な資源を持ち出す、オーク種族系列の屈強な鉱夫集団は耳を貸さない。
金髪の、まだ20にも届かないような女性の率いるひ弱な群衆の声になど。
「もう一度警告します、ご退去なさい!」
女性…と言うよりは少女の声に近い…が響き、数十秒間の間が開く。
が、その後の展開は少女らスメラギの人々にとっては悪夢に近いものだった。
オーク達の中で特に凶悪味のある数十名が、棍棒等を片手ににじり寄ってきたのである。
「おう、お嬢さん、俺ら難しい事はわかんねえからよぉ。
領土がどうとか線引きの話されても困るんだわ。」
「こっちもこの稼業で身体張って食ってんだからよ?
てめーらもハラ決まってんだべなぁ!?」
振り下ろされる棍棒。
鈍く肉を叩く音がする。
…!
「オットー!」
「お嬢様、今のうちに皆ともども…なんとかここはこの爺が防ぎますれば。」
「そんな…」
「無法者ども、殴るならこの私を殴るがいい!」
「ハァ!?笑」
「死に損ない一人の命で落とし前つけられるワケねーだろ!」
「そこの嬢ちゃんや他の女でエンジョイしなきゃ意味ねンだわ」
「ジジイ死んじゃえよ!」
極太の腕から極太の棍棒が振り下ろされる。
少女が恐怖に目を瞑った瞬間。

ガイィン!
巨岩に当たったかのようにオークの棍棒が跳ね返される。
!!??
「クッ、魔術…障壁か!?」
「誰が小細工しやがった!?」

はぁ…。
俺は渦中の当事者達に向けてゆっくりと歩を進める。
「チュートリアルもなしに、いきなり実戦かよ。異世界らしいな。で、普通に中世っぽい雰囲気…」

「んだテメェワ!!?」
「こいつらの味方か!?」

「お前らの敵って事は確からしいな。」
「クソがブッ殺せ!?」
で…出ますよ。
領域展開!
「魔導兵器召喚『アパッチ』!」
こちらに向け殺到してくるオークの顔色が変わる。
正面ではない、上空だ。

なんだ!?鉄の鳥!?いや巨大なハチ!?
俺の元いた世界における対戦車攻撃ヘリAH64ロングボウアパッチ。
それが4機。
こいつらには意味不明の怪鳥、飛行生物に見えるであろう。
もちろん俺の思念が攻撃媒体の形を取っただけで、元の世界のような有人攻撃ヘリコプターではない。
まるで簡易なCGのような大雑把な外見。
だが、その攻撃力、火力は。
「全火器使用自由、排除せよ!」
次々とアパッチは機関砲を、ミサイルの火箭を放つ。
もちろん実体弾同然か、それ以上の破壊力!
「ぬわがあっ!」
「ひょげべべべべ!」
「ごあっ!なんなんだコイツ!」
「逃げ、逃げろう!!?」

逃さねえよ。
この『アパッチ』には弾切れと言う概念はない。
元々スメラギの人々に危害を加えようとしていた連中の他に、平然と資源を運びだそうとしていた奴らにも30ミリと言う特大の機関砲の雨嵐を浴びせる。
そして対戦車用のヘルファイアミサイル。
「スメラギ皇国を舐めた報い、キサマ達から受けよ!」
少なくとも視野に入るもの全員は、10分と経たぬうちに薙ぎ払う。
と言うより挽肉となり、あるいは燃え尽きる。
「あ、悪魔…」
「お前たちに言われるなら光栄。」
同じ手順で召喚、実体化した44口径拳銃
いわゆるマグナム弾をオークの生き残りにぶち込む。

どうにか、「初陣」は飾れた…。
一息つき、スメラギの群衆を顧みる。
みな、あまりの光景に声も発せず、青ざめ呆然と立ち尽くしているという態であった。
正直俺自身、正義を称して振るう圧倒的な暴力に酔い、一通りやり切ってしまうとそこからふっと我に返ってどう振舞ってよいかわからない感はある。
「…何という…」
??
先程殴られていた老人か?
「何という事をしてくれたのですか!
とんでもない、とんでもないことになりますぞ!ゲフン」
ふらついた身体の老人を支え、後を引き取る少女。
彼女が後を引き継いだ。
「ただでさえ、向こうのシナックス連邦とは一歩間違えば戦争になりそうなのです。
そうした緊迫した状態なのです。
だからこそ、私たちは非武装での抗議にとどめていたのです。
理不尽な領土侵犯などで挑発や侮辱を受けても…?」
「うん?それで何か変わったのかな?」
!?
一度萎えかけたエネルギーが、彼女に刺激され再燃したかのようだった。
「やめてください、お互い平和が1番です。
どうか引いてください。
そう言って、言葉でどうにかしようとしても、さっきの奴らにその爺さんも殴られた。」
「それは…」
言葉に詰まってしまう。
その姿も美しく可憐だ…
色白の金髪美女、美少女。
前の世界で画面の向こう側の存在として見てきた女優やモデルよりも数段…。

会話の流れを無視して、そんな風に思ってしまったが、そのまま言葉を続ける。
「…この国に軍隊はないのか?出動するだろ普通?
あなた方みたいな素人に出る幕与えず。」
「護衛軍ならばいます。強大な『同盟国』も…
でもだからこそ、安易には動けないのです。
確かに私たちは、出過ぎた上に自己の身を守れないくせに、というのはありますけど、それでも国が蝕まれている状態で行動しないわけには…。」
「あー、わかった。
いや、わかってはいないけど、大体の事情は察したと言うかね…。」

「それはそれとして、あんたに助けられた恩は恩としてだ!」
別のスメラギ人の壮年男性が声を上げた。
「あんたもまた申し訳ないが身元不明の侵犯者という事になる。
しかもやった事がやった事だ。
申し訳ないがこの先にある我が国の都市、ハクハラの役人に引き渡さなければならない。」
俺は大きくため息をつき、周囲を見回す。
「わかった。とりあえず飯と寝るところがあれば。」
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