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子供
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「ねぇ、あれ人間じゃないかな?」
「確かに……そして子供のようにも見えますね」
スーツ姿のガルグは魔王の娘アナに答える。
この男、ガルグはアナの生まれた時から仕える直々の執事なのだ。
執事なので当然服装は質の良いスーツに革靴となかなか拘っているらしいがこの世界にスーツなどそうそうないので殆どの人に語っても話が通じないという悲しい現実だ。
アナとガルグの2人はドリールドと呼ばれる荒廃した土地を歩いていた。彼らは魔王城ラスガリラ周辺の警備のためここを見回っていたのだ。
そして特に異変もなく帰路につこうとしていた頃小柄な人間らしきものを見つけたのである。
基本人間と魔族は敵対していて何百年かに1度人間と魔族の大戦争が行われているという睨み合っている関係なのだ。
そんなことは魔王の娘のアナも当然知っているのだが何せ子供なのだ。助けてあげるのは当然と言わんばかりの正義を掲げる魔族では珍しい性格を持っているのである。
「取り敢えず声をかけてみようよ! 子供だしなにかあったのかもしれないわ」
「そうですねぇ、行きましょうか」
2人は1kmほど離れた人間にすぐさま近づく。身体能力が超人なほどに高められているこの2人は1kmほどの黒い物体を小柄な人間と視認し僅か30秒ほどでその子供に声をかけられるあたりまで接近していた。
身長は150cm前後といったところか、なにやら黒みがかった木を杖がわりにして今にも倒れそうな姿勢で1歩ずつ歩いている。
また、その子は全身から黒い靄が出ていて不気味な感じがしたのだ。
その時……
バタァン
目の前を歩いていた子供がうつ伏せで倒れる。
「ガルグ! どうしよう!」
(ほう、黒いオーラですか)
アナが心配めいた顔でガルグの顔を見るが、ガルグはまた別のことを考えていた。
アナはそんなガルグの顔を見て余計に心配して肩をポンポンと叩く。
ハッと我に返ったガルグはどう対処すべきかアナの性格も考慮して考える。
「アナ様が助けてあげたいのならば助けまで差し上げましょうが、治癒系はアナ様の方が断然得意かと」
「分かった!」
ブツブツ呟いていたガルグだが助ける許可がおりたのだからすぐさま子供に駆け寄る。
「ねえ、大丈夫?」
背中を軽く指先でつついて見るが子供は反応しない。微塵も動く気配を感じないのだ。
「ガルグ、死んじゃったのかな?」
涙が出そうな目でガルグを見る。
ガルグは子供の胸付近を凝視して応える。
「いえ、それはないでしょう。まだ『核』が動いています」
「よかった! でもこの子魔力がほとんど無くなっているわ」
「とりあえずラスガリラへ連れて帰りましょう。私たちの魔力も直接この子に補給できるのですがこの子の素性も知りたいですし」
魔力は人から人へ移すことが出来るのだが移してあげた人はその移した分の魔力を失うことになる。
魔力がなくなるとこの子供のようになり意識を失うのだ。
まだ魔族の領地でないドリールドではなにに出くわすか分からないのでガルグはそれも考慮した。
「そうだね。ガルグおぶってあげられる?」
「構いませんよ」
ヒョイと子供を持ち上げお姫様抱っこのような形でその子を抱える。
「では行きましょうか」
その時、ガルグはだき抱える子供が持っていた木を見てまた思う。
(これは、、ヤヌスガエラでは……?)
この子供につい益々気になることが増えていくガルグだが全てはラスガリラへ帰ってから。
先に走って行ったアナの背中を眺めガルグも土を蹴り出す。土はとてつもない砂埃が舞い上がった。
そしてガルグはアナを追いかけラスガリラへ向かうことになった。
ガルグは腕に抱える子供を一切ゆらさずにーー
「確かに……そして子供のようにも見えますね」
スーツ姿のガルグは魔王の娘アナに答える。
この男、ガルグはアナの生まれた時から仕える直々の執事なのだ。
執事なので当然服装は質の良いスーツに革靴となかなか拘っているらしいがこの世界にスーツなどそうそうないので殆どの人に語っても話が通じないという悲しい現実だ。
アナとガルグの2人はドリールドと呼ばれる荒廃した土地を歩いていた。彼らは魔王城ラスガリラ周辺の警備のためここを見回っていたのだ。
そして特に異変もなく帰路につこうとしていた頃小柄な人間らしきものを見つけたのである。
基本人間と魔族は敵対していて何百年かに1度人間と魔族の大戦争が行われているという睨み合っている関係なのだ。
そんなことは魔王の娘のアナも当然知っているのだが何せ子供なのだ。助けてあげるのは当然と言わんばかりの正義を掲げる魔族では珍しい性格を持っているのである。
「取り敢えず声をかけてみようよ! 子供だしなにかあったのかもしれないわ」
「そうですねぇ、行きましょうか」
2人は1kmほど離れた人間にすぐさま近づく。身体能力が超人なほどに高められているこの2人は1kmほどの黒い物体を小柄な人間と視認し僅か30秒ほどでその子供に声をかけられるあたりまで接近していた。
身長は150cm前後といったところか、なにやら黒みがかった木を杖がわりにして今にも倒れそうな姿勢で1歩ずつ歩いている。
また、その子は全身から黒い靄が出ていて不気味な感じがしたのだ。
その時……
バタァン
目の前を歩いていた子供がうつ伏せで倒れる。
「ガルグ! どうしよう!」
(ほう、黒いオーラですか)
アナが心配めいた顔でガルグの顔を見るが、ガルグはまた別のことを考えていた。
アナはそんなガルグの顔を見て余計に心配して肩をポンポンと叩く。
ハッと我に返ったガルグはどう対処すべきかアナの性格も考慮して考える。
「アナ様が助けてあげたいのならば助けまで差し上げましょうが、治癒系はアナ様の方が断然得意かと」
「分かった!」
ブツブツ呟いていたガルグだが助ける許可がおりたのだからすぐさま子供に駆け寄る。
「ねえ、大丈夫?」
背中を軽く指先でつついて見るが子供は反応しない。微塵も動く気配を感じないのだ。
「ガルグ、死んじゃったのかな?」
涙が出そうな目でガルグを見る。
ガルグは子供の胸付近を凝視して応える。
「いえ、それはないでしょう。まだ『核』が動いています」
「よかった! でもこの子魔力がほとんど無くなっているわ」
「とりあえずラスガリラへ連れて帰りましょう。私たちの魔力も直接この子に補給できるのですがこの子の素性も知りたいですし」
魔力は人から人へ移すことが出来るのだが移してあげた人はその移した分の魔力を失うことになる。
魔力がなくなるとこの子供のようになり意識を失うのだ。
まだ魔族の領地でないドリールドではなにに出くわすか分からないのでガルグはそれも考慮した。
「そうだね。ガルグおぶってあげられる?」
「構いませんよ」
ヒョイと子供を持ち上げお姫様抱っこのような形でその子を抱える。
「では行きましょうか」
その時、ガルグはだき抱える子供が持っていた木を見てまた思う。
(これは、、ヤヌスガエラでは……?)
この子供につい益々気になることが増えていくガルグだが全てはラスガリラへ帰ってから。
先に走って行ったアナの背中を眺めガルグも土を蹴り出す。土はとてつもない砂埃が舞い上がった。
そしてガルグはアナを追いかけラスガリラへ向かうことになった。
ガルグは腕に抱える子供を一切ゆらさずにーー
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