ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第四章 怪奇!化け猫談義

幸せのサーモン

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 食堂の中、照明はランプである。
 天井から吊り下がったランプの趣ある光が、僕達を照らしている。

 いきなり、小林さんの解説というか、宣伝というか、お話が入る。

「こちらのマヨネーズは、当パーク協会のモノをお使い頂いてます。平飼いで、環境に配慮した循環型養鶏です。」

 そうか、美味いのは、まず間違いないな。

 そのマヨネーズや、他の調味料、盛り付けられてる野菜を使い、「黄金の左手」で佑夏はサーモンの刺身を見事に、綺麗~な洋風サラダにしてしまう。

 見た目からして、既に、とてつもなく美味そうである。

「あら、佑夏ちゃん、左利きなの?カッコいいわね。」

 佑夏の手際の良さに、驚いた表情を浮かべながら、水野さんが問いかけてくる。

「は~い、そうなんです~!」

 そして、姫は僕に魅惑の「サーモンサラダ」の皿を差し出すと。

「はい、中原くん。食べてみて。」

「ありがとう、佑夏ちゃん。」

 皿を受け取り、一口、食す。

 絶妙~!!!な味付け!!!どうして、蟹座の女性ゆうかがやると、調味料の配分がこうもベストなのか?
 優秀なコンピューターでも、脳に内蔵されているかのようだ。
 それだけでなく、食べる者への優しさと思いやりが感じられて、温かく幸せな気持ちになってしまう。

「旨~い!!!」

 演技でなく、つい叫んでしまう。あ、みんなの手前、恥ずかしいな。

 しかし、余りにも旨すぎて、箸は止まらず、次々にサーモンを口に放り込んでいると。

「あの~。」

 テーブルの向かい側からの声。

 ん?見てみると、理夢ちゃんが両手でサーモンの皿を持ち、目を大きく見開き、ヨダレを垂らしそうな表情で、こっちを見ている。

「ご夫婦みたいなとこ、申し訳あらしまへんけど。ウチのも、お願いできしまへんか?」

 女子高生りむちゃんの、この申し出に、佑夏はニコニコ顔で答える。

「うん、いいよ。お皿くれる?理夢ちゃんはどんな味が好きなの?」

 相手の好みを聞きながら、姫はまた、美しく綺麗なサーモンサラダを作りあげる。

「はい、できたよ。」

 佑夏にそう言われて、渡された皿を、理夢ちゃんは、待ちきれないといった様子で受け取ると

「おおきに!」

 早速、女子高生らしく、両肘の脇を締め、胸の前で軽く両手を握って、可愛らしくパクッ!

「ん~!美味しいわ~!!」(京都弁イントネーション)

(今、氣付いたが、この子も美少女だな。表情が凄く爽やかだ。)

 至福の笑顔となってしまった理夢ちゃんを見て、隣で食い入るように目を見張っていたルミ子さんは

「何!ホンマか!?白沢さん、すんまへん!ウチのもおたのします!

「は~い!」

 いつも通りの優しく、明るい返事。すっかり、シェフと化してしまった姫に

「佑夏ちゃん、私のも、いいかしら?」

 水野さんも続き、

「すいません、私もお願いできませんか?」

 クールな小林さんまで、「食欲の権化」に

「白沢様、私の物も、やっていただけないでしょうか?」

 ディーンフジオカ添乗員も、職務を忘れているし。

(おい、ジンスケ。もちろん、オレにも喰わせてくれるんだろうな?帰ったら、佑夏に頼んでくれよ。)

(ぽん太!?お前な~!!!)

 終いには、この中原仁助をして「不気味」と言わしめる、山田さんまでもが、おずおずと佑夏に皿を差し出す始末。

 こうして思う存分、僕達は姫の「食材芸術作品」を堪能することができたのである。

 ふと、昼間見た森に棲むヤマネを想う。

 自然と小さな小動物は、こんなにも人間同士の絆を紡いでくれるのか。

 今日、初めて会ったばかりなのに、僕達は既に、かけがえのない仲間になっている。

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