現実放棄し異世界へ

井出 遥玖

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第二章

二ー二

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 出遅れた。完璧に出遅れた。
 まさかみんな始まった途端に一斉に攻めに行くとは…
 どうすっかな…今から行っても人が多過ぎて攻撃に参加出来ないだろうし…
 あっ、一人だけ誰も攻めに行ってない騎士がいるな。よし、あそこに行こう。
 でも、一対一か…ま、いいや。
 とりあえずその騎士の右側から周りこんで…
「ハァッ!!」
 槍を突き出すと、
 カーンと音がして、受け流された。
 そのまま一気に距離を詰められ、木剣で水平斬りを放たれた。て、危なっ!!
 俺はどうにか槍の柄で受け止め、距離を取る。
 あっれ~おかしいな?この人だけ動きのキレが異常に良い気がするぞ~?
「はっ、バカだなあの「一四二」番」
「ああ、騎士団最強とも言われている団長に挑むとはな」
「なんのために他の受験者が避けていると思っている」
 …まじかー。騎士団最強か~。
 …俺を見ているのは俺担当の審査員一人だけみたいだな。他の人は俺が負けると思って興味をなくしているな。
 …ははっ、おもしれえ。どうせあっちは本気出せねぇんだ。出来るとこまでやってやらぁ!!
 ケイは楽しそうな、それでいて獰猛な笑みを浮かべて戦い始める。

 ケイは槍を使って猛攻をする。突いて切り払って旋回し再び切り払う。二回突いて石突で殴る。攻撃パターンが被らないように、そして近づかれないように攻撃する。しかし、その全てはことごとく捌かれる。
 攻撃中の隙とも言えないほんの僅かな攻撃の隙間、団長は盾で槍を強く殴り、剣で切りかかってきた。
 ケイは殴られた槍を無理に戻さず、そのまま放し、右手で背中にある一本の片手剣を掴み、抜き払う。
 またしてもカーンという音が鳴る。だが、今回の攻撃が当たったのは盾ではなく剣だ。そのまま鍔迫り合いに持ち込んだ。左右に力を入れ揺す振るが崩せない。離れ際に胴を狙うが外れる。
 ここからもう一度猛攻を開始する。袈裟斬りからの手首を返して逆袈裟斬り、上段水平斬り直後の下段水平斬り、やはり捌かれてはいるが、今はまだ反撃の余裕がなさそうだ。
 今度はケイから攻める。ケイは右水平斬り、左水平斬りと攻撃をした直後、左手で二本目の片手剣を抜いた。そのまま右の剣で切った場所を僅かにずらした位置を、左の剣で斬る。
 そこからは二本の剣を時には同時に、時には交互に、と振り続けた。右、左、左、右、左、右、同時、左、右、右…
ケイ自身もどう振っているのかがギリギリわかるスピードで攻撃する。
 何度目かの攻撃時、団長の受け方に余裕がでてきた…気がした。
 ケイは右からの水平斬りで二本の剣を同時に盾に叩きつけると、二本の剣をその瞬間に放し、背中の両手剣を抜き、振り下ろす。
 これも受けられるか…。
 ケイは今度は片手剣を二本使っていた時のようなスピードを捨てて、攻撃の重さで勝負に出る。一発でも受け損ねたら即勝てるように。
 振り下ろし、水平斬り、突き…重さを利用出来る攻撃で攻める。
 そして、団長がケイの攻撃に余裕を持って対処し始めた頃、ケイは一際強く剣を振るう。
 カーンという音がまたしても鳴ったが今度の音は少し低い。団長がケイの攻撃を受け損ねたのだ。
 チャンス。
 だが、このまま両手剣で攻めていてはすぐに体制を立て直される。
 そう判断したケイは、両手剣を振った力をそのままに、投げるように両手剣を手放す。軽くなった両手で両腰から短剣を逆手に抜く。
 ケイは二本の片手剣を使う時以上のスピードで、しかもよりトリッキーな動きで常に手と足を動かし続ける。
 団長も盾だけではなく、剣を振るう。ケイの攻撃を受けるため、ケイの攻撃を妨げるため、純粋に攻めるため、使い方の違いはあったが先程までとは打って変わり、試験の動きから、戦闘の動きへと変化していた。
 まだまだまだまだ…
 ケイは攻撃を止めず、隙あらば回り込み、死角を取ろうとする。
 しばらくの間、均衡が続き、遂に防御を崩した。
 もらった。
 その隙間に攻撃を入れる直前、
「やめー!!」
 試験終了の合図があった。
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