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異世界って信じるか?

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「はあぁ。ようやく終わった~。」
 錦越周治(にしきこえ しゅうじ)は普通の高校に通っている高校2年生である。しかし、その高校は、ちょっと変わっていて、呪術が必須科目である。とは言っても、人を呪い殺すようなことは学習しない。あくまで、呪われた人を助けるために学ぶのである。最近、世間では、人を呪い殺す事はよくあることで、早期発見、早期解呪が心がけられている。また、自分が呪われたときに自分で解呪することも日常茶飯事なのである。運悪く呪いに気づけなかった人は、体の「コア」まで呪いが回った時にパタッと死んでしまうのである。コアまで呪いが回る前に発見できた場合、呪い主を突き止めることができるが、呪いが回った後だと、呪い主は迷宮入りしてしまう。生き抜くだけで大変な世界になってしまったものだ。
 「帰って漫画でも読むか」
 周治は帰宅部で、基本的に授業が終わった後は基本、家でだらしなく過ごしている。最近は漫画を読むことにはまっていて、屋根に乗って景色を眺めながら漫画を読んでいた。
 「やっぱり異世界系は最高だよなあ!俺も異世界でド派手に戦いたいぜ。役職とか天性の才能かなんかで最強の旅人って感じで暴れまわって、二次元風可愛いヒロインに「愛してる~♡」とか言われてみたい!!!くぅぅ~」
 周治はいつものように屋根の上で独り言を言っていた。恋愛系の漫画を読んでいるときは、「ハーレムの世界でモテモテになりたい」といい、SFを読んでいるときは、「宇宙探索をしているスタイルのいいお姉さんに愛されたい」と、結局のところ、モテれば良いということなのである。
そんなこんなで独り言を言っていると、妹である、錦越愛奈実(まなみ)が窓から顔を出して、
 「お兄ちゃんは、なに意味の分からないことを言っているの?彼女いない歴=年齢のお兄ちゃんがモテるわけないじゃない。変なこと言ってないで、夜ご飯食べるよ?せっかく作って呼びに来てあげたんだから、早く降りてきなさい」
 と、言ってきたので、
 「はいはい」
 と返事をして、部屋に戻り、キッチンへ向かった。

 「おまたせ」
 「お兄ちゃんおそ~い。はやくしないと冷めちゃうじゃない!」
 「ごめんごめん。いただきます」
 愛奈実と二人で並んで食事をとっていると、周治が
 「なあ、お前は異世界って信じるか?」
 と尋ねた。愛奈実はつまらなそうな顔をして
 「そんなものあるわけないじゃない!お兄ちゃんは馬鹿だなあ。でも、あったら楽しそうだよね」
 周治は、愛奈実にマジレスされるだろうと思っていたので、なかなか驚いた。いつもはツンツンしてるのに!
 「だよな。やっぱりないよな。あ、ありがとう!ごはん。美味しかった。ごちそうさま!」
 そう言い残すと、周治は二階に駆け上がった。下から「野菜残すな!」と聞こえた気がするが、気のせいだろう。また続きを読もうと、屋根に上ろうとしたその時に違和感を覚えた。虹色の輝きが目に入ってきたのである。
 「あれ?光ってる、、、」
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