7 / 129
第一節 〜始まりの街〜
007 出来たら反撃したいな。出来なきゃ終わるし
しおりを挟む
ボーイズ&ガールズ、反撃です。
ご笑覧いただければ幸いです。
―――――――――
という訳で第二ラウンド開始です。出来たら反撃したいな。出来なきゃ終わるし。
おお、凄い、結構高いのに壁の出っ張りを足掛かりに軽快に登っていく。オリンピックのボルダリング選手張りに速く正確だ。彼女、悪役侯爵令嬢だったんだよな。いや、いくら悪役でもバリ貴族の娘さんが凄すぎないか? それとも残念令嬢なら行けるのか。
閑話休題『トランプの兵隊』もそうだったけど、異世界の人って基本の身体能力が高いかも。身体もざっと見だけど、ひと回り程大きいように感じるし。
それはそれとして、女の子のお尻を下から眺めるのってやっぱりいいよね。ロマンだよな。あ、見えそう。チッ、カボチャかよ。改善が必要だな。
プリっとしたお尻越しに僕を見下ろし彼女「……変態」
「……何が……」
「タヒね」
「……ごめんなさい」
「それと私、悪役でも残念でもないから。唯の侯爵令嬢。本物の」
僕は眉毛の横を薬指で掻き、言うか迷っていた言葉を口にする。「君も僕も、勿論アイツらも誰も死なないし、殺さない」
彼女はカボチャパンツ越しに僕をじっと見つめていた。何を言っているのか理解している瞳で。
僕はさっきまで唯の高校生だった。人を殴った事なんてないし、争い事も極力避けてきたタイプだ。上手く出来るとは到底思わない。それでも。
「殺せと言ってる訳じゃない。逆に殺さないでくれ。この年で殺人犯に成りたくないし、そんなの絶対ムリ。ただ逃げたいだけだ。でもこれからやる行為は確実に暴力だ。打ち所が悪ければそれなりの重い怪我をするかもしれない。でも。
僕らは弱い。僕は君の助けが必要だし、君は僕の助けが必要だ。優先すべきは君と僕だけ。だから躊躇するのはやめよう。その他は忘れよう。僕らは無事に逃げる。そして家に帰ろう。それだけ。
それに残念だけど君のアレ、全力でも人は殺せない。せいぜい赤くなってヒリヒリする程度。だから安心してブチカマシしてくれ」
魔法なんて未だに疑ってるし信用してないし、全くよくわからん。でも今は彼女のそのよくわからん“爆烈炎のなんちゃら”に頼る。
って少しでも楽したいとか、使えるものならなんでもいいとか、そんなの思っていないよ。……たぶん。……半分ぐらいは……。
そうさ、半分以上さ。だから何だ。
追い詰められてんだこっちは。僕もハナも。
魔法は純粋な暴力装置だ。暴力を振るうには決意がいる。人を傷つけてしまうかもしれない嫌悪感と、逆に人を壊す事への暗い興奮と快楽、その相反するふたつを封じ込める覚悟が必要だと思う。よくわからんけど。人は残念だけど愛を語るのと同じ脳ミソで人を容易に害する。全くよくわからんけど。
たぶんだけど、魔法ってヤツはイメージだと思う。
魔力はわかる。エネルギーだ。エネルギーを物質や現象に変換するのが魔法なら、魔法ってなんだって話だけど、それがイメージなんだと思う。裏で似非賢者サマもそうだって言ってるし。
実にあやふやで掴みどころのないブラックボックスだ。深層心理にまで関わるものなんだろうか。よく判らんけど。でもそう考えると失敗や得手不得手が出てくるのも納得する。また善悪(実にチープな言い回し)のバランスや葛藤からの不調や不成立も考えられる。
人を傷つける嫌悪感が多すぎて、人に対して魔法を使えなくなるのではないかとの僕が思う彼女への懸念。
僕は思惟する。彼女は人を傷付ける可能性に無意識にリミッターが掛かり、殺傷性を伴う熱量をそもそも作り出せないと。少なくとも僕が知る彼女には無理だ。だから僕が行うのは其の“咎”を肩代わりする事。思い切り力を使えるように。少しでも。
彼女は僕の話を聞き終わると何気に掌を僕に伸ばし、いきなり大玉の炎が吹き出し僕を襲う。無詠唱だ。僕は首を捻り躱す。予想より大きさと速さが段違いで思わず「ヒエッ!」悲鳴を上げてしまった。
超ビビった。心臓バクバク。背後の壁に穿った火の玉の焦げ跡に冷や汗タラタラ。これって、充分な殺傷能力は有ったっぽくね? マジで。
僕の懸念。彼女への思い。カッコイイ演説はなんだったのか? 女の子って恐。
彼女は壁の上で仁王立ち。ニヤリと笑った。かぼちゃパンツ丸見えですけども。
「ねえ、だから可愛いオタマジャクシをチラチラさせながら説教しないでくれる。誰にもの言ってるの?」
かっちょいいな、かぼちゃパンツ。君がゲロ姫だってことは絶対忘れてやんないからな。ズリ上がってたカーデガンを定位置に戻し。
「君が貸してくれたカーデガン、ちゃんと身につけておくよ。まかせて」スリスリ擦り付けてやった。
彼女は嫌な顔をして「そのカーデガン、それなりに気に入ってたのに、廃棄ね」
「洗えばまだ着れるよ。いや、敢えて着てほしい」
「止めて、私を穢さないで」
楽しんでんなー、おい。
「でも、ありがとう」と彼女。
そんな和気藹々なやり取りも此処で終わり。丁度角から『黒フードの男』を先頭にガヤその他が姿を現す。
さあてと、……行くぞ!
僕は駆ける。『黒フード』目掛けて。僕を追い抜いてテニスボール大の炎の塊が“トランプの兵隊”を襲う。一人の顔にヒット。ひっくり返る。威力はないけど。もう一発。最右翼の顔左上に直撃。連射出来てる。それも速い。痛い厨二呪文も聞こえない。イイ感じだ。
威力はコップ一杯200cc程度の熱湯を至近距離から掛けた程度の衝撃と熱さ。一瞬だけならヒリヒリする位で一度の熱傷にも届かない。が、それでも顔に直撃すれば無視も出来ない熱さ。
あれ、なんで? さっき僕の顔を狙った炎弾はこんなチャッチクなかった。もっと殺傷力があったのに!
なんて思ってない。逆に僕はホッとした。
さっきはああは言ったが、普通の女の子に例えその力があったとしても生身の人を相手に安易に出来るものじゃないし、しちゃいけない。と思う。彼女も嬉々として行っている訳じゃない。でも思考考慮して決断してくれた。ありがたい。そして申し訳なく思う。
でもなんで僕にだけ殺傷力増し増しなの。僕って嫌われてる?
三人目は外れた。外れてもいい。外れて後ろのガヤの胸に当たり派手に火の粉モドキが弾ける。ハッタリでも密集しているからこそ動揺が走り、足が止まる。
僕はそのまま『黒フード』に迫る。
奴は馬鹿でかい剣を抜き正面から大上段に振り被る。僕は縮地の踏み足膝抜きで、後ろ足から伝わる重力を純粋な推進力に変え急加速。よし、上手く重力をコントロール出来てる。
初めて使った時は戸惑いと恐れが強すぎたんだと思う。焦ってたし。これが仮に魔法なら、呪文は要らない。ただ思う。そして。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
質量荷重万有引力制御機構魔技法・初級【微増幅及び斥力獲得】は万有引力、重力を打撃力・速度に変換する身体基本連動運動にてコントロール可能。
と結論 ∮〉
即ちDon't think.Free
迫る刃下を掻い潜り『黒フード』の左横の男にジークンドーの足の長いストレートリードを叩きこむ。縦拳が鳩尾に食い込む。此処は内臓損傷を目的とする寸勁を使わずに背中に抜ける拳で男の身体自体を吹き飛ばす。後ろのガヤに勢いよくぶち当たり混乱が広がる。そこに炎の弾が襲う。イイ感じだ。因みに直前で『黒フード』にビビって目標を変えた訳ではない。ビ、ビビってねーし。
敵の陣営内に敢えて飛び込む。腕を思い切り振り上げてノックダウン狙いの重い一発を、何て言わない。一瞬だけ体重を載せた鋭く速い手数で急所を狙う。相手の懐や死角に入り常に一対一の状況を作る。背中は彼女の魔法が守ってくれると信じて。
左の男が僕を串刺ししようと剣を突き出して来るのを敢えて踏み込み、左手の逆手剣鉈ナイフで迫りくる剣先の横腹を弾き、その反動を利用して身体を廻し、速度に変換した右拳を柄を握った相手の親指に撃ち潰す。当てた反動を利用して腕を折り体重を載せた肘を正中に叩き込む。
超接近戦を仕掛ける。距離が離れれば数の力で刃物を振るう敵に膾にされる。剣の安全圏ゼロ距離、懐内で独楽のように廻り距離がない分を遠心力で補う。背を見せないことで死角を減らす。
相手の身体を力場、肘を支点として反動を乗せ素早く半回転しながら移動、回転の乗った足裏で左の別の男の脹脛を横から踏み膝を壊し、そのまま回転してサッカーボールキックを蹲った男の顔にめり込ませる。
僕を狙っていた後ろの男の後頭部に火の粉が散る。彼女の魔法だ。
動きの止まった相手に振り向かずに足を後方へ振り上げ、踵を金的にめり込ませる。凄く痛そう。足元でジタバタしてる。ごめんなさい。
その反動を振り子の力に変え、前の別の男の金的に爪先をめり込ませる。
えっ、なに? 金的ばかり狙って卑怯だって? そうだね、だから?
ごめんなさい。何言ってるかわからない。
あっ、痛そう。痛いよね、御免ね。また金的一個潰した。
貸してもらった中折れ? 剣鉈ナイフは左逆手で持ち、盾代わりとして使っている。流石に白刃を素手では防げないし、攻撃的ナイフとしてはね……。彼女は守り刀と言っていたが文字通り守ってもらってる。何かスゲー不平不満の声が聞えてるような気がするが無視。これ以上頭の中の住人は要らない。おお、流石守りの盾、丈夫じょうぶ。五月蠅いよ。
五月蠅いと言えば、僕の頭の中で似非賢者様の声が絶えず響いていた。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
実地研修値を多重同時加速思考付与型編纂疑似脳へ転送、再演算の上、最適化、生体へとフィードバック。同時に生体ブラッシュアップを同時進行。再び実地研修取得値を同軸多重同時加速思考付与型編纂疑似脳へ転送、再演算の上、最適化、生体へとフィードバック。同時に生体へのブラッシュアップ。た、楽し~
と結論 ∮〉
うるせえ! わったから黙ってやれ。
少しずつ、速く。軽くなっていくのはイイが……。だからこそ、僕の身体は……。
「ホーホホッホホー、まるで相手になりませんわ。この這いつくばるゴミムシどもが‼」
ゲロ姫様だ。ホーホホッなんて笑い方する人、初めて見た。うん、真面目に悪役令嬢してたな、アレ。
「ねえ、ハム君てば聴いて聞いて、私のことを『流石ヴレゥ侯爵家の最悪魔導師』とか、『爆烈炎の鬼女』とか称えてる」
それ称えてないぞ、最悪とか鬼女とか。聖女じゃないんかい。まぁ、楽しそうならいいんだけど。
「えー、ナニそれ、♯$%$%&’~|”#’!!!♯$%$%&’~|”#’!!!ってなにそれ」
『トランプの兵隊』の一部が何やら怯えながら彼女に訴え掛け、それにしっかり彼女は答え会話が成立している。炎弾をバカスカ容赦なく撃ち当てながら。ひどい。でも器用。
「ねえ、ハム君聴いて聞いて。あの人たち、私を襲おうとした裸の変態ハム君から助けようとした自分達を、何故に攻撃するのかって言ってる。止めて欲しい、お願いしますって。お嬢様? あ、私の事ね。一緒にお屋敷に戻ろうって。確かに屋敷で見たことある顔かも。如何しよう」
「見たことある顔って、確かか?」
「うーん、高貴なお嬢様としては下々の事までよく覚えてないかな。良くわかんない。てへぺろ」
わりかしヒデーな、炎弾をぱかすか撃ちながら宣う悪役令嬢がかえって清々しい。まあ僕も金的6つ目だけど。喉と目玉は遠慮してる。
僕は少し考え、口早に言って欲しい言葉を“日本語”で伝えた。
「そこに居る裸の少年は私の友人です。裸で困っていたので助けようとしていた処にあなた方の一部とソコの『黒いフードの男』に訳も解ずに襲われたのです。私とその裸の友人はただ逃げただけです。私に害を及ぼさないと誓えるなら先ずは剣を収め、後ろに下がりなさい」
『トランプの兵隊』の半分ほどが互いに顔を見廻し、おずおずと剣を収めて後ずさり、首を垂れ膝をついた。
おお、やるね悪役令嬢。戦端が崩れる。今だ。逃げる。絶好のチャンス。と、思ったのもつかの間、首を垂れた兵隊の背後から近づいた人影がその首を跳ねた。噴水の様に吹き出る血吹雪。宙を舞う呆けた表情の頭。おースプラッタ。早々にハナとの約束は破られちったよ。誰も死なない、死なせないって豪語した自分が恥ずかしい。でもさ。
ああ、居たなこんな人。フワフワサラサラの金髪キラッキラ碧眼の『フワサラ金キラさん』。笑顔が眩しい。遅れて主役登場ってとこか。二つ目の頭が飛ぶ。何処《どこ》にいたんだよこの人。って、味方じゃなかったのか? 最初から金ピカ乙ゲー攻略対象イケメンで胡散臭かったけど。嫌だな。出てこなきゃよかったのに。クソが。
そんなこと言うなよ。楽しもうぜ。
そう、ハンサムな無言の表情で問いかけられた。
鼻がシュッとして高くてカッコイイ。
おまけに、いい匂いがしてる。実に楽しそうなハッピーな匂いだ。
衆人わんさかの広場では強いがやけに鈍重で力任せなイメージがあった其の剣先が、今では華麗な流れるような、でも酷く冷たく見る者を瞬時に凍えさせる“冴え”に代わっていた。
『フワサラ金さん』ってば、キャラ変えすぎ。やっている事も何を意図しているかも意味不明。あ~ぁ、こうゆう能力が高くて不思議ちゃん系意味不明野郎が一番苦手。僕ってば常識人だから。そこ、異論は認めない。
『フワ金さん』が爽やかにニッコリ微笑む。
チッ、嫌な予感しかしねー。
そこにハナに従順を示し残った『トランプの兵隊』達を弾き飛ばし、『黒フード男』の豪剣が横薙ぎに凶悪に僕に迫る。あ、アンタもいたね。
場が混乱する。剣を納めて下がった者達、戸惑った顔のその他、それらがワラワラドタバタてんでに逃げ出し、残った三分の一の数人と『フワ金さん』と『黒フードの男』だけになった。
残った数人をよく見ると身に着けたトランプ柄の四角い制服も何処《どこ》かチグハグだし、その顔に動揺も恐怖もなく、逆にあからさまな高揚感に滾っていた。オイタなクスリでも遣ってませんか?
疑っちゃうよ。
臭いし。
最初から計画通り『フワ金さん』含めてゲロ姫様狙いが警護に混ざっていたと。まあ、考察は後にしよう。多分しないけど。関係ないから。先ずはこの、間近に迫るギラギラ黒光る刃先だな。
『黒フード男』が肉薄する。
僕はギリギリでバックステップ、っと見せかけて反動を使って間合いを詰めるべく逆に短くステップイン、相手の正中から微妙に外した身の内に位置取り。『黒フード男』は返しの横薙ぎを放とうとするも微妙に近い間合いを嫌い一旦足を引く。余計な動作1ゲット。
長尺物を相手する時はその手の内に入り込む。怖いけど。凄く怖いけど。僕は左にズレながら半歩分だけさらに間合いを詰める。相手は僕に正面から向き合おうと無理に体を捻る。余計な動作2ゲット。
僕は相手の死に体の剣の柄を抑え、足を軽く刈る。手数と速さを旨とする拳術では常に移動し優位な位置を取ることが基本。体勢を大きく崩す。積みました。『黒フード男』の金的で7個目ゲット。
成らず。
仰け反った僕の顎先を『フワ金さん』の細身のよく手入れされた高そうな剣が通り過ぎる。あッ危ね! マジ容赦ねぇわコノ人。
あら残念。今のを躱すなんて凄いよ君、的な素敵な笑顔で追い打ちの頭上で翻る唐竹割り。僕は身体を捻り避ける。反動を利用して移動、転がったままの『黒フード男』を盾にする。踏み出そうとして足を止める『フワ金さん』。
間が開く。
体勢を整える。でも、たぶん手詰まり。正直『フワ金さん』は厄介だ。僕より速くて正確だ。それだけじゃない、旨くて容赦ない処がキモくて最悪。僕では抑えきれない。ウザいなイケメン。
あ、笑った。そんなんことないさ、やってみないと判らないじゃないか的な笑い方。ムカつく。そう遣ってみないとらない。
『フワ金さん』と僕、同時に踏み込む。でも僕が最初にしたのは『黒フード男』が握る馬鹿長い剣の柄を蹴り上げる事。二人の間で乱反射する光を四方に振り撒き、舞う。その陰に隠れ後の先を伺う僕。
その僕に自信に溢れた『フワ金さん』の逆袈裟が放たれる。光が斜めに走る。僕は拳を繰り出さず、ただ頭を横に傾ける。傾けた頭の横を今まで隠れていた今日一番のゲロ姫様の炎弾が『フワ金さん』の下半身を襲う。
逆袈裟が炎弾を切り裂く。火花が散る。まだまだ。二発目、身体の陰で一瞬炎弾が消えることで、距離感と予想射線を狂わす。行け!
返す剣で迎撃される。火花が散る。髪の毛が焦げる位まで我慢したのに軽々と。キモいぞイケメン。
頼むぞ三発目。は左斜め下に外れる。筈だから後ろ手の剣鉈ナイフで掬い上げ、そのまま腕を大きく廻し、横から『フワ金さん』の顔を狙い投げつける。イケメンのニヤニヤ笑いが止まる。まあ、彼女の三発目は必ず同じ処に外してたし、色々、出来そうだなって思って遣ってみたら出来た。『フワ金さん』の顔に火花が散る。今度こそ金的7個目ゲット。
成らず。
僕の足首は三分の一を残して断ち切られていた。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
ご笑覧いただければ幸いです。
―――――――――
という訳で第二ラウンド開始です。出来たら反撃したいな。出来なきゃ終わるし。
おお、凄い、結構高いのに壁の出っ張りを足掛かりに軽快に登っていく。オリンピックのボルダリング選手張りに速く正確だ。彼女、悪役侯爵令嬢だったんだよな。いや、いくら悪役でもバリ貴族の娘さんが凄すぎないか? それとも残念令嬢なら行けるのか。
閑話休題『トランプの兵隊』もそうだったけど、異世界の人って基本の身体能力が高いかも。身体もざっと見だけど、ひと回り程大きいように感じるし。
それはそれとして、女の子のお尻を下から眺めるのってやっぱりいいよね。ロマンだよな。あ、見えそう。チッ、カボチャかよ。改善が必要だな。
プリっとしたお尻越しに僕を見下ろし彼女「……変態」
「……何が……」
「タヒね」
「……ごめんなさい」
「それと私、悪役でも残念でもないから。唯の侯爵令嬢。本物の」
僕は眉毛の横を薬指で掻き、言うか迷っていた言葉を口にする。「君も僕も、勿論アイツらも誰も死なないし、殺さない」
彼女はカボチャパンツ越しに僕をじっと見つめていた。何を言っているのか理解している瞳で。
僕はさっきまで唯の高校生だった。人を殴った事なんてないし、争い事も極力避けてきたタイプだ。上手く出来るとは到底思わない。それでも。
「殺せと言ってる訳じゃない。逆に殺さないでくれ。この年で殺人犯に成りたくないし、そんなの絶対ムリ。ただ逃げたいだけだ。でもこれからやる行為は確実に暴力だ。打ち所が悪ければそれなりの重い怪我をするかもしれない。でも。
僕らは弱い。僕は君の助けが必要だし、君は僕の助けが必要だ。優先すべきは君と僕だけ。だから躊躇するのはやめよう。その他は忘れよう。僕らは無事に逃げる。そして家に帰ろう。それだけ。
それに残念だけど君のアレ、全力でも人は殺せない。せいぜい赤くなってヒリヒリする程度。だから安心してブチカマシしてくれ」
魔法なんて未だに疑ってるし信用してないし、全くよくわからん。でも今は彼女のそのよくわからん“爆烈炎のなんちゃら”に頼る。
って少しでも楽したいとか、使えるものならなんでもいいとか、そんなの思っていないよ。……たぶん。……半分ぐらいは……。
そうさ、半分以上さ。だから何だ。
追い詰められてんだこっちは。僕もハナも。
魔法は純粋な暴力装置だ。暴力を振るうには決意がいる。人を傷つけてしまうかもしれない嫌悪感と、逆に人を壊す事への暗い興奮と快楽、その相反するふたつを封じ込める覚悟が必要だと思う。よくわからんけど。人は残念だけど愛を語るのと同じ脳ミソで人を容易に害する。全くよくわからんけど。
たぶんだけど、魔法ってヤツはイメージだと思う。
魔力はわかる。エネルギーだ。エネルギーを物質や現象に変換するのが魔法なら、魔法ってなんだって話だけど、それがイメージなんだと思う。裏で似非賢者サマもそうだって言ってるし。
実にあやふやで掴みどころのないブラックボックスだ。深層心理にまで関わるものなんだろうか。よく判らんけど。でもそう考えると失敗や得手不得手が出てくるのも納得する。また善悪(実にチープな言い回し)のバランスや葛藤からの不調や不成立も考えられる。
人を傷つける嫌悪感が多すぎて、人に対して魔法を使えなくなるのではないかとの僕が思う彼女への懸念。
僕は思惟する。彼女は人を傷付ける可能性に無意識にリミッターが掛かり、殺傷性を伴う熱量をそもそも作り出せないと。少なくとも僕が知る彼女には無理だ。だから僕が行うのは其の“咎”を肩代わりする事。思い切り力を使えるように。少しでも。
彼女は僕の話を聞き終わると何気に掌を僕に伸ばし、いきなり大玉の炎が吹き出し僕を襲う。無詠唱だ。僕は首を捻り躱す。予想より大きさと速さが段違いで思わず「ヒエッ!」悲鳴を上げてしまった。
超ビビった。心臓バクバク。背後の壁に穿った火の玉の焦げ跡に冷や汗タラタラ。これって、充分な殺傷能力は有ったっぽくね? マジで。
僕の懸念。彼女への思い。カッコイイ演説はなんだったのか? 女の子って恐。
彼女は壁の上で仁王立ち。ニヤリと笑った。かぼちゃパンツ丸見えですけども。
「ねえ、だから可愛いオタマジャクシをチラチラさせながら説教しないでくれる。誰にもの言ってるの?」
かっちょいいな、かぼちゃパンツ。君がゲロ姫だってことは絶対忘れてやんないからな。ズリ上がってたカーデガンを定位置に戻し。
「君が貸してくれたカーデガン、ちゃんと身につけておくよ。まかせて」スリスリ擦り付けてやった。
彼女は嫌な顔をして「そのカーデガン、それなりに気に入ってたのに、廃棄ね」
「洗えばまだ着れるよ。いや、敢えて着てほしい」
「止めて、私を穢さないで」
楽しんでんなー、おい。
「でも、ありがとう」と彼女。
そんな和気藹々なやり取りも此処で終わり。丁度角から『黒フードの男』を先頭にガヤその他が姿を現す。
さあてと、……行くぞ!
僕は駆ける。『黒フード』目掛けて。僕を追い抜いてテニスボール大の炎の塊が“トランプの兵隊”を襲う。一人の顔にヒット。ひっくり返る。威力はないけど。もう一発。最右翼の顔左上に直撃。連射出来てる。それも速い。痛い厨二呪文も聞こえない。イイ感じだ。
威力はコップ一杯200cc程度の熱湯を至近距離から掛けた程度の衝撃と熱さ。一瞬だけならヒリヒリする位で一度の熱傷にも届かない。が、それでも顔に直撃すれば無視も出来ない熱さ。
あれ、なんで? さっき僕の顔を狙った炎弾はこんなチャッチクなかった。もっと殺傷力があったのに!
なんて思ってない。逆に僕はホッとした。
さっきはああは言ったが、普通の女の子に例えその力があったとしても生身の人を相手に安易に出来るものじゃないし、しちゃいけない。と思う。彼女も嬉々として行っている訳じゃない。でも思考考慮して決断してくれた。ありがたい。そして申し訳なく思う。
でもなんで僕にだけ殺傷力増し増しなの。僕って嫌われてる?
三人目は外れた。外れてもいい。外れて後ろのガヤの胸に当たり派手に火の粉モドキが弾ける。ハッタリでも密集しているからこそ動揺が走り、足が止まる。
僕はそのまま『黒フード』に迫る。
奴は馬鹿でかい剣を抜き正面から大上段に振り被る。僕は縮地の踏み足膝抜きで、後ろ足から伝わる重力を純粋な推進力に変え急加速。よし、上手く重力をコントロール出来てる。
初めて使った時は戸惑いと恐れが強すぎたんだと思う。焦ってたし。これが仮に魔法なら、呪文は要らない。ただ思う。そして。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
質量荷重万有引力制御機構魔技法・初級【微増幅及び斥力獲得】は万有引力、重力を打撃力・速度に変換する身体基本連動運動にてコントロール可能。
と結論 ∮〉
即ちDon't think.Free
迫る刃下を掻い潜り『黒フード』の左横の男にジークンドーの足の長いストレートリードを叩きこむ。縦拳が鳩尾に食い込む。此処は内臓損傷を目的とする寸勁を使わずに背中に抜ける拳で男の身体自体を吹き飛ばす。後ろのガヤに勢いよくぶち当たり混乱が広がる。そこに炎の弾が襲う。イイ感じだ。因みに直前で『黒フード』にビビって目標を変えた訳ではない。ビ、ビビってねーし。
敵の陣営内に敢えて飛び込む。腕を思い切り振り上げてノックダウン狙いの重い一発を、何て言わない。一瞬だけ体重を載せた鋭く速い手数で急所を狙う。相手の懐や死角に入り常に一対一の状況を作る。背中は彼女の魔法が守ってくれると信じて。
左の男が僕を串刺ししようと剣を突き出して来るのを敢えて踏み込み、左手の逆手剣鉈ナイフで迫りくる剣先の横腹を弾き、その反動を利用して身体を廻し、速度に変換した右拳を柄を握った相手の親指に撃ち潰す。当てた反動を利用して腕を折り体重を載せた肘を正中に叩き込む。
超接近戦を仕掛ける。距離が離れれば数の力で刃物を振るう敵に膾にされる。剣の安全圏ゼロ距離、懐内で独楽のように廻り距離がない分を遠心力で補う。背を見せないことで死角を減らす。
相手の身体を力場、肘を支点として反動を乗せ素早く半回転しながら移動、回転の乗った足裏で左の別の男の脹脛を横から踏み膝を壊し、そのまま回転してサッカーボールキックを蹲った男の顔にめり込ませる。
僕を狙っていた後ろの男の後頭部に火の粉が散る。彼女の魔法だ。
動きの止まった相手に振り向かずに足を後方へ振り上げ、踵を金的にめり込ませる。凄く痛そう。足元でジタバタしてる。ごめんなさい。
その反動を振り子の力に変え、前の別の男の金的に爪先をめり込ませる。
えっ、なに? 金的ばかり狙って卑怯だって? そうだね、だから?
ごめんなさい。何言ってるかわからない。
あっ、痛そう。痛いよね、御免ね。また金的一個潰した。
貸してもらった中折れ? 剣鉈ナイフは左逆手で持ち、盾代わりとして使っている。流石に白刃を素手では防げないし、攻撃的ナイフとしてはね……。彼女は守り刀と言っていたが文字通り守ってもらってる。何かスゲー不平不満の声が聞えてるような気がするが無視。これ以上頭の中の住人は要らない。おお、流石守りの盾、丈夫じょうぶ。五月蠅いよ。
五月蠅いと言えば、僕の頭の中で似非賢者様の声が絶えず響いていた。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
実地研修値を多重同時加速思考付与型編纂疑似脳へ転送、再演算の上、最適化、生体へとフィードバック。同時に生体ブラッシュアップを同時進行。再び実地研修取得値を同軸多重同時加速思考付与型編纂疑似脳へ転送、再演算の上、最適化、生体へとフィードバック。同時に生体へのブラッシュアップ。た、楽し~
と結論 ∮〉
うるせえ! わったから黙ってやれ。
少しずつ、速く。軽くなっていくのはイイが……。だからこそ、僕の身体は……。
「ホーホホッホホー、まるで相手になりませんわ。この這いつくばるゴミムシどもが‼」
ゲロ姫様だ。ホーホホッなんて笑い方する人、初めて見た。うん、真面目に悪役令嬢してたな、アレ。
「ねえ、ハム君てば聴いて聞いて、私のことを『流石ヴレゥ侯爵家の最悪魔導師』とか、『爆烈炎の鬼女』とか称えてる」
それ称えてないぞ、最悪とか鬼女とか。聖女じゃないんかい。まぁ、楽しそうならいいんだけど。
「えー、ナニそれ、♯$%$%&’~|”#’!!!♯$%$%&’~|”#’!!!ってなにそれ」
『トランプの兵隊』の一部が何やら怯えながら彼女に訴え掛け、それにしっかり彼女は答え会話が成立している。炎弾をバカスカ容赦なく撃ち当てながら。ひどい。でも器用。
「ねえ、ハム君聴いて聞いて。あの人たち、私を襲おうとした裸の変態ハム君から助けようとした自分達を、何故に攻撃するのかって言ってる。止めて欲しい、お願いしますって。お嬢様? あ、私の事ね。一緒にお屋敷に戻ろうって。確かに屋敷で見たことある顔かも。如何しよう」
「見たことある顔って、確かか?」
「うーん、高貴なお嬢様としては下々の事までよく覚えてないかな。良くわかんない。てへぺろ」
わりかしヒデーな、炎弾をぱかすか撃ちながら宣う悪役令嬢がかえって清々しい。まあ僕も金的6つ目だけど。喉と目玉は遠慮してる。
僕は少し考え、口早に言って欲しい言葉を“日本語”で伝えた。
「そこに居る裸の少年は私の友人です。裸で困っていたので助けようとしていた処にあなた方の一部とソコの『黒いフードの男』に訳も解ずに襲われたのです。私とその裸の友人はただ逃げただけです。私に害を及ぼさないと誓えるなら先ずは剣を収め、後ろに下がりなさい」
『トランプの兵隊』の半分ほどが互いに顔を見廻し、おずおずと剣を収めて後ずさり、首を垂れ膝をついた。
おお、やるね悪役令嬢。戦端が崩れる。今だ。逃げる。絶好のチャンス。と、思ったのもつかの間、首を垂れた兵隊の背後から近づいた人影がその首を跳ねた。噴水の様に吹き出る血吹雪。宙を舞う呆けた表情の頭。おースプラッタ。早々にハナとの約束は破られちったよ。誰も死なない、死なせないって豪語した自分が恥ずかしい。でもさ。
ああ、居たなこんな人。フワフワサラサラの金髪キラッキラ碧眼の『フワサラ金キラさん』。笑顔が眩しい。遅れて主役登場ってとこか。二つ目の頭が飛ぶ。何処《どこ》にいたんだよこの人。って、味方じゃなかったのか? 最初から金ピカ乙ゲー攻略対象イケメンで胡散臭かったけど。嫌だな。出てこなきゃよかったのに。クソが。
そんなこと言うなよ。楽しもうぜ。
そう、ハンサムな無言の表情で問いかけられた。
鼻がシュッとして高くてカッコイイ。
おまけに、いい匂いがしてる。実に楽しそうなハッピーな匂いだ。
衆人わんさかの広場では強いがやけに鈍重で力任せなイメージがあった其の剣先が、今では華麗な流れるような、でも酷く冷たく見る者を瞬時に凍えさせる“冴え”に代わっていた。
『フワサラ金さん』ってば、キャラ変えすぎ。やっている事も何を意図しているかも意味不明。あ~ぁ、こうゆう能力が高くて不思議ちゃん系意味不明野郎が一番苦手。僕ってば常識人だから。そこ、異論は認めない。
『フワ金さん』が爽やかにニッコリ微笑む。
チッ、嫌な予感しかしねー。
そこにハナに従順を示し残った『トランプの兵隊』達を弾き飛ばし、『黒フード男』の豪剣が横薙ぎに凶悪に僕に迫る。あ、アンタもいたね。
場が混乱する。剣を納めて下がった者達、戸惑った顔のその他、それらがワラワラドタバタてんでに逃げ出し、残った三分の一の数人と『フワ金さん』と『黒フードの男』だけになった。
残った数人をよく見ると身に着けたトランプ柄の四角い制服も何処《どこ》かチグハグだし、その顔に動揺も恐怖もなく、逆にあからさまな高揚感に滾っていた。オイタなクスリでも遣ってませんか?
疑っちゃうよ。
臭いし。
最初から計画通り『フワ金さん』含めてゲロ姫様狙いが警護に混ざっていたと。まあ、考察は後にしよう。多分しないけど。関係ないから。先ずはこの、間近に迫るギラギラ黒光る刃先だな。
『黒フード男』が肉薄する。
僕はギリギリでバックステップ、っと見せかけて反動を使って間合いを詰めるべく逆に短くステップイン、相手の正中から微妙に外した身の内に位置取り。『黒フード男』は返しの横薙ぎを放とうとするも微妙に近い間合いを嫌い一旦足を引く。余計な動作1ゲット。
長尺物を相手する時はその手の内に入り込む。怖いけど。凄く怖いけど。僕は左にズレながら半歩分だけさらに間合いを詰める。相手は僕に正面から向き合おうと無理に体を捻る。余計な動作2ゲット。
僕は相手の死に体の剣の柄を抑え、足を軽く刈る。手数と速さを旨とする拳術では常に移動し優位な位置を取ることが基本。体勢を大きく崩す。積みました。『黒フード男』の金的で7個目ゲット。
成らず。
仰け反った僕の顎先を『フワ金さん』の細身のよく手入れされた高そうな剣が通り過ぎる。あッ危ね! マジ容赦ねぇわコノ人。
あら残念。今のを躱すなんて凄いよ君、的な素敵な笑顔で追い打ちの頭上で翻る唐竹割り。僕は身体を捻り避ける。反動を利用して移動、転がったままの『黒フード男』を盾にする。踏み出そうとして足を止める『フワ金さん』。
間が開く。
体勢を整える。でも、たぶん手詰まり。正直『フワ金さん』は厄介だ。僕より速くて正確だ。それだけじゃない、旨くて容赦ない処がキモくて最悪。僕では抑えきれない。ウザいなイケメン。
あ、笑った。そんなんことないさ、やってみないと判らないじゃないか的な笑い方。ムカつく。そう遣ってみないとらない。
『フワ金さん』と僕、同時に踏み込む。でも僕が最初にしたのは『黒フード男』が握る馬鹿長い剣の柄を蹴り上げる事。二人の間で乱反射する光を四方に振り撒き、舞う。その陰に隠れ後の先を伺う僕。
その僕に自信に溢れた『フワ金さん』の逆袈裟が放たれる。光が斜めに走る。僕は拳を繰り出さず、ただ頭を横に傾ける。傾けた頭の横を今まで隠れていた今日一番のゲロ姫様の炎弾が『フワ金さん』の下半身を襲う。
逆袈裟が炎弾を切り裂く。火花が散る。まだまだ。二発目、身体の陰で一瞬炎弾が消えることで、距離感と予想射線を狂わす。行け!
返す剣で迎撃される。火花が散る。髪の毛が焦げる位まで我慢したのに軽々と。キモいぞイケメン。
頼むぞ三発目。は左斜め下に外れる。筈だから後ろ手の剣鉈ナイフで掬い上げ、そのまま腕を大きく廻し、横から『フワ金さん』の顔を狙い投げつける。イケメンのニヤニヤ笑いが止まる。まあ、彼女の三発目は必ず同じ処に外してたし、色々、出来そうだなって思って遣ってみたら出来た。『フワ金さん』の顔に火花が散る。今度こそ金的7個目ゲット。
成らず。
僕の足首は三分の一を残して断ち切られていた。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
0
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる