半径1メートルだけの最強。

さよなきどり

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第二節 〜忌溜まりの深森〜

023 青が爆発な春な君は

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ボーイズ&ガールズのあまずっぺー? 語らいです。
なのですが、ハナちゃんが大変なのです。
ご笑覧いただければ幸いです。
―――――――――

 「ハムくん、今、私のお尻に廻した手をワシワシしたでしょ?桃のようなプリッとしたプリチーな私のお尻のチャームに抗えずにヤられちゃったの? それとも背中に当たってる私のプリンな双丘に青が爆発な春な君はもう辛抱足らん! なの?」

「黙れ、埼玉県女子のそのまた底辺値のクセに」

「てめー! 埼玉女子に地に頭をつけて謝れ。そして腹を切れ、埼玉女子はなー! 埼玉女子はよぉ~、さいたまじょしの皆様たちはよぉ~……」

「ごめん、僕が悪かった」

「まぁ、よろしくてよ、許してあげる。でも、もう下ろしてくださる。ちょっと歩きたくてよ」

「……そう言わず、もうちょっと乗ってろ。桃尻ワシワシもしないから」

「ご褒美に、ちょっとはワシワシしてもよろしくてよ」

「あーはいはい」

忌溜りイミタマリの深森”に入って三週間。……たぶん三週間位? もしかしたら四週間か五週間か?……いやいや下手したら三ヶ月間くらい余裕で過ぎてたりして……な……ウソだよね?

 正直もう日にちの感覚はない。何時エンカウントするか分からない魔物のせいで昼夜の区別さえ曖昧な僕らに多くを期待する方が間違いだ。だから多分たぶんそのくらいって、感じで。

 森は今なお暗く、相変わらず湿度が高く歩を進めるだけで額に粘った汗が浮かび、頬を伝い顎から滴る。
 三人の荒い息遣いだけが静かに聞こえる。

 背負っていた荷物は既に無くなり、勿論携帯していた食糧も水も尽きた。でも補給に関しては困ってはいない。魔物からはルーティンとして逃げ回っていたが、平均して一日に一回は会敵し遭遇戦に至っていたから。相変わらず魔物クサレ肉はゲロ不味いがやっぱり栄養満点で水分も十分に含んでおり、事足りた。酷い話だ。

 遭遇戦で生き残れればその日の食料と水は確保できた。そして之までは死ぬことは無かった。幸いなことに。でもやっぱり酷い話だと思う。

 ただイイ事もある。倒して泡となって消えた後は、しばらくその地に魔物は湧かないし、近寄ってこない。最低四時間はその場が安全地帯セーフティーとなる。貴重な宝物のような時間だ。
 だから僕らはその間に急いで今倒して直な生の魔物クサレ肉で腹を満たし、腐乱していくそのモノの傍らで短い睡眠を貪る。

 人間て不思議、だって魔物クサレは倒すと物凄い悪臭がするはずなんだ。“はず”って言うのはもう慣れて全然平気になっていた事だ。いや臭いよ、鼻がひん曲がるよ。でも慣れて食うし寝れる。人ってコワね

 問題なのは、四時間経ってその場を離れようとしたその瞬間に次の魔物が直ぐ目の前に迫っていた、それが三回続いた時は誰かの悪意を疑った。誰かって言わずもなが。逆に魔物と不思議にエンカウントしなかったり、或いは不思議と逃走に連続で成功して、何やかんやで気がつけば四日間食べてないし寝ていないって事もあった(これが平均計算の訳)。

 さすがに不味いと思い、会敵と同時に狩に嬉々として挑んだが、最低の体力と寝不足で楽ではなかった。
 正直、相当苦労した。逆に狩られる一歩手前だったりした。 

 でも、そんな逃走ももう直ぐ終わりになるかもしれない。

 ポジティブ的な明るい予想ではなく、むしろネガティブ的に、有り体に言って、僕らはそろそろ詰みそうだって話し。

 意外なことに、最初に倒れたのはハナだった。

 本当に、最初は何ともなかったんだ。逆に僕らを元気付けるような、まるでピクニックに来ているような笑顔を見せ、時よりサチを相手に『腐かい話し』系のガールズトーク? を楽しんでさえいた。

 それが徐々にひとり思い詰めたような顔を見せ始め、会話はあるものの大きな声で笑う事が少なくなっているなと。
 気づけば、普通に歩くにも荒い息をし始め、ある日、突然倒れた。

 それは致し方なかった。

 一人で全ての魔法打撃を負って、全ての魔物を一人で撃退していたのだから。

 僕と深い所でパスが通じ魔力素粒子アルカナが伝達し、力量的には問題無いはずだったが先に神経が持たなかった。もちろん今まで扱った事の無い大量の魔力を集中且つ継続的に運用し続けたんだ、身体が追いつけなくて当たり前なんだけども。

 全身の細胞が悲鳴を上げているんだと思う。

 それでも、
 唾液を振り撒き猛り狂う異形の謎生物怪獣が迫り来る。
 閃光を引き連れ列を作り放たれる魔甲弾の軌道線。当たらない。当たらない。当たれ。当たれ。当たれ。

 自分の目の前で威嚇の咆哮を上げる異界のバケモノ。
 極一般的な女の子が許容できる限界を超えていた。
 
 当初はそれでも健気に歩き、やがて意地でも歩き、最終的に終始僕の背に負ぶられての移動となった。ハナは最後まで嫌がった。もちろん今でも。もう満足に歩けないのに、自分でも解ってる筈なのに。それ程に疲労していた。

 最初の切っ掛けはあの出来事だったのだと思う。
 ハナが本格的に壊れる。


 ハナの心を苛むは、魔物だけではなく一日の終りに必ずやってくる、その名は『夜』

 月明りも星明かりも届かない深い深い森の底、自分の手の先も見えない完璧な漆黒の闇の中で魔物の襲来に怯える。
 流石に闇夜に容易に動く事は出来そうもなかった。警戒の為、火を焚く事も出来ず、横になる事も出来ず、身を寄せ合って一夜を明かす。
 警戒は僕らがするから少しでも寝てくれと言聞かせても、これまで普通の(?)いいトコの悪役令嬢だった少女には無茶な話だった。

 元世界あっちの記憶が戻った普通の女子高生としては尚更。
 光が届かず、見えるはずもない闇夜に瞬きもせずに瞳孔を広げて注視し、少しの物音でも鋭く体を震わせ反応するハナ、怯え続けた。ずっと。一晩中。


 れは僕の失敗だったんだ。
 “忌溜まり”に入って幾らもしない頃の、ある夜の出来事だった。まだ四時間ルールを理解しておらず、索敵も未熟で、でも丁度慣れ初めな、最初の緊張が緩んだそんな闇夜を唐突に突かれた。

 全く気付く事無く、魔物の接近を許してしまった。気配もなく、よりによって突然ハナの眼前に蛇型の魔物の大きく開いた咢が出現した。
 あとから知ったが、そのバケモノは初めての“ネームド種”だったらしい。その名は“バジリスク”。

 “バジリスク”は“ネームド”の名に恥じない、“キメラ”とは比べものにならない高能力を持っていた。それまでのキメラは言ってみれば、ただ単に“力が強い”、“大きい”、“速い”等の力任せだけの脳筋特化単純バカだった。対処の仕方を間違えなければ未熟な僕らにも対応できた。
 でも“ネームド”は違った。大きな違いは魔法を使ってくるか否かだけだけれども、その魔法を効果的に且つ嫌らしく使ってくる。
 奴らは、頭は悪いが狡猾だった。

「今のは焦ったね」なんて僕らにお道化て見せてくれたハナだったけど、自分が失禁している事にも気付いてもいなかった。

 それからハナは『夜』を恐れた。
 僕の失敗だった。


 今現在、ハナだけではない。僕もサチも、既に限界を超えていた。そんな三人が崩壊しなかったのもやはり、ハナのお陰だった。

 彼女は愚痴らない。悲観しない。常に前を向いている。
 ハナは自分の体力も心も疲弊し、今にも折れそうなのを自ら自覚しながら、だからこそ、自分の役目を全うする事を最優先とした。狂気を持って。

 魔物を打撃する。
 魔物を滅する。

 魔物に対する絶対的な恐怖を、逆に魔物を殺す事で何とかバランスを保っていた。

 全て一気に出来た訳じゃない。徐々に、少しずつ、這うようにその魔法打撃力を高めていった。
 彼女の持つ火縄銃モドキの両側面に細かい調整用も含めて次々と魔法陣が刻み込まれ続け、出来る事を増やしていった。
 凶悪な弾丸の自動生成や擬似スコープ自動調整など補助機能を合わせて最終的に刻まれた魔法陣は二十八個に達していた。

 弾丸はただの真球からより空気抵抗を低減した椎の実型になり、射出の衝撃圧で潰れないように銅皮膜化した。
 少しでも破壊力を求めて大口径化し、先端が抉れた凶悪ホローポイント弾となった。(ハナには内緒の自動生成済)
 射出に有効なジャイロ効果を与えるライフリング効果で初速は九百ミリ/セコンドを超えた。

 何時の間にか伏せ撃ち姿勢なら三百メートル先の魔物を確実に狙撃出来るようになり、射出まで約三十秒ほど魔力を過度に充填する時間が必要だが、対戦車ライフル並の威力を得る事も可能となった。魔物を此方こちらが索敵で先に発見する事が出来れば、一発で沈められる事も可能となっていた。
 現実ではなかなか魔物より先に発見するのは難しいが。

 近接戦闘時対応では弾丸を九ミリ弾程に小さくすれば現代のサブマシンガン並の弾丸が尽きること無い連射フルオートを可能とし、対象をミンチにした。

 その時、彼女は薄ら笑みを浮かべてトリガーを引き続ける。

 超接近戦闘用に取り回しが楽な拳銃タイプも残りの“魔法の杖”で作ったが、ハナは最初に僕がこさえた“火縄銃モドキ”に拘りがあるのか、固守して使おうとはしなかった。今は僕の腰に挿してある。やっぱり射程範囲一メートルだけど。


〈∮ 検索及び検証考察結果を報告
 より一層の公彦の魔力アルカヌムと直結する様にさらなる魔改造増量。
 と結論 ∮〉
 だそうだ。

 魔改造を経て、いささかゴツくなった “火縄銃モドキ”を手が白くなるまで握りしめ、胸に抱え込む彼女。しがみつく様に。
 僕の腕の中で僅かに差し込む月明りに気怠く細く白い首を項垂れさせ、僕を揶揄うように微笑む少女を僕は抱きしめる。


 僕が主に警戒索敵とハナを載せての移動砲台、サチは道案内と逃走時の先導。ハナが攻撃特化と、いつの間にか役割が決まっていった。

 情けなく、逃走時の馬程度おんぶにしか役に立たない僕。やっぱり有効射程範囲一メートルは相当キツイ。
 ハナが倒しきれなかった場合、或いは逃走に失敗した場合の最終は僕がトドメを刺す事になるんだけど、申し訳ないが、僕は怖くてしょうがなかった。

 体の震えを止めることが出来ない。僕が失敗すれば僕は勿論、ハナもサチも死ぬ。全滅だ。それがわかっていたから。

 情けないが、僕は弱い。盤上をひっくり返す決定打チートが皆無だった。何時も偶然に頼るしかなかった。
 なにより、僕にはハナのような心の強さがなかった。


 ハナは勿論、サチの逃走時の先導は秀逸だった。本当に助かっている。流石は先導のエキスパート乙職二種四級B2ブロンズだと思う。
 いや、嫌味じゃなくて。
 攻撃時でも逃走時でも地形把握は大事だ。地形上の有利さは戦闘時に数の劣勢を覆す程のファクターを有している。なにより、逃走時に最後に鈍詰まりに追い込まれたらそこで終わりのサドンデスなら尚更。

 人を拒絶する深い森の中、ただ歩くだけでも危険に満ち、疲弊させる覆い潰されそうな暗闇を、サチは巧みに逃走に有利で追撃に不利な地形を瞬時に選び取り、僕らを有利に導く。

 経路だけじゃない。例えば迫る正面の大樹の右を廻るか左を廻るか、見えない先の正解を百パーセントでクリアーさせる。
 例えば落葉で覆われ平地と見分けのつかない湿地を巧みに避け、逆に魔物を嵌める。
 例えば立ちはだかる垂直な壁に対して巧みにルートを見つけ容易に登攀し、魔物を立ち往生させる。

 やるじゃんサチ。魔物と戦闘に成らず、逃げきれた回数も多い。
 今、僕らがやっているのは長い長い消耗戦だ。僕らが潰れるのが早いか、逃げ切れるか、それだけ。元々勝利なんてない。戦闘は消耗を加速させるだけでいい事なんて何もない。


〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
 第六基門同軸亜次元領域を開放。各身体感知情報『魔力』『接触』『臭気』『音波』『温度』『光学』『色彩』の感度機能を身体改修強化により向上、加えて分析情報の能力の全てを統括一元化します。
 と結論 ∮〉

 難しいこと言ってるけど、要するにビクビクしていたら今まで匂いに特化していた索敵とかのセンサー機能が丸っと纏まって良くなったっゾ、ラッキーって事。でも定番の魔力索敵とかは無理だった。だって一メートルより先に魔力が飛んでいかないから。
 出来るのは野生動物っぽいものだけ。じゃぁどんだけ良くなったかと言うと、……微妙。なんかよくわからないし。野生じゃないし。


〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
 だって使い始め出し、スクラップアンドビルドとか構成演算とか必要だし…… 。
 と結論 ∮〉

 あっそ。
 ただ、有効だと思うことは、危なくなると、あの終わった感がパない程の臭いを嗅がなくてよくなったって事。ほんと臭ッッさかったんだ!


〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
 少々お待ちください、もちょっと数値化の精度と処理能力が向上すれば眼球をマルチディスプレイ化して差し上げられますから。カッコイイ。某アニメの様に情報がダイレクトに… 。
 と結論 ∮〉

「却下」 

〈∮ 何でだー! カッコイイだろーが。
  と結論 ∮〉

「いや、マジ邪魔だから」



―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。

毎日更新しています。
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