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第五節 〜ギルド、さまざまないろ〜
052 風の匂いがもう冬のそれ
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視察です。寒いです。そんなお話し。
ご笑覧いただければ幸いです。
―――――――――
風の匂いがもう冬のそれ。
思えば僕の元世界での最後の記憶は百円アイスキャンディだ。酷く暑くて、真上の太陽がジリジリして、溶けたアイスキャンディが焼けたアスファルトにポトリと落ちた。
次に気づいた時はもう異世界だった。
空がただ青くて、気持ちのいい風に夏の初めの匂いを感じた。少しだけ季節が逆戻りした感覚に戸惑った事を思い出す。
今、ギルドを囲む高い隔壁の上に立つ僕は、それまでとはまるで違う荒く、時より混ざる鋭い冷気に風の匂いがもう冬のそれである事を強く意識させられた。
考えてみれば、異世界に流れ流されぐるぐると追い回されて既に四ヶ月半が過ぎている計算になる。一つの季節の始まりから終わりまで。すなわち十七歳の(体は今はたぶん十三歳ぐらいだけど)ひと夏がまるまる失われた事になる。何たることか? 貴重なセブンティーンの甘酸っペー夏が永遠に失われた。
ハイそこ、特に似非賢者、所詮“ぼっち”が、とか言わない。現実逃避とか夢とか大切だろ?
今気づいたけど、夢って結局“現実逃避”なんだな。現実逃避、マジで嫌いじゃないけどな。いいじゃん。逃げとけば。無理はやめましょう
結局、僕らは四ヶ月半もかけて“溜まりの深森”を生きて抜け出た事になる、それが長いのか、短いのかよく分からない。
いや、長げーだろ。
長いよな?
だって、“溜まりの深森”に入る理由が時間短縮のショートカットの為だって、確か……。
「オイ、聴いているのか?」と委員長系ギル長さん。
「おまえがココに登って視察したいと言ったんだろうが」
やだなー、ちゃんと聴いてますよー。で、お昼は何が出てくるのかな? って話だよね。知ってます。魔物肉ですよねー。
「聴いてないだろーが!」
と、僕の襟首を掴みガクガクと前後に揺す。ちょっと待って、ちょっと現実逃避してただけじゃん。って、今、声に出してないよね僕? あ、ちょっと不味い。激すぎ、吐きそうなんですけど。
「ハム君って顔にモロに出るからな~」とは、ハナ。
「特に嫌そーな顔と、人をバカにする時の顔が不遜で醜悪ですよね」
とサチ談。関係ないじゃん。覚えてろよサチ。
「まさにソノ顔です。実に見苦しい」
ギルドの高い隔壁の上から眼下を眺望する。
急勾配の三角屋根のある白い壁の、統一された様式で建てられた木造建物群が歪曲した石畳の道沿いに連なり、どこか元世界の中世から続く古い街並みのドローン映像を視聴しているようで、ちょっと映る。
一番近いのは、ストラスブールの木骨住宅様式だな。そっくりだ。僕って博識。嘘、ハナが感嘆と共に呟いてた。
石畳沿いに見える建物群に囲まれた奥は低層の工房が固まって建っている。糸を紡ぐ工房らしい。ただし機械化はされておらず、あくまで手工業、魔法込みだけど(魔法って手作業分類なんだね)。そして問屋制だ。もちろん問屋=資本家は アッシュだったりする。もう何百年もその形態は変わっていないらしい。それもソレで何だかなーと思うが、みんなが満足しているならイイか、って処。
でもそこに文句、或いは一口噛ませろ、いや俺が仕切る俺に渡せってグイグイ来てるのが噂の“早朝の挨拶”からマウント取っちゃうぞな“ヤンゴトナイ”男爵な領主様らしい。
まあ、どこでも同じ、見慣れたみんな大好き貪欲私利私欲追求主義バンザイってとこかな。
ねえ、ほら、ちゃんと話し聞いてたでしょ。
そんな、街全体で花魁蜘蛛の糸の生産を“秘匿魔法技術”を以て生業として成り立たせているのが此の街“サガン”だ。
頑張って発展してくぞー! って意気込みは皆無だけど、まあぼちぼちやってこ、こう見えてもこの国じゃ数百年は続く最優良都市のひとつだしーってトコ?
そんな優良辺境都市だったが、現在は絶賛“滅亡の危機”に見舞われる可哀想な街……なのかな。
昼前ではあるが、日が昇って随分と経っている今、街中に人影はなく、閑散を通り越して無人の街と化している。昨日の大通りの人の往来が噓のようだ。
“遷”迄あと僅かで、最初の“カトンボ”出現でパニックって街から逃げ出そうと一斉に街壁門へと殺到したのを先回りされガッチリ閉鎖済みで、追い返され更にパニック騒乱状態となって暴動騒ぎに発展するも領兵な男爵領兵により瞬く間に鎮圧された。
鎮圧に際し、容赦はなかったらしい。死傷者も相当数出たと聞く。
今聞いているんだけど。
「男爵領兵は人間相手、特に弱い民衆相手だと勇猛になるからな。それを対魔物戦時にも発揮してもらいたいものだ」とゲート。
要するに対象撃破目的は人様ってことだな。見ている方向だけはわかるな。
今、街の人たちは皆、家屋の奥に閉じこもっているのだろうか。
今、何を思っているのだろうか。
委員長系ギル長も赤鬼もそれについては何にも言わない。言いたくない感じ? 怒っている? 悲しんでる? それともやっぱり……。
街並みに目を戻す。異様で、人々の、“街”を諦める原因と言えるかもしれない、数多く点在する虫食いとは言えない小さくない更地の全てが、二年前の“カトンボ”による空撃の跡とのこと。
全ての虫食い跡を合わせれば街の面積のざっと三分の一程度には達しているだろうか。ものすごく痛々しい。人も随分と死んでいるんだろうか。
復旧速度はその街の持っている潜在的な経済活性力の大小で決まるらしいが、一向に進んでいる様子はなかった。この街サガンは需要過多な“蜘蛛の糸”生産でおおい興っているはずなのに。何百年の昔から。それも“街”を諦める原因の一つかもしれない。
目新しい更地以外、この街はハナの感嘆を引き出す程に美しい。過去には整備もちゃんとされていた証だ。そこには人の生活があり、人の意思で明日を考えて今日を生きてた証だ。投げ出さず、何百年前から“蜘蛛の糸”の生産で潤う其の最初から、“遷”とは上手く付き合ってきたはずなのに。
「なるほど。で、結局どうなのよ?
男爵様は何をしたの?
男爵様は何をしなかったの?
で、男爵様は何をしたいの?」
委員長系ギル長と赤鬼ゲートの顔が引き攣る。ハナはやっと其処まで話が進んだか、って顔をし、サチは申し訳なさそうに顔を背けた。
うんうん、自分で振っといてなんだけど、やっぱり聞きたくない。関わりたくない……。
なんだかんだ言って、男爵様が関わってるよなー。ガッツリと。
2年前も、今も。
ギルドの広い敷地をぐるっと囲む石積みの高い隔壁の上は人が三人余裕で擦れ違える程の幅が三メートル強もあり(地表部分は四メートル強で緩やかな台形型をしている。中身は蜘蛛のお家。多分高架軌道と同じ年代で同じ工法、魔術的な何かで守られてる?)、周回できる。
僕らはその上を歩いている。
手摺の代わりの両端の立ち上がりは大人の腰辺り。マンションの手摺よりはよほど低い。ちょっと乗り出すだけで下まで覗けてえらく怖い。そのままズルっと滑って落ちそう。それを防ぐ安全帯を通す鉄の輪が五メートル間隔で取り付けられている。……動けないよね、これ。避けられないってことだよね。屋根もないし。
だから、そういう事なんだろうな。酷く献身的で非人道的。
この上で踏ん張り、スタンピードに対抗するらしい。
床や立上りには処々に黒染みがこびり付いている。通路中満遍となく、て訳じゃないけど。
僕は靴の底でこびり付いた染みを擦ってみる。染み込んでいる。取れない。幾層にも堆積し、靴の底で削っても削っても地の色は出てこない。物語るのは、長年積み重なって出来上がったってことだろう。酷く人っぽい、業の塊のような染みの跡。
「“遷”とは二年に一度、この時期に“溜まりの森”より|飛来したキマイラ種昆虫系蜻蛉の魔物、通称“カトンボ”の大群がこの街を襲うスタンピートだ。奴らは花魁蜘蛛が甚く気に入らないらしい。繁殖時期に合わせて襲ってくる。襲って食うのでは無く、ただその目的は殺戮それだけだ。喰らうでもなく。
夜明けから日暮れまで、それが3日間続く。
意外だったのは“カトンボ”の狙いは蜘蛛のみで、人は基本襲わないそうだ。でもそこは畜生の性で絶対じゃないし、近年はその割合が多くなっているそうだ。
何故に“カトンボ”単種なのか、どうして2年に一度なのか。何が目的なのか? 何かと不明な部分が多いが、魔物に問う事も出来ず“遷”とは此の街が出来た時から背負う業であり責務なのだろうと。
「だからと言って悲観ばかりではないぞ、“カトンボ”はキメラ種の大型形体に分類されるが、単体でなら比較的弱く狩りやすい品種だ。撃退出来れば質の良い資材やそれこそ大きな魔晶石が大量に手に入る絶好の機会でもある。
“遷”は決して厄災ばかりだけではなく、一大経済躍進の機会でもあったんだ。嘗ては蜘蛛糸とカトンボの大量魔晶石が街の産業推進の柱となっていた程だ。
お前達が街に入った当日、人が溢れていただろう? アレは本来はカトンボ迎撃の準備と称した前夜祭だったんだ。収穫祭の一環だな。
傭兵の姿も見ただろう。“遷”の期間はどうしてもギルドや冒険者の人数が足りないからな、特別な目こぼしで傭兵を受け入れて、街に迷い込んだカトンボを住民と共同で駆逐してもらっていた。
傭兵には他の迷惑を掛けないとの約定で特別に部材も魔晶石も全部『取っ払い』で優遇させてやり、大勢が喜んで集まってきていた。結果、好景気で街中お祭り騒ぎさ。
全て嘗ての、話しだけどな」
と、委員長系ギル長は寂しそうに説明を締め括った。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
ご笑覧いただければ幸いです。
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風の匂いがもう冬のそれ。
思えば僕の元世界での最後の記憶は百円アイスキャンディだ。酷く暑くて、真上の太陽がジリジリして、溶けたアイスキャンディが焼けたアスファルトにポトリと落ちた。
次に気づいた時はもう異世界だった。
空がただ青くて、気持ちのいい風に夏の初めの匂いを感じた。少しだけ季節が逆戻りした感覚に戸惑った事を思い出す。
今、ギルドを囲む高い隔壁の上に立つ僕は、それまでとはまるで違う荒く、時より混ざる鋭い冷気に風の匂いがもう冬のそれである事を強く意識させられた。
考えてみれば、異世界に流れ流されぐるぐると追い回されて既に四ヶ月半が過ぎている計算になる。一つの季節の始まりから終わりまで。すなわち十七歳の(体は今はたぶん十三歳ぐらいだけど)ひと夏がまるまる失われた事になる。何たることか? 貴重なセブンティーンの甘酸っペー夏が永遠に失われた。
ハイそこ、特に似非賢者、所詮“ぼっち”が、とか言わない。現実逃避とか夢とか大切だろ?
今気づいたけど、夢って結局“現実逃避”なんだな。現実逃避、マジで嫌いじゃないけどな。いいじゃん。逃げとけば。無理はやめましょう
結局、僕らは四ヶ月半もかけて“溜まりの深森”を生きて抜け出た事になる、それが長いのか、短いのかよく分からない。
いや、長げーだろ。
長いよな?
だって、“溜まりの深森”に入る理由が時間短縮のショートカットの為だって、確か……。
「オイ、聴いているのか?」と委員長系ギル長さん。
「おまえがココに登って視察したいと言ったんだろうが」
やだなー、ちゃんと聴いてますよー。で、お昼は何が出てくるのかな? って話だよね。知ってます。魔物肉ですよねー。
「聴いてないだろーが!」
と、僕の襟首を掴みガクガクと前後に揺す。ちょっと待って、ちょっと現実逃避してただけじゃん。って、今、声に出してないよね僕? あ、ちょっと不味い。激すぎ、吐きそうなんですけど。
「ハム君って顔にモロに出るからな~」とは、ハナ。
「特に嫌そーな顔と、人をバカにする時の顔が不遜で醜悪ですよね」
とサチ談。関係ないじゃん。覚えてろよサチ。
「まさにソノ顔です。実に見苦しい」
ギルドの高い隔壁の上から眼下を眺望する。
急勾配の三角屋根のある白い壁の、統一された様式で建てられた木造建物群が歪曲した石畳の道沿いに連なり、どこか元世界の中世から続く古い街並みのドローン映像を視聴しているようで、ちょっと映る。
一番近いのは、ストラスブールの木骨住宅様式だな。そっくりだ。僕って博識。嘘、ハナが感嘆と共に呟いてた。
石畳沿いに見える建物群に囲まれた奥は低層の工房が固まって建っている。糸を紡ぐ工房らしい。ただし機械化はされておらず、あくまで手工業、魔法込みだけど(魔法って手作業分類なんだね)。そして問屋制だ。もちろん問屋=資本家は アッシュだったりする。もう何百年もその形態は変わっていないらしい。それもソレで何だかなーと思うが、みんなが満足しているならイイか、って処。
でもそこに文句、或いは一口噛ませろ、いや俺が仕切る俺に渡せってグイグイ来てるのが噂の“早朝の挨拶”からマウント取っちゃうぞな“ヤンゴトナイ”男爵な領主様らしい。
まあ、どこでも同じ、見慣れたみんな大好き貪欲私利私欲追求主義バンザイってとこかな。
ねえ、ほら、ちゃんと話し聞いてたでしょ。
そんな、街全体で花魁蜘蛛の糸の生産を“秘匿魔法技術”を以て生業として成り立たせているのが此の街“サガン”だ。
頑張って発展してくぞー! って意気込みは皆無だけど、まあぼちぼちやってこ、こう見えてもこの国じゃ数百年は続く最優良都市のひとつだしーってトコ?
そんな優良辺境都市だったが、現在は絶賛“滅亡の危機”に見舞われる可哀想な街……なのかな。
昼前ではあるが、日が昇って随分と経っている今、街中に人影はなく、閑散を通り越して無人の街と化している。昨日の大通りの人の往来が噓のようだ。
“遷”迄あと僅かで、最初の“カトンボ”出現でパニックって街から逃げ出そうと一斉に街壁門へと殺到したのを先回りされガッチリ閉鎖済みで、追い返され更にパニック騒乱状態となって暴動騒ぎに発展するも領兵な男爵領兵により瞬く間に鎮圧された。
鎮圧に際し、容赦はなかったらしい。死傷者も相当数出たと聞く。
今聞いているんだけど。
「男爵領兵は人間相手、特に弱い民衆相手だと勇猛になるからな。それを対魔物戦時にも発揮してもらいたいものだ」とゲート。
要するに対象撃破目的は人様ってことだな。見ている方向だけはわかるな。
今、街の人たちは皆、家屋の奥に閉じこもっているのだろうか。
今、何を思っているのだろうか。
委員長系ギル長も赤鬼もそれについては何にも言わない。言いたくない感じ? 怒っている? 悲しんでる? それともやっぱり……。
街並みに目を戻す。異様で、人々の、“街”を諦める原因と言えるかもしれない、数多く点在する虫食いとは言えない小さくない更地の全てが、二年前の“カトンボ”による空撃の跡とのこと。
全ての虫食い跡を合わせれば街の面積のざっと三分の一程度には達しているだろうか。ものすごく痛々しい。人も随分と死んでいるんだろうか。
復旧速度はその街の持っている潜在的な経済活性力の大小で決まるらしいが、一向に進んでいる様子はなかった。この街サガンは需要過多な“蜘蛛の糸”生産でおおい興っているはずなのに。何百年の昔から。それも“街”を諦める原因の一つかもしれない。
目新しい更地以外、この街はハナの感嘆を引き出す程に美しい。過去には整備もちゃんとされていた証だ。そこには人の生活があり、人の意思で明日を考えて今日を生きてた証だ。投げ出さず、何百年前から“蜘蛛の糸”の生産で潤う其の最初から、“遷”とは上手く付き合ってきたはずなのに。
「なるほど。で、結局どうなのよ?
男爵様は何をしたの?
男爵様は何をしなかったの?
で、男爵様は何をしたいの?」
委員長系ギル長と赤鬼ゲートの顔が引き攣る。ハナはやっと其処まで話が進んだか、って顔をし、サチは申し訳なさそうに顔を背けた。
うんうん、自分で振っといてなんだけど、やっぱり聞きたくない。関わりたくない……。
なんだかんだ言って、男爵様が関わってるよなー。ガッツリと。
2年前も、今も。
ギルドの広い敷地をぐるっと囲む石積みの高い隔壁の上は人が三人余裕で擦れ違える程の幅が三メートル強もあり(地表部分は四メートル強で緩やかな台形型をしている。中身は蜘蛛のお家。多分高架軌道と同じ年代で同じ工法、魔術的な何かで守られてる?)、周回できる。
僕らはその上を歩いている。
手摺の代わりの両端の立ち上がりは大人の腰辺り。マンションの手摺よりはよほど低い。ちょっと乗り出すだけで下まで覗けてえらく怖い。そのままズルっと滑って落ちそう。それを防ぐ安全帯を通す鉄の輪が五メートル間隔で取り付けられている。……動けないよね、これ。避けられないってことだよね。屋根もないし。
だから、そういう事なんだろうな。酷く献身的で非人道的。
この上で踏ん張り、スタンピードに対抗するらしい。
床や立上りには処々に黒染みがこびり付いている。通路中満遍となく、て訳じゃないけど。
僕は靴の底でこびり付いた染みを擦ってみる。染み込んでいる。取れない。幾層にも堆積し、靴の底で削っても削っても地の色は出てこない。物語るのは、長年積み重なって出来上がったってことだろう。酷く人っぽい、業の塊のような染みの跡。
「“遷”とは二年に一度、この時期に“溜まりの森”より|飛来したキマイラ種昆虫系蜻蛉の魔物、通称“カトンボ”の大群がこの街を襲うスタンピートだ。奴らは花魁蜘蛛が甚く気に入らないらしい。繁殖時期に合わせて襲ってくる。襲って食うのでは無く、ただその目的は殺戮それだけだ。喰らうでもなく。
夜明けから日暮れまで、それが3日間続く。
意外だったのは“カトンボ”の狙いは蜘蛛のみで、人は基本襲わないそうだ。でもそこは畜生の性で絶対じゃないし、近年はその割合が多くなっているそうだ。
何故に“カトンボ”単種なのか、どうして2年に一度なのか。何が目的なのか? 何かと不明な部分が多いが、魔物に問う事も出来ず“遷”とは此の街が出来た時から背負う業であり責務なのだろうと。
「だからと言って悲観ばかりではないぞ、“カトンボ”はキメラ種の大型形体に分類されるが、単体でなら比較的弱く狩りやすい品種だ。撃退出来れば質の良い資材やそれこそ大きな魔晶石が大量に手に入る絶好の機会でもある。
“遷”は決して厄災ばかりだけではなく、一大経済躍進の機会でもあったんだ。嘗ては蜘蛛糸とカトンボの大量魔晶石が街の産業推進の柱となっていた程だ。
お前達が街に入った当日、人が溢れていただろう? アレは本来はカトンボ迎撃の準備と称した前夜祭だったんだ。収穫祭の一環だな。
傭兵の姿も見ただろう。“遷”の期間はどうしてもギルドや冒険者の人数が足りないからな、特別な目こぼしで傭兵を受け入れて、街に迷い込んだカトンボを住民と共同で駆逐してもらっていた。
傭兵には他の迷惑を掛けないとの約定で特別に部材も魔晶石も全部『取っ払い』で優遇させてやり、大勢が喜んで集まってきていた。結果、好景気で街中お祭り騒ぎさ。
全て嘗ての、話しだけどな」
と、委員長系ギル長は寂しそうに説明を締め括った。
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