51 / 129
第五節 〜ギルド、さまざまないろ〜
051 此処(ここ)で噛みつかなくて、如何(どう)するのよ。
しおりを挟む
ハナさま降臨。悪役令嬢としての本性が垣間見れます。
それとも“御(おほみ)たる”の片鱗?
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
そうだ蜘蛛だ! あの蜘蛛は何処に行った? って、そもそもあの蜘蛛はなんだったんだ?
僕らの周りでは未だ蹲っている者、未だ気を失っている者、気丈に立ち上がり周りを気遣う者、色々だ。
何がどうなった? どんな状況だ、これ?
ふと影が差す。
普段と変わらない歩みの赤鬼ゲートさんが日を背に僕の足元に立ち、切断面がやけに綺麗な、二分割された愛棍棒を両の手に持ち、見下ろしていた。若干怒ってらっしゃる? 仕方ないじゃん。僕のせいじゃないし。
「引き分けだな」と赤鬼ゲートさん。
「僕の負けでしょ? 完全に一本取られてた」
てか、頭かち割られてた。
スッとハナの手が伸び、真っ直ぐにゲートの握る棍棒を指差す。それも切断面を。そして鼻で笑った。
うわぁ~追い込みかける気だ。それも酷えヤツ。堂に入っている様で察し、久々の侯爵令嬢モードだ。それも素の悪役の方。
「最初から使っていたら、最初からやる気になっていたら……。
それなのに大人の貴方は手加減もできない……ってどう思います? 赤鬼さん」
赤鬼さんが眉間に力を込めてグヌヌってなってる。手に持つ棍棒の切断面を再確認するように凝視し。
「……だから引き分けだ」
「フフッ、わかってらっしゃるのならよろしくてよ。ではこれは借りと言うことで。これから宜しくね、ギルドの負けられない英雄な隊長さん。
ところで周りのアレ、どうにかしてくださらない。私達いま、イチャラブ中だから」
怖、コノ二人ったら怖! なんか冷たい視線同士で話し通じてますけど。怖!
「あ、イチャラブはしてないですよ」と僕。
ハナに思いっきり頬っぺたを抓られた。
苦い顔で丸っと無視し、僕から視線を外すと未だ混乱している自分の兵隊達に向かい「何時までダラけている! 余興は終わりだ、訓練に戻れ」
おいおい、全てうっちゃって、それでいいの?
いいみたい。若干動きは鈍いが兵隊さん達は日常に戻ろうと動き始める。強か。
さてと、僕もハナの膝枕から復帰しようかな。いい加減恥ずかしいし。その前に。
「あんまり煽ってやるなよ。かわいそうだぞ。それにそもそもの原因ってこんな試合しようって言ったハナだからな」
「わかってないのねハム君。最初に絡んできたのはギルドのトップ、最初に私達を舐め腐ったのはギルドのナンバー2。
此処で噛みつかなくて如何するのよ。小突かれ回されるのはいやよ私。
お尻を噛まれたら噛み返す。ハムくんだってそうでしょ?」
そう……なんだけれどもね。
「それに、どうして最初から手を抜いていたの? 負けてあげるのと、手を抜くのとは違うのよ。最後、ちょっと怖かったんだから」
ごもっとも。ちょっとどころじゃなかった。僕も正直焦った。でもゲートとの勝負は勉強になった。強い魔物と強い人と戦うのとは全く違うって事がわかった。何より、対人戦は感情のコントロールが大事だって事。殺してしまうかもしれないと思う恐怖と、強者を殺せる喜びと要求。
うわ、やなこと考えちゃった。ちょっと反省。
でもなあ……。
でもなあ……、さっきから小っ恥ずかしい膝枕状態でハナと話してるんだけど、下と上で。こういうシチュエーションだと夢のような幸せな出っ張りで向こうにある顔が見えないって言うのがお約束なのに、ストレート障害物なしって……あ! ダメ。ゴメンなさい。肘直スタンプはやめて。
鼻、陥没してね。……もうしません。
「ところでさ、話し、元に戻るんだけどさ、蜘蛛、イッパイいたよね」と僕。
「いたね」とハナ。
「今どこいったか知ってる?」
「お家に帰ったみたいよ」
「そうなんだ、ところでコレがなんだか知ってる?」
「分蜂ね。蜂じゃないけど」
と、さっきまで赤鬼が立っていた位置に膝を抱えてしゃがんでいる委員長系ギル長様のご尊顔が近い。そしてパンツ見えそう。後ろに申し訳なさそうな顔のサチを連れて。
「蜂と違って“花魁蜘蛛”は新たな巣を探して独立するのは新しく生まれた王女なの。ここの蜘蛛は全て識別されているのだけれど、“コノの子”は見た事ないからさっき出てきた現行の女王から今、生まれたのでしょうね。分離かな。よくわかんない。
でも見て、純白銀な個体だけど背に藍く五芒星が描かれているでしょ? それが女王の証。
でも感動。分蜂なんて文献によると三百年ぶりよ」
「で、どうしてその新女王様が僕の自我存在理由にしがみ付いている?」
そうなのだ。15センチ程のミニマムな蜘蛛が僕の細くたおやかな“はんなり”ちゃんに八本の足でシッカリとしがみ付いているのだ。なんだそれ。
「知らないわよ。所詮は魔物のやる事だしね。気に入ったんでしょ。理解できないけど。
そんな事より(そんな事って……コレ、十分重要案件だと思うけど)
何時までもそんな所で寝てないで、ソレを連れて来てちょうだい。これからの事を相談しましょ。ゲートとのお話し合いは終わったんでしょ」
と、立ち上がる委員長系ギル長。
ケッ、やっぱり隔てる物は皆無、一直線で空がよく見えるぜ。最初に出会った時の豊満はやっぱフェイクだったのでゴザル。あ! ダメ。ゴメンなさい。膝ダブル直スタッピング顔面はやめて。
足が綺麗だった事は記述する。眼福。
“飛び膝蹴り”はヤベーって! 褒めてるだろ!
〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告
同じ場所を短時間で負傷されますと、修復に時間が掛かるようです。
今後の検討、改修案件ですね。良好なデータの回収が何よりです。
と結論 ∮ 〉
そうですか、去ね。
ソレを連れて、もとい貼り付けて歩くと、ギルド兵達が皆怯えてモーゼの海割りの如く道ができる。女性兵が引き攣った悲鳴をあげて腰を抜かし、そのまま尻を擦りながらカサカサと器用に後退していった、面白いものが見れた。
ああそうさ、赤鬼との戦闘でまたもや服はズタボロ、なのに股間に蜘蛛を貼り付けてるなんて笑えるだろ? うっせぇわ。
パンツ見えてるぞ。
「かわいいのに」とハナ。
ありがとうハナ。そのぶっ壊れ審美感に感謝。感謝か?
◆ (『女王ハナちゃん』の視点です)
蜘蛛って、やっぱり拡大で見るとキモいのよね。細かくびっしり生えた毛がゾワって来るし、リアルで引くわ。
でもなんか逆張りで可愛いと思ってしまう私は異端? でも私は進むの、此の邪な感情に身を委ねるの。ああ、此手触り、ワンコの耳バリの綺麗な白銀色のベルベット。チュキ。
「ぬしさま、すみません。わたしも、わたしもワンコの耳ベルベット、堪能してよろしいでしょうか。もう、もう、正直に申します。我慢がもう無理でしゅ」
ようこそ、異端で淫靡な世界に。
◇
「やめんか!」と委員長系ギル長。ハナとサチの頭を叩く。
「男子の股間に女子二人で手を伸ばし、頬を赤らめ、わしわし擦るのはやめなさい。ダメな女子になってる!
そして小僧、なに目を逸らし顔を赤らめ、なおかつ股間を押し出すのはやめろ」
いいじゃん。所詮蜘蛛だけだし、気分だけだし。
「よくないわ!」
◆ ※サチ談
「ええ、私は蜘蛛に押し倒されましたよ。ガッツリ。どういう訳でしょうかね? その他と十把一絡げにされましたね。私、一緒に“溜まりの深森”を抜けましたよね。扱いひどくないですか」
◆ ※ハナ談
「なんかね、気づいたら蜘蛛さん達が私の周りで円陣? を組んでくれていて、守っていてくれる感? がすごかったの。
でも、直ぐにハムくんの処に行きたかったんだけど、なかなか退いてくれなかったから、蹴り飛ばしちゃった。てへへ。
ああ、大丈夫だよ。蜘蛛さん達みんな許してくれたから。
なんとなくだけど。蜘蛛さん達、みんな私に懐いてる感じ? ほら私って、女王様体質だから」
◇
ギルド長室、その豪華でもなく質素でもなく中途半端な、広さも。な部屋に連れ込まれドアが閉まって外には漏れ聞こえない状態になった瞬間に、僕は委員長系ギル長に首元を捕まれ吊し上げられた。足、浮いてるし。
「どういうことよコレ、どういうことよコレ、どうなってるのよどうすんのよコレ! 説明しなさいよ‼︎」
説明って言ったって、説明して欲しいのは僕の方なんだけどな。足がぶらぶらしてるし。我関せずとサチはそっぽを向き、ハナに至っては勝手にオートクチュール的な豪華な机の引き出しを開け、中を物色してるし。
「ソコ! 勝手に開けない。手を突っ込んで物色しない」
「はぁ~」
と、大きなため息をつくハナ。
「いい大人が見っともないわよ、説明なんて誰も出来ないわよ。私達の頭の中に届いた、たぶん蜘蛛達のあの声が全て。そして分からない。分からない事を何時までもグダグダ言っていないで、出来る事をして行くほうが宜しくてよ。
それに説明をしてもらいたいのは逆に私たちの方。この街とかギルドとか蜘蛛とかね。
私達の力を本当に借りたいと思うならね」
カッチョいーぞハナ。なんか出来る女上司って感じで思わず『一生付いて行きます』って言っちゃいそう。
「ところで甘い物ないの? 甘いものを所望するわ……ビスケット、ないの?」
「僕は蜘蛛の外しかたを所望」
なんとか言えよ!
ココがいいの。ココに決めたんだから。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
それとも“御(おほみ)たる”の片鱗?
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
そうだ蜘蛛だ! あの蜘蛛は何処に行った? って、そもそもあの蜘蛛はなんだったんだ?
僕らの周りでは未だ蹲っている者、未だ気を失っている者、気丈に立ち上がり周りを気遣う者、色々だ。
何がどうなった? どんな状況だ、これ?
ふと影が差す。
普段と変わらない歩みの赤鬼ゲートさんが日を背に僕の足元に立ち、切断面がやけに綺麗な、二分割された愛棍棒を両の手に持ち、見下ろしていた。若干怒ってらっしゃる? 仕方ないじゃん。僕のせいじゃないし。
「引き分けだな」と赤鬼ゲートさん。
「僕の負けでしょ? 完全に一本取られてた」
てか、頭かち割られてた。
スッとハナの手が伸び、真っ直ぐにゲートの握る棍棒を指差す。それも切断面を。そして鼻で笑った。
うわぁ~追い込みかける気だ。それも酷えヤツ。堂に入っている様で察し、久々の侯爵令嬢モードだ。それも素の悪役の方。
「最初から使っていたら、最初からやる気になっていたら……。
それなのに大人の貴方は手加減もできない……ってどう思います? 赤鬼さん」
赤鬼さんが眉間に力を込めてグヌヌってなってる。手に持つ棍棒の切断面を再確認するように凝視し。
「……だから引き分けだ」
「フフッ、わかってらっしゃるのならよろしくてよ。ではこれは借りと言うことで。これから宜しくね、ギルドの負けられない英雄な隊長さん。
ところで周りのアレ、どうにかしてくださらない。私達いま、イチャラブ中だから」
怖、コノ二人ったら怖! なんか冷たい視線同士で話し通じてますけど。怖!
「あ、イチャラブはしてないですよ」と僕。
ハナに思いっきり頬っぺたを抓られた。
苦い顔で丸っと無視し、僕から視線を外すと未だ混乱している自分の兵隊達に向かい「何時までダラけている! 余興は終わりだ、訓練に戻れ」
おいおい、全てうっちゃって、それでいいの?
いいみたい。若干動きは鈍いが兵隊さん達は日常に戻ろうと動き始める。強か。
さてと、僕もハナの膝枕から復帰しようかな。いい加減恥ずかしいし。その前に。
「あんまり煽ってやるなよ。かわいそうだぞ。それにそもそもの原因ってこんな試合しようって言ったハナだからな」
「わかってないのねハム君。最初に絡んできたのはギルドのトップ、最初に私達を舐め腐ったのはギルドのナンバー2。
此処で噛みつかなくて如何するのよ。小突かれ回されるのはいやよ私。
お尻を噛まれたら噛み返す。ハムくんだってそうでしょ?」
そう……なんだけれどもね。
「それに、どうして最初から手を抜いていたの? 負けてあげるのと、手を抜くのとは違うのよ。最後、ちょっと怖かったんだから」
ごもっとも。ちょっとどころじゃなかった。僕も正直焦った。でもゲートとの勝負は勉強になった。強い魔物と強い人と戦うのとは全く違うって事がわかった。何より、対人戦は感情のコントロールが大事だって事。殺してしまうかもしれないと思う恐怖と、強者を殺せる喜びと要求。
うわ、やなこと考えちゃった。ちょっと反省。
でもなあ……。
でもなあ……、さっきから小っ恥ずかしい膝枕状態でハナと話してるんだけど、下と上で。こういうシチュエーションだと夢のような幸せな出っ張りで向こうにある顔が見えないって言うのがお約束なのに、ストレート障害物なしって……あ! ダメ。ゴメンなさい。肘直スタンプはやめて。
鼻、陥没してね。……もうしません。
「ところでさ、話し、元に戻るんだけどさ、蜘蛛、イッパイいたよね」と僕。
「いたね」とハナ。
「今どこいったか知ってる?」
「お家に帰ったみたいよ」
「そうなんだ、ところでコレがなんだか知ってる?」
「分蜂ね。蜂じゃないけど」
と、さっきまで赤鬼が立っていた位置に膝を抱えてしゃがんでいる委員長系ギル長様のご尊顔が近い。そしてパンツ見えそう。後ろに申し訳なさそうな顔のサチを連れて。
「蜂と違って“花魁蜘蛛”は新たな巣を探して独立するのは新しく生まれた王女なの。ここの蜘蛛は全て識別されているのだけれど、“コノの子”は見た事ないからさっき出てきた現行の女王から今、生まれたのでしょうね。分離かな。よくわかんない。
でも見て、純白銀な個体だけど背に藍く五芒星が描かれているでしょ? それが女王の証。
でも感動。分蜂なんて文献によると三百年ぶりよ」
「で、どうしてその新女王様が僕の自我存在理由にしがみ付いている?」
そうなのだ。15センチ程のミニマムな蜘蛛が僕の細くたおやかな“はんなり”ちゃんに八本の足でシッカリとしがみ付いているのだ。なんだそれ。
「知らないわよ。所詮は魔物のやる事だしね。気に入ったんでしょ。理解できないけど。
そんな事より(そんな事って……コレ、十分重要案件だと思うけど)
何時までもそんな所で寝てないで、ソレを連れて来てちょうだい。これからの事を相談しましょ。ゲートとのお話し合いは終わったんでしょ」
と、立ち上がる委員長系ギル長。
ケッ、やっぱり隔てる物は皆無、一直線で空がよく見えるぜ。最初に出会った時の豊満はやっぱフェイクだったのでゴザル。あ! ダメ。ゴメンなさい。膝ダブル直スタッピング顔面はやめて。
足が綺麗だった事は記述する。眼福。
“飛び膝蹴り”はヤベーって! 褒めてるだろ!
〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告
同じ場所を短時間で負傷されますと、修復に時間が掛かるようです。
今後の検討、改修案件ですね。良好なデータの回収が何よりです。
と結論 ∮ 〉
そうですか、去ね。
ソレを連れて、もとい貼り付けて歩くと、ギルド兵達が皆怯えてモーゼの海割りの如く道ができる。女性兵が引き攣った悲鳴をあげて腰を抜かし、そのまま尻を擦りながらカサカサと器用に後退していった、面白いものが見れた。
ああそうさ、赤鬼との戦闘でまたもや服はズタボロ、なのに股間に蜘蛛を貼り付けてるなんて笑えるだろ? うっせぇわ。
パンツ見えてるぞ。
「かわいいのに」とハナ。
ありがとうハナ。そのぶっ壊れ審美感に感謝。感謝か?
◆ (『女王ハナちゃん』の視点です)
蜘蛛って、やっぱり拡大で見るとキモいのよね。細かくびっしり生えた毛がゾワって来るし、リアルで引くわ。
でもなんか逆張りで可愛いと思ってしまう私は異端? でも私は進むの、此の邪な感情に身を委ねるの。ああ、此手触り、ワンコの耳バリの綺麗な白銀色のベルベット。チュキ。
「ぬしさま、すみません。わたしも、わたしもワンコの耳ベルベット、堪能してよろしいでしょうか。もう、もう、正直に申します。我慢がもう無理でしゅ」
ようこそ、異端で淫靡な世界に。
◇
「やめんか!」と委員長系ギル長。ハナとサチの頭を叩く。
「男子の股間に女子二人で手を伸ばし、頬を赤らめ、わしわし擦るのはやめなさい。ダメな女子になってる!
そして小僧、なに目を逸らし顔を赤らめ、なおかつ股間を押し出すのはやめろ」
いいじゃん。所詮蜘蛛だけだし、気分だけだし。
「よくないわ!」
◆ ※サチ談
「ええ、私は蜘蛛に押し倒されましたよ。ガッツリ。どういう訳でしょうかね? その他と十把一絡げにされましたね。私、一緒に“溜まりの深森”を抜けましたよね。扱いひどくないですか」
◆ ※ハナ談
「なんかね、気づいたら蜘蛛さん達が私の周りで円陣? を組んでくれていて、守っていてくれる感? がすごかったの。
でも、直ぐにハムくんの処に行きたかったんだけど、なかなか退いてくれなかったから、蹴り飛ばしちゃった。てへへ。
ああ、大丈夫だよ。蜘蛛さん達みんな許してくれたから。
なんとなくだけど。蜘蛛さん達、みんな私に懐いてる感じ? ほら私って、女王様体質だから」
◇
ギルド長室、その豪華でもなく質素でもなく中途半端な、広さも。な部屋に連れ込まれドアが閉まって外には漏れ聞こえない状態になった瞬間に、僕は委員長系ギル長に首元を捕まれ吊し上げられた。足、浮いてるし。
「どういうことよコレ、どういうことよコレ、どうなってるのよどうすんのよコレ! 説明しなさいよ‼︎」
説明って言ったって、説明して欲しいのは僕の方なんだけどな。足がぶらぶらしてるし。我関せずとサチはそっぽを向き、ハナに至っては勝手にオートクチュール的な豪華な机の引き出しを開け、中を物色してるし。
「ソコ! 勝手に開けない。手を突っ込んで物色しない」
「はぁ~」
と、大きなため息をつくハナ。
「いい大人が見っともないわよ、説明なんて誰も出来ないわよ。私達の頭の中に届いた、たぶん蜘蛛達のあの声が全て。そして分からない。分からない事を何時までもグダグダ言っていないで、出来る事をして行くほうが宜しくてよ。
それに説明をしてもらいたいのは逆に私たちの方。この街とかギルドとか蜘蛛とかね。
私達の力を本当に借りたいと思うならね」
カッチョいーぞハナ。なんか出来る女上司って感じで思わず『一生付いて行きます』って言っちゃいそう。
「ところで甘い物ないの? 甘いものを所望するわ……ビスケット、ないの?」
「僕は蜘蛛の外しかたを所望」
なんとか言えよ!
ココがいいの。ココに決めたんだから。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる