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Chap.1 X in Unknownland
Chap.1 Sec.5
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正直、変なもんを拾っちまったな、という自覚はあった。
「ちょっとセト君、そわそわしてないでさ、ごはんの手伝いしてくれない?」
「飯なんて今はどうでもいいだろ」
モーターホームの中に入ったはいいが、サクラに託した異邦人のようすが気になって落ち着かない。サクラのあの感じだと見捨てられるかも知れない。もし、そうなるなら、連れてくるべきではなかった。
日が沈めば感染者が活発になる。このあたりは少ないとはいえ、あんなひ弱そうな人間、一瞬でやられそうだ。追い縋られても泣かれても、あそこで適当な隠れ場所を見つけて、携帯食料と何か武器になる物を渡してやればよかった。
「……セト」
ソファの上で自分の行動に苛ついていたところ、イシャンが隣に座った。会ってからイシャンは一言も話していない。
「なんだよ。お前も、入れるべきじゃねぇって? ……でもよ、そんな危ないやつじゃねぇだろ」
「……そうだな。たしかに、あの人間は貧弱な体躯で、危険には見えなかった」
「だろ? なら、入れてやろうぜ。とりあえず一晩おいてやって、明日の朝、送ってやればいいじゃねぇか」
「……危険に見えないからと言って、リスクが無いわけではない。私は、危険分子になりうる者は……入れるべきでは、ないと思う」
「あんな弱そうなやつの何がリスクなんだよ!」
図らずしも大きくなった声にハッとし、小さく舌打ちをする。キッチンでカチャカチャとやっていたティアが、おもむろに戻ってきた。サングラスは身につけていない。
「そんな心配しなくても……サクラさんは入れるつもりだと思うよ?」
「何を根拠にそう言えるんだよ……」
「セト君が拾ってきた動物は、ぜんぶ今まで許可してくれたんでしょ?」
「だから拾ってねぇって。ほんとしつけぇな……つか、サクラさんのあんなキレてる感じ見ておいて、よくそんなことが言えるよな……」
「え? サクラさん、本気で怒ってると思った?」
「……は?」
怪訝な顔で、ティアの意図を問う。ティアは唇を曲げたまま、こちらを見下ろしてクスリと笑った。
「まだまだ甘いね、セト君は」
意味が分からない。しかし、ティアが言うのだから間違いないのかも知れない。
隣にいたイシャンが、大きく頷いた。
「どちらにせよ……サクラさんの判断に、従おう」
「そこに関しては異論ねぇよ」
もちろんサクラに逆らう気はない。行きずりの人間に、そこまで情をかけてやるつもりもない。
「……けど、」
膝においた拳を、強く握りしめる。ぽろぽろと涙をこぼしていたあの顔が、脳裏に焼きついて離れない。
「サクラさんが見捨てても、俺は——このまま放り出す気はねぇからな」
「え~……それって十分、異論を唱えてると思うけど?」
「うるせぇな。俺ひとりで安全な場所まで送ってくだけだ。それなら問題ねぇだろ」
「……セトに危険が及ぶ可能性がある以上、サクラさんは許可しないと思うが……」
「あんなやつにどうこうされねぇよ。あっちだって、何かするならもっと早くにやってるだろ」
「そうだね。いくらでもチャンスあったよね? セト君は、おんぶまでしてあげてたわけだし?」
「あれだな、お前はただ俺をからかいたいだけだな?」
睨め上げると、ティアはムカつくほど楽しそうに破顔し、
「ま、好きに宣言しておきなよ。賭けてもいいけど——絶対に、サクラさんはあの子を入れるよ」
ティアがここまで言うのだから、本当に叶うのかも知れない。
その言葉を、強く信じたい自分がいた。
「ちょっとセト君、そわそわしてないでさ、ごはんの手伝いしてくれない?」
「飯なんて今はどうでもいいだろ」
モーターホームの中に入ったはいいが、サクラに託した異邦人のようすが気になって落ち着かない。サクラのあの感じだと見捨てられるかも知れない。もし、そうなるなら、連れてくるべきではなかった。
日が沈めば感染者が活発になる。このあたりは少ないとはいえ、あんなひ弱そうな人間、一瞬でやられそうだ。追い縋られても泣かれても、あそこで適当な隠れ場所を見つけて、携帯食料と何か武器になる物を渡してやればよかった。
「……セト」
ソファの上で自分の行動に苛ついていたところ、イシャンが隣に座った。会ってからイシャンは一言も話していない。
「なんだよ。お前も、入れるべきじゃねぇって? ……でもよ、そんな危ないやつじゃねぇだろ」
「……そうだな。たしかに、あの人間は貧弱な体躯で、危険には見えなかった」
「だろ? なら、入れてやろうぜ。とりあえず一晩おいてやって、明日の朝、送ってやればいいじゃねぇか」
「……危険に見えないからと言って、リスクが無いわけではない。私は、危険分子になりうる者は……入れるべきでは、ないと思う」
「あんな弱そうなやつの何がリスクなんだよ!」
図らずしも大きくなった声にハッとし、小さく舌打ちをする。キッチンでカチャカチャとやっていたティアが、おもむろに戻ってきた。サングラスは身につけていない。
「そんな心配しなくても……サクラさんは入れるつもりだと思うよ?」
「何を根拠にそう言えるんだよ……」
「セト君が拾ってきた動物は、ぜんぶ今まで許可してくれたんでしょ?」
「だから拾ってねぇって。ほんとしつけぇな……つか、サクラさんのあんなキレてる感じ見ておいて、よくそんなことが言えるよな……」
「え? サクラさん、本気で怒ってると思った?」
「……は?」
怪訝な顔で、ティアの意図を問う。ティアは唇を曲げたまま、こちらを見下ろしてクスリと笑った。
「まだまだ甘いね、セト君は」
意味が分からない。しかし、ティアが言うのだから間違いないのかも知れない。
隣にいたイシャンが、大きく頷いた。
「どちらにせよ……サクラさんの判断に、従おう」
「そこに関しては異論ねぇよ」
もちろんサクラに逆らう気はない。行きずりの人間に、そこまで情をかけてやるつもりもない。
「……けど、」
膝においた拳を、強く握りしめる。ぽろぽろと涙をこぼしていたあの顔が、脳裏に焼きついて離れない。
「サクラさんが見捨てても、俺は——このまま放り出す気はねぇからな」
「え~……それって十分、異論を唱えてると思うけど?」
「うるせぇな。俺ひとりで安全な場所まで送ってくだけだ。それなら問題ねぇだろ」
「……セトに危険が及ぶ可能性がある以上、サクラさんは許可しないと思うが……」
「あんなやつにどうこうされねぇよ。あっちだって、何かするならもっと早くにやってるだろ」
「そうだね。いくらでもチャンスあったよね? セト君は、おんぶまでしてあげてたわけだし?」
「あれだな、お前はただ俺をからかいたいだけだな?」
睨め上げると、ティアはムカつくほど楽しそうに破顔し、
「ま、好きに宣言しておきなよ。賭けてもいいけど——絶対に、サクラさんはあの子を入れるよ」
ティアがここまで言うのだから、本当に叶うのかも知れない。
その言葉を、強く信じたい自分がいた。
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