虎狩りと鴨撃ちの輪舞(ロンド) ~奈佐原高校チェス同好会~

奈倉柊

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第二部  白:奈佐原高校チェス同好会feat.鷺沢悠  黒:鮎川凛久  20xx年10月x日

24.エピローグ(感想戦①by大宮)

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 何つうことだ、と思った。
 あの鮎川がだ。
 恋にうつつを抜かして勉強が手につかないとか。
 鷺沢に悩み相談したりとか(お前が鷺沢に、相談なんかできる立場か)。
 その鷺沢は若干、辟易しつつも、竹内のとかそういう、限りなくどうでもいいことを教えてやってるらしい。
「なんか、凛久がすごい甲斐甲斐しく尽くしてるっていうか、そういう図式みたいで」
 鷺沢は笑顔と呆れ顔の中間でそんなことを言って、俺をドン引きさせる。
 ちなみに鮎川をぶちのめそうとして呼び出したのに結局そうできなかった俺は、当然フラストレーションを抱えたまま日々を過ごしていた。
 ニキの態度は相変わらずおかしいし(物理的に距離が近すぎるし、妙にキラキラした笑顔を向けてくるし、何より俺と対局したがるようになった)、鷺沢はチェス部に入り浸りでニキになんか入れ知恵してるし(クラリネットはどうなったんだよ)、航太まで時々そこに加わって熱心にあれこれやってる。
 棋力的に俺とそこそこいい勝負になってきてたクマはその後、爺ちゃんの回復に伴って本格的に将棋の方に進むとかでチェス部には顔を出さなくなり、つまり俺は、鷺沢と航太をセコンドにつけたニキと対局せざるを得ない。
 俺の見当違いでなきゃ、俺がニキと釣り合うように外見を取り繕ったのと同じ感覚で、ニキのほうは俺と釣り合うように棋力をつけようとしてる、んだと思う。
 それはまあ、素直に嬉しい。
 ただ何となく、ニキが至近距離で俺に笑いかけてくる時、俺は訳もなく苛立ってしまう。
 そもそも恋人偽装しようとしてた時には全然うまくやれてなかったのに、今のニキの、このあざといほどの恋人感はどういうことだ。
 それでつい邪険な物言いをして、そうなるとニキはちょっと傷ついたみたいな顔をする。

 そんなある日。
「大宮さ、今度デート行かない?」
 唐突に、ニキがそう言ってきた。
「は? デート?」
「なんか、二人でどっか行くの、いいかなって」
「いや別に、今までも二人でどっか行くことなんか普通にあったろ」
「だからそういうんじゃなくて、デートとして行くってことだよ」
 いやいやいや。
 俺らどっちも別に、好きだとも付き合おうとも言ってないのに、いきなり逃げ道を塞ごうとしてきてないか?
 それともニキにとってこれは恋人偽装の延長線上の提案で、俺ら今さら好きだとか付き合おうだとかは言う必要ないってことなのか?
 もちろん俺はニキを、余裕で好きだ。
 今ではちゃんと自覚している。
 鮎川という脅威を前にして、俺はニキを好きだし大事にしたいし守りたい、と思った。
 だけどニキは俺にとって、貴重なチェス友達でもある。
 月並みなことを言うなら、恋愛を持ち込んでその後うまく行かなくなった時、大事なチェス友達を失うことが俺には怖い。
 けどそこを言い訳にしようとしてる時点で、他には何も言い訳が出て来ないってことでもある。
 を考えてから俺は結局、いいよ、と答えた。
 ニキは一瞬、悪戯っぽく期待に満ちた上目遣いで「マジで?」と無音の訊き返しをしたが、俺から遠いほうの手が隠れガッツポーズになってる。
「じゃあ大宮はさ、どっか行きたいとこある?」
 声を弾ませてそう言いながらニキはもうスマホの画面を触り始めていて、覗いてみると「デート 日帰り 高校生」とかで恥ずかしげもなく検索してる。
「待て待て待て。お前、俺を高校生デートのテンプレに誘う気か?」
「え? 何かおかしい? だってせっかくだし、デートっぽいとこ行きたいじゃん」
「どっか行きたいとこあるかって俺に訊いた直後にそれか」
「あれ? 、どっかある?」
 ない前提で訊いたのか。
「あるよ。俺にだって、行きたいとこくらい」
 途端にニキは破顔して、じゃあそこにしようよ、と言った。

 いいのか?
 本当に、俺の行きたいとこで?
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