ゾンビ転生〜パンデミック〜

不死隊見習い

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Final Season

星ーPolarisー

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 “ディールークルム”はデネブの心臓を貫くとその体を後方の巨大なデネブを象った像に突き刺し、ヒビを入れていた。

「シリウスさん!!」

 ポラリスは霧から戻りそのまま落下するシリウスを受け止めた。シリウスの腹部に空いた穴はもちろん、“ディールークルム”がその体を通過した影響からかシリウスの魔力は乱れてその息は徐々に浅くなっていった。

「シリウスさん!!デネブは倒しました。目を開けてください!!」

 ポラリスの叫びに返答はなく、彼の腕の中のシリウスの拍動が段々と小さくなっていく。
 ポラリスは一瞬、思案すると何かに懸けるようにシリウスの傷口に手を当てた。

(頼む、応えてくれ……この人はまだこの世界に必要なんだ……!!)

 ポラリスは全身の黒尸菌に呼びかけ、シリウスへと自分の魔力、生命力が流れる様イメージする。
 するとシリウスの体は光り輝き、その傷は徐々に癒されていった。
 
 黒尸菌この世界で“回復”の能力を取り込んだ。それはポラリスの細胞と共存を果たした菌も例外ではない。
 “回復”は通常、自身のみの傷を癒す能力であった。しかし、デネブの肉体、力を取り込んだことでその能力は更に変異し溢れ出る生命力を他者に流し込むこともできる様になっていた。

「ぐっ……うう」
「!!シリウスさん!!」

 傷が完全に塞がるとシリウスは息を吹き返し、ぼんやりとポラリスを見た。

「ポラリス……俺は……ぐっ!」

 体表の傷は塞がっても内臓は未だに傷がついているらしくシリウスは痛みに唸るがすぐに自身で治癒魔法をかけ始めた。

 すると、デネブが突き刺さっていた巨像が音を立てて崩れ、デネブは地面へと落下した。

「シリウスさんはここに居て下さい。……自分が見てきます」
「……悪い。……頼んだぞ」

 ポラリスはシリウスを残して立ち上がると巨像の崩落による砂煙の中を歩み始めた。

 偶然か、或いは黒尸菌同士が引き合わせたのか瓦礫の中、デネブの姿を速やかに発見することができた。
 デネブは奇跡的にも瓦礫の下敷きになるのは逃れ、ぐったりと大聖堂の天井を見つめていた。その胸には未だに“ディールークルム”が突き刺さっている。

「……負けたよ。……二人がかりで聖職者をなぶるとは罰当たりな奴らめ」
「……」

 デネブは皮肉めかして話すがその命は長くはないことをポラリスは感じ取っていた。

「おいおい、冗談だよ。……この戦いに卑怯も何もない。ただ最後にどちらが立っているか、それだけだ。そして運命は君たちを選んだ様だ」

 自身の言葉に黙り込むポラリスを励ますかの様にデネブは語る。ポラリスは尚も黙り込みデネブに突き刺さる槍を抜いた。
 デネブに空いた穴は再生を試みようとするも新たに増殖する肉は次々と朽ち果てていきその傷が癒えることはないだろう。

「あなたはもう助からない。……あなたと同じ体の自分なら分かる。体の黒尸菌が次々に死んでいっているはずだ」
「同じ体か……。ふっ、ではそのよしみでいいことを教えてやろう。耳を貸してくれ。……なに、取って食ったりはしないさ」

 デネブはポラリスの瞳をじっと見つめる。ポラリスはその目に敵意がないことを感じ取ると恐る恐る耳をデネブの口元に近づけた。

 デネブはポラリスに囁くとポラリスは数秒目を見開き、すぐに何かを悟った様な目をした。

「……この体になってから自分でも何となく分かっていた。……だけど自分は最後まで勤めを果たす、それだけだ」

 ポラリスはゆっくりと立ち上がる。

「そうか、大した英雄願望だな。……では見せてくれよ、君は本当の英雄になり得るのか」

 その時、ポラリスの体に電流が走る。実際には彼の体の黒尸菌が何かに反応していた。ポラリスはデネブに詰め寄る。

「何を……一体何をした!!」
「ふふふ。街中の私の子羊達ゾンビに城に集まる様に伝えた。精々足掻いてみろ。最後のその時まで」

 デネブは苦しげに、それでも楽しげに笑う。ポラリスは自身の肌に感じるゾワゾワとした感触からデネブの話がハッタリではないことを悟った。
 その時、デネブの耳に聞き慣れた声が響いた。

「いい加減にしろよ、デネブ」
「デネブ、迎えに来ました」
「……アルタイル……ベガ……!?」

 見慣れた旧友達が側に立っていた。それは自身が最後に会った姿そのものであり、千年ぶりの再会にも関わらずこれといった懐かしさは感じなかった。

「な、何を言って……」

 ポラリスはデネブの言葉に辺りを見回す。

(私にしか見えていない……死ぬ前の幻というやつか……いや、或いは本物か……)

 デネブは冷静に目の前の光景の考察を始めるもその顔はどこか穏やかになっていく。

「俺らが迎えに来なきゃお前はいつまでもこの世に迷惑をかけるだろう」
「……我々は英雄といえど人の身、いつかは滅びる体。……神々は確かに手を差し伸べないかもしれないがそれでも見捨てた訳ではない。ただ我々は自身の運命に従って生きるしかないのです」
(分かっている。分かっていたさ。……それでも私は……)

 デネブの体は千年前にはすでに朽ち果てており、信者達の信仰心或いは黒尸菌によってその形を保っていた。しかし、そのどちらも無くなった今、デネブの体は砂の様に崩れ始めていた。
 しかし、彼の表情に苦しみはない。

「……ポラリス、君が運命に従って生きるのか、或いは抗うのか。……向こうで見物しているよ」

 デネブは自身の発言に自嘲する。

「ふっ……私があの世を信じるとはな……」

 ポラリスはただ哀しくデネブの最後を看取った。


「……ポラリス……奴は……?」
「……決着は着きました。しかし……」

 ポラリスはシリウスに街中のゾンビが城に向かっていることを伝えた。それは自分たちが城に戻ることが困難になっただけでなく闘技場で待機している面々にも危機が迫ることを意味する。
 二人がその対策に頭を回していると扉が開き、カーネルが顔を見せた。

「お前ら……やったのか!!」
「カーネルさん!!薬は!?」

 カーネルは黙って数本の液体の入った試験管を見せる。シリウスとポラリスは安堵の表情を浮かべるもののそれはすぐに暗くなり、カーネルはその理由を聞いた。

「なるほど……」
「何かいいい方法は……」

 カーネルは顎に手をついて考えると何かを閃いた様に口を開いた。

「……デネブが死んだのなら恐らくゾンビ共は“城に向かう”という薄い意識を持ちつつ、本能のままに行動しているはず。……何かでかい音でも鳴らせばしばらくはそっちに惹きつけられるはずだ」
「でかい音……闘技場の近くに時計塔があったな。あそこの鐘を鳴らせば……」

 城の少し北、闘技場の近くには大きな時計塔があり、毎日正午ごとに街全体に聞こえるほどの鐘の音が鳴り響いていた。その鐘を鳴らせばゾンビ達を惹きつけることができるだろう。

 シリウスは闘技場に念話テレパシーを送った。
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