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6話

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「私、私は…魔物討伐騎士団に入ろうと思っているんです!だから婚約破棄をしてくれませんか!?」

勇気を出し大きな声で思いを告げると少し心がスッキリとした。ローウェン様を見ると先程までの作り笑いが崩れて目を丸くしている。

「えっと…もう一回言ってくれるか?ちゃんと聞き取れなかったみたいだ」

いや聞こえてたはず!何のために大きな声で言ったと思ってるの!?都合のいい耳なのかな?

ニコリと私も作り笑いを浮かべて語尾を強めにゆっくりと告げる。

「だから!私は魔物討伐騎士団に!入ろうと思っているんです!なので!婚約破棄をしましょう?」

少しイライラしているのを察知したのか彼はソファの背もたれに背中を押し付ける。私の勢いに後ずさりしたのだろう。実際は背もたれに邪魔されて私と彼の間の距離は変わらないのだけど。

「王家の騎士ではなく魔物相手の騎士か?」

いつの間にか彼は元の顔に戻っているがその探るような視線は止めてほしい。

「もちろんそうですわ」
「俺と婚約破棄するための嘘じゃないのか?」
「いいえ、私は本気です」

真っ直ぐ目を見ると彼も真偽を見極めるように見つめる。少しそうしていると彼から大きなため息をつかれた。

「婚約破棄は君が思うほど簡単じゃない」
「えぇ…そこが問題ですの、どうすればできます?」

何かいい方法がないかと考えているとあからさまに彼はシュンとしていた。どうしよう。全然……惹かれない。普通だったらキュンとするんだろうけど。

「君は…俺が嫌いなのか?」
「嫌い?別に好きでも嫌いでもありません。貴方と同じですよ」
「…なに?」

彼は不可解だといわんばかりに目に鋭さが宿り眉間にシワが寄る。これは…素に近いはず、私の天使のアニタから聞いたとおりかもしれない。アニタから聞いたことをまとめるとこうだった。

『プライドが高く負けず嫌いでナルシスト』

要するに俺様系と推測する。しかし、少し接してみた感想は腹黒も少し入っているかもしれない。笑顔…なんか嘘っぽいもんね。…おっとローウェン様怒ってらっしゃる。髪色も赤だから似合うわ~って…口に出てないよね?…うん大丈夫だ。

「君と俺の何が同じなんだ!」
「ふふっ、同じですよ。貴方だって私のこと好きでも嫌いでもないでしょう?」
「……そんなことない」

彼の声が語尾にいくにつれ弱まっていく。図星だったようだ。ハァ…可愛いアニタの容姿を使って評判を落としたくないなぁ。

「確信もあるんですよ?」
「……」
「最初に挨拶、しましたよね?」
「あぁ」
「お互いの名前を呼びました」
「そうだが、それが何か?」
「それ以来、私も貴方も名前を呼んでいないんですよ」
「そんなはずは…」
「いいえ。ずっと私は貴方、貴方は君と呼んでいました」
「……」

押し黙ったか。う~ん、やり過ぎた?でももう少し距離を離したいんだよなぁ。嘘を言う訳にもいかないし、素直が一番。

「あぁもう一つ伝えておきたいことがありまして。まぁこれは貴方にとっては重要なことではないですが…」
「…なんだ!」

おっと…口調が変わっているのを見ると随分苛ついていらっしゃるようだ。怒りが爆発するのだけは勘弁してほしいな。

「貴方の容姿は胃もたれがします。先程は好きでも嫌いでもないと申しましたが、どちらかと聞かれると嫌いでしょうね」

これは爆弾発言とは言わない。精々鳥の糞といったところかな?まぁ…地味に嫌だけど。
しかし、ローウェンにとっては爆弾発言だった。

「そ、そうか…」

ローウェンはハハハと失笑し、アニタは満面の笑みを見せる。

「貴方も同じ気持ちでしょう?」

無言でふいっと下を向く。無言も目を逸らすのも肯定とも捉えられる。それより、今すぐ帰って婚約破棄の手続きをしてくれないかなとアニタが思っていると彼が不意に顔を上げる。

「俺の容姿が嫌なら…どんな容姿が好きなんだ?」

アニタの好みは知らないけど、私の好みは…

「ガタイが良くて塩顔の寡黙な方、ですかね?」

そう言うと彼はまた押し黙った。
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