Betrayed Heroes -裏切られし勇者の末裔は腐敗世界を破壊し叛く-

砂糖かえで

文字の大きさ
3 / 84
その勇者の名は

ep.3 楽に死ねると思うな

しおりを挟む
「――っ! お、お願いしますそれだけは……っ!」
「呑めないというのなら俺は別にそれで構わんが」
「……それでしたら……わ、私の命を引き換えにしますので、なにとぞよろしくお願いいたします……」
「ほう……」
「それであなたの怒りがほんのわずかでも癒えて、お願いも聞いていただけるのなら安いものです」
「その言葉に偽りはないな?」
「はい……。ここに来る前から覚悟はしていましたから」

 エスカは意を決した顔で言った。その言葉に嘘はないようだった。

「だがお前はおそらく勘違いをしている」
「え?」
「お前は綺麗な体のまま殺されると思ってるようだが、その使い方は俺が決める」
「…………」

 エスカは何かを言おうとしたがすぐに口を閉ざした。

「どうするかはすでに決まっている。ずっとずっと昔からな」

 センリは夢見ていた。いつか来るかもしれない復讐の機会を。どのように復讐を遂げるかを。夢見ていたのだ。

「楽に死ねると思うな」
「……はい」

 エスカは覚悟を決めた。そして祈った。故郷と世界の平和を。

「お前にはもう必要ないな」

 センリは指をパチンと鳴らして魔術を行使した。その瞬間、エスカの衣服が無残にも破け散った。エスカは生まれたままの姿でベッドの上に転がされた。

「全ての爪を剥いでやろう。その次は全ての指を折ってやろう。それから手足も。一本ずつな。終わったら今度は魔術で元に戻して、ボロ雑巾になるまで犯し尽くす。壊れそうになったら戻して最初からだ。最後は目玉をくり貫いて全身の皮を剥いでやるからな」

 狂気染みた内容にエスカは身震いを起こした。

「さあ、始めようか」

 その声とともにエスカの手が持ち上がり、親指の爪が見えない力によって、剥げた。

 家中にエスカの悲鳴が鳴り響く。だがしかしその声はオルベールにも2階にいる子供たちにも届かなかった。なぜならそれはセンリが魔術で深い眠りに落としていたからだった。

 ###

 針で貫かれたかのような一瞬の激痛。続くジリジリと焼けつくような痛み。意識はまだあるようだが、その顔は涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃになっていた。白いシーツは指から垂れた血で所々赤くなっている。

「おい、まだ手の指しか終わってない……ぞッ!」

 センリはエスカの右腕を掴むと本来ありえない向きへと曲げた。歪な音とともに声にならない悲鳴が辺りに響き渡った。

「もう限界か?」
「だ、大丈夫、ですから……。つ……続けて……ください……」

 エスカは折れていないほうの腕で体を起こして腹から声を絞りだした。

「滑稽だな。守る価値もない民のために裏切った相手に縋る様は」
「……いいえ。私に……とって……自国の民は、家族。守るべき……者たちです」
「何が家族だッ!」

 センリは怒鳴り、エスカの前髪を掴み上げて顔を近づけた。

「お前の家族とやらは無抵抗の者に罵声を浴びせるのか? 手を上げるのか? なぶり殺しにするのか?」
「…………」

 言葉の意味が分かったエスカは何も言い返すことができない。

「答えてみろッ!」

 鼻と鼻が当たるほどの距離でセンリは言った。エスカは震える唇でそれに答えた。

「……確かに、そういう方々は、いるかもしれません。ですが、皆がそういうことをするわけでは、ありません……」
「ーーッ!!」

 センリは掴んだ髪を勢いよく離した。エスカはその勢いのままにベッドから倒れるようにして落ちた。

「とんだお笑い草だな。話を聞いた俺が馬鹿だったようだ。まあ、そもそも端から約束なんて守る気はないけどな」
「……いいえ」
「あ?」
「あなたはきっと約束を守ってくれます」

 エスカはよろよろと立ち上がりながら言った。

「何を言ってる? もう壊れたのか?」
「だって……」

 エスカは次の言葉のためにくしゃくしゃの顏で笑顔を作った。そしてこう言った。

「だって、あなたの目の奥に温かい優しさが見えたから」
「ーーッ!!」

 エスカと過去の映像が重なり、センリの脳裏に過去の記憶がフラッシュバックした。

 無邪気に笑いあう少年少女。それを見守る両親。遠くから聞こえる罵声。血で赤く染まった部屋。辺りに飛び交う怒号。闇夜に紅くごうごうと燃え盛る炎。エスカに近い年頃の女が言った「あなたはとても優しい目の色をしているわね」という言葉と誰かの笑顔。

「……ぐッ」

 センリは頭を抱えて後ずさりした。息は荒くなり異常なほどの汗をかいていた。

「あの……」

 あまりの様子にエスカは手を差し伸べた。

「触るなッ!」

 だがセンリは差し伸べられた手を払いのけた。壁に寄りかかり何度も荒い呼吸を繰り返している。

 しばらくすると呼吸も汗も落ち着いてきた。センリはふらふらしながらエスカに近づくと手をかざした。温かな暖色の光とともに剥がれた爪が再生していく。折れた腕も元通りになった。

「……今日は終わりだ。気が逸れた」

 センリは自分の上着をエスカに向かって放り投げると、辛そうな足取りで部屋から出ていった。

 エスカは元通りになった自分の体をまじまじと見た後に与えられた上着を着てベッドに横になった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

処理中です...