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断片;旅の途中
誰が為の騎士 -3-
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「こんな物しかなかったが使えるものはあるかい?」
カリンの両親が家の中から色々と持って出てきた。その中には箒や包丁、釣り竿に洗濯竿や暖炉用の火掻き棒などがあった。
ガイアは火掻き棒を手に取った。程良い長さの棒であり金属製なので強度も高い。武器はそれに決めたようだ。
「少し見回りに行ってきます。みなさんは家の中から出ないでください」
「行っちゃうの?」
「心配はいらない。すぐに戻ってくる」
ガイアは不安げなカリンを残して見回りに行った。
やはりカリンが暮らすこの地区にはすでに魔族が入り込んでいた。数は決して多くはないが戦う力を持たない住民にはどうすることもできなかった。
見渡せば四方八方に血が飛び散っていて、足元には食べ残された死体の一部が転がっていた。平和だった昨日とは打って変わって地獄のような世界だった。
血の跡を辿って広場に出るとそこには武装した大人たちがいた。その内の1人は魔術を使っている。ガイアは声をかけて近寄った。
「みなさんはこの地区の方ですか?」
「ええ。そうです。あなたもですか?」
呼びかけに応えてくれたのは魔術を使っていた男だった。
「はい。みなさんはここで何を?」
「私たちはここで戦っています。広いですし何より見通しがいい。それと学院時代に覚えた魅了の魔術でこの地区に蔓延る魔族をここへ呼び寄せています」
「敵が魔族だと知っているんですね」
「歴史学を専攻していたもので。多少ですが魔族についての知識はあります」
魔術師の男は自信ありげに答えた。
「なるほど。それは心強い。うしろの方々は?」
「彼らはこの地区でも腕が立つ方々です。大工に石工、鍛冶屋に元兵士。現役の傭兵もいます。見たところあなたもなかなか良い身体をしていらっしゃる」
「私は元騎士。みなさんの力になれるはずだ」
「これはありがたい。協力感謝します」
ガイアが彼らの仲間に加わったところでさっそく魔族がやってきた。魅了の魔術に惹かれたのは鳥型と獣型の魔族。ともに血の混じった涎を滴らせながらガイアたちにいきなり襲いかかった。
ガイアは火掻き棒に風の魔術を付与した。棒の周りを風の刃が螺旋状に渦巻いて殺傷能力がぐんと上がった。
「いきます!」
魔術師の男は敵に向かって火の魔術を使った。放たれた火球は魔族に直撃してその体を燃え上がらせた。構えていた大人たちは敵が怯んでいるうちに一斉に斬りかかった。さすがの魔族も多対一では勝ち目がなく全身を串刺しにされて絶命し灰になった。
それからも魔族が現れるたびに同じ戦法で次々と倒していった。この戦法だと1人1人の負担が小さいので体力の消耗は少なくて済んだ。
しかしある時、彼らはとんでもないものを引き寄せてしまった。
「な、なんだあいつはッ!」
仲間の1人が叫んだ。視線の先には巨体の魔族。牛頭の化け物がいた。ミノタウロスという名のそれは人の倍はある大きさで無骨な鉈を手に持っていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ミノタウロスは吠え猛り力任せに鉈を振り回した。近くにいた仲間の男は胴に直撃を食らって体を二等分にされた。血と臓物をぶちまけながら地面に転がる死体。
それを見た仲間は恐怖におののいた。魔術師の男とガイアだけはどうやって倒すかを考えていた。
「みなさん! 諦めてはいけません! 仲間のためにもこの地区の人々のためにもここは踏ん張りましょう!」
魔術師の男はそうやって仲間の戦う気力を奮起させた。仲間たちは互いに顔を叩いたり頬を抓ったりして恐怖を無理やり沈めた。
「私がやつの動きを止めます。その間にみなさんで一斉攻撃をお願いします」
そう言い残して魔術師の男は1人ミノタウロスに立ち向かった。他はいつでも飛びだせるように準備した。
「万物の母となりし地の精霊よ。連鎖に逆らいし憐れを大地に縛りつけその養分となせ」
地の魔術が発動されて地面から無数の木の根が現れた。それはミノタウロスの足に絡みついて地面に縛りつける。さらに根は養分として魔力を吸い上げていた。
ミノタウロスは暴れて絡みつく根を引き剥がそうとしている。
「みなさんッ! 今のうちにッ!」
魔術師の男は振り返って合図をした。いざ出撃だと仲間たちは一斉に地面を蹴った。
「ぐあッ!」
しかし次の刹那、魔術師の男はミノタウロスに掴まれて口に放り込まれた。肉と骨を噛み砕く異音が響き渡り、みな思わず足を止めた。
男たちの顔は絶望の色で染められていた。一気に戦意を失いその場に立ち尽くした。
「止まるなッ!」
唯一戦意を失っていなかったのがガイアだった。まだ動きを封じられているミノタウロスへと単身突っ込み、その肩に飛び乗った。そして魔力付与した火掻き棒を思いっきり首のうしろに突き刺した。そこは急所の頭部と心臓へ直接魔術を叩き込める場所。一度に大打撃を与えることができなければそれが最も有効だった。
「食らえッ!」
ガイアは火掻き棒を通して風の魔術を体内に送り込んだ。ミノタウロスは体内を切り刻まれて激しく痙攣したあと、その場に頭から倒れた。
「どうだッ!」
地面に着地したガイアは敵の様子を見守った。すると倒れたミノタウロスから真っ黒な瘴気が噴出して体の再生を始めた。
「浅かったかッ。おいッ! 頭を狙えッ! 一斉に叩くぞッ!」
その声で立ち尽くしていた味方が我に返った。ガイアに従い、ミノタウロスの頭部へ一斉に攻撃を放った。頑丈な頭部にひびが入り、ガイアの止めの一撃で破壊した。
ミノタウロスは断末魔を上げることなく灰化して崩れ散った。
「……ふう」
安心して一息ついたガイアをよそに男たちは灰の山を掻き分けた。いないと分かっていても魔術師の男を探していた。その様子から相当信頼されていたことが窺えた。
無駄だと言うこともできずガイアは歩いて落ちていた剣を拾った。それは体を二等分にされた仲間が持っていたものだった。
「私は一旦家に戻ります」
魅了の魔術がなくなった今ここに留まる理由がなくなった。男たちは束ね役を失って不安そうだったがそれでも大きく頷いて見送った。
カリンの両親が家の中から色々と持って出てきた。その中には箒や包丁、釣り竿に洗濯竿や暖炉用の火掻き棒などがあった。
ガイアは火掻き棒を手に取った。程良い長さの棒であり金属製なので強度も高い。武器はそれに決めたようだ。
「少し見回りに行ってきます。みなさんは家の中から出ないでください」
「行っちゃうの?」
「心配はいらない。すぐに戻ってくる」
ガイアは不安げなカリンを残して見回りに行った。
やはりカリンが暮らすこの地区にはすでに魔族が入り込んでいた。数は決して多くはないが戦う力を持たない住民にはどうすることもできなかった。
見渡せば四方八方に血が飛び散っていて、足元には食べ残された死体の一部が転がっていた。平和だった昨日とは打って変わって地獄のような世界だった。
血の跡を辿って広場に出るとそこには武装した大人たちがいた。その内の1人は魔術を使っている。ガイアは声をかけて近寄った。
「みなさんはこの地区の方ですか?」
「ええ。そうです。あなたもですか?」
呼びかけに応えてくれたのは魔術を使っていた男だった。
「はい。みなさんはここで何を?」
「私たちはここで戦っています。広いですし何より見通しがいい。それと学院時代に覚えた魅了の魔術でこの地区に蔓延る魔族をここへ呼び寄せています」
「敵が魔族だと知っているんですね」
「歴史学を専攻していたもので。多少ですが魔族についての知識はあります」
魔術師の男は自信ありげに答えた。
「なるほど。それは心強い。うしろの方々は?」
「彼らはこの地区でも腕が立つ方々です。大工に石工、鍛冶屋に元兵士。現役の傭兵もいます。見たところあなたもなかなか良い身体をしていらっしゃる」
「私は元騎士。みなさんの力になれるはずだ」
「これはありがたい。協力感謝します」
ガイアが彼らの仲間に加わったところでさっそく魔族がやってきた。魅了の魔術に惹かれたのは鳥型と獣型の魔族。ともに血の混じった涎を滴らせながらガイアたちにいきなり襲いかかった。
ガイアは火掻き棒に風の魔術を付与した。棒の周りを風の刃が螺旋状に渦巻いて殺傷能力がぐんと上がった。
「いきます!」
魔術師の男は敵に向かって火の魔術を使った。放たれた火球は魔族に直撃してその体を燃え上がらせた。構えていた大人たちは敵が怯んでいるうちに一斉に斬りかかった。さすがの魔族も多対一では勝ち目がなく全身を串刺しにされて絶命し灰になった。
それからも魔族が現れるたびに同じ戦法で次々と倒していった。この戦法だと1人1人の負担が小さいので体力の消耗は少なくて済んだ。
しかしある時、彼らはとんでもないものを引き寄せてしまった。
「な、なんだあいつはッ!」
仲間の1人が叫んだ。視線の先には巨体の魔族。牛頭の化け物がいた。ミノタウロスという名のそれは人の倍はある大きさで無骨な鉈を手に持っていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ミノタウロスは吠え猛り力任せに鉈を振り回した。近くにいた仲間の男は胴に直撃を食らって体を二等分にされた。血と臓物をぶちまけながら地面に転がる死体。
それを見た仲間は恐怖におののいた。魔術師の男とガイアだけはどうやって倒すかを考えていた。
「みなさん! 諦めてはいけません! 仲間のためにもこの地区の人々のためにもここは踏ん張りましょう!」
魔術師の男はそうやって仲間の戦う気力を奮起させた。仲間たちは互いに顔を叩いたり頬を抓ったりして恐怖を無理やり沈めた。
「私がやつの動きを止めます。その間にみなさんで一斉攻撃をお願いします」
そう言い残して魔術師の男は1人ミノタウロスに立ち向かった。他はいつでも飛びだせるように準備した。
「万物の母となりし地の精霊よ。連鎖に逆らいし憐れを大地に縛りつけその養分となせ」
地の魔術が発動されて地面から無数の木の根が現れた。それはミノタウロスの足に絡みついて地面に縛りつける。さらに根は養分として魔力を吸い上げていた。
ミノタウロスは暴れて絡みつく根を引き剥がそうとしている。
「みなさんッ! 今のうちにッ!」
魔術師の男は振り返って合図をした。いざ出撃だと仲間たちは一斉に地面を蹴った。
「ぐあッ!」
しかし次の刹那、魔術師の男はミノタウロスに掴まれて口に放り込まれた。肉と骨を噛み砕く異音が響き渡り、みな思わず足を止めた。
男たちの顔は絶望の色で染められていた。一気に戦意を失いその場に立ち尽くした。
「止まるなッ!」
唯一戦意を失っていなかったのがガイアだった。まだ動きを封じられているミノタウロスへと単身突っ込み、その肩に飛び乗った。そして魔力付与した火掻き棒を思いっきり首のうしろに突き刺した。そこは急所の頭部と心臓へ直接魔術を叩き込める場所。一度に大打撃を与えることができなければそれが最も有効だった。
「食らえッ!」
ガイアは火掻き棒を通して風の魔術を体内に送り込んだ。ミノタウロスは体内を切り刻まれて激しく痙攣したあと、その場に頭から倒れた。
「どうだッ!」
地面に着地したガイアは敵の様子を見守った。すると倒れたミノタウロスから真っ黒な瘴気が噴出して体の再生を始めた。
「浅かったかッ。おいッ! 頭を狙えッ! 一斉に叩くぞッ!」
その声で立ち尽くしていた味方が我に返った。ガイアに従い、ミノタウロスの頭部へ一斉に攻撃を放った。頑丈な頭部にひびが入り、ガイアの止めの一撃で破壊した。
ミノタウロスは断末魔を上げることなく灰化して崩れ散った。
「……ふう」
安心して一息ついたガイアをよそに男たちは灰の山を掻き分けた。いないと分かっていても魔術師の男を探していた。その様子から相当信頼されていたことが窺えた。
無駄だと言うこともできずガイアは歩いて落ちていた剣を拾った。それは体を二等分にされた仲間が持っていたものだった。
「私は一旦家に戻ります」
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