ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第02話 世界一平和な逆襲(後)

11.鮮やかな逆転

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 ***

「……っ! ヴァン君か」

 ウィルクトリア総理大臣執務室にヴァンは降り立つ。途端にアシュノット総理は顔を顰めた。

「やってくれたね。まさか軍を使ってあんなことをするとは……!」

 全国民が見ている目の前でこの国がスナキア家頼りの状態から脱却できる可能性を示してやった。このままスナキア家の力に乗っかった国家運営を続けたい総理にとってはさぞ痛手だったことだろう。

 しかし、その件はもはや重要ではなかった。それはヴァンも総理も理解している。

「ネイルド共和国とギリザナの件でお話があります」

 これが本題だ。

「総理、何てことをしてくれたんですか。両国が、いえ、両国が属する北と南が、世界大戦を始めてしまうところでしたよ」

 アシュノット総理はあろうことか鼻で笑う。

「どうせ本気ではやり合わんよ。ウィルクトリアという第三極が睨みを効かせている以上、人員も武器も大して割けん。小競り合い程度で済んだはずだよ。特にウィルクトリアへの攻撃手段である遠距離ミサイルはできるだけ温存しただろう」

 態度は気に入らないが、実際その通りなのだろう。総理だって敵国が戦力を消耗するのは望むところではないのだと、ヴァンも気づいていた。世界の武力が脅威だからこそ、彼はスナキア家の必要性を声高に主張することができるのだから。

 ……だが、その”小競り合い”で幾つの命が失われるというのか。やはり総理の計略は許し難い蛮行だ。

「……ヴァン君、その口ぶりから察するに、開戦は防いだようだね。となれば私にとって理想的な展開になったんじゃないかね」
「ええ。両国とも所属する軍事同盟を巻き込んでウィルクトリアに対する報復攻撃を行うと主張してきました」
「……フッ、ハハ、そうかね。”終末の雨”の再来か。国民は改めてスナキア家の力を信奉するだろうね」

 ヴァンの推察通り、総理の真の目的は世界にウィルクトリアを攻撃させること。ヴァンにこの国を守らせてスナキア家の必要性を国民の心に刻み込むこと。

「策を張り巡らせた甲斐があったというわけかい。北も南も合同となれば、その戦力は奇しくも君が国民に提示した三十四%という数字を上回るじゃないか。君は軍の力がとても物足りないものだと証明したようなものだ、ハハ」

 総理は途端に饒舌になる。自国に無数のミサイルを放たせるという恐るべき未来を、総理は愉快そうに語る。まったく奇妙な国家だ。しかし彼の思い通りにはさせない。

「彼らはこの国を狙いません。ウィルクトリアではなく俺個人を攻撃するよう申し出まして、両国及び両軍事同盟はそれに合意しました。作戦は公海上で行われます」
「……⁉︎」

 総理は一度眉をひそませ、一転ニヤリと笑った。

「ヴァン君、それは私への対抗策として正しかったのかね? 場所を移せば国民のショックが和らぐとでも思ったのか? クク、どこで行われようがウィルクトリア国民は頭上で同じことが行われたらと想像するさ。君の一族がいるありがたみを深く噛み締めることになるだろうねぇ……!」
「……」

 ヴァンは実施場所を変えるために国家ではなく個人を狙うように誘導した理由は、総理の読みとは異なる。ヴァンはしたり顔で告げてやる。────ネイルド共和国とギリザナの首脳には明かしていない、ヴァンの本当の狙いを。

「総理。あなたのせいで何らかの攻撃を受けることは避けられそうもなかったので、いっそ利用させてもらうことにしました」
「……?」

 総理の呆けた顔面に、ヴァンはさらなる解説をぶつける。

「俺はあえてハンデをつけました。拘束を受けた状態で、着弾前のミサイルを攻撃魔法で破壊しないという条件のもと、両同盟からの総攻撃を受けます」
「な、なぜそんなことを……? 大丈夫なんだろうね?」
「ええ、まあ。十二歳のときならできなかったかもしれませんが、今の俺なら余裕を持って対処できます。あんまりにも余裕があるものですから、ついでにちょっと小芝居も打とうかと」
「小芝居……だと?」
「随時バリアをわざと割ったり点滅させたり……ですかね。ハンデのせいで力を発揮できず、もう一息で倒せる。そう誤解してもらいます。流石に国土の上でやるのはリスクが大きいので場所は移しましたがね」

 あえてバリアを巨大にしたのもこの方針を考慮してのものだ。爆炎や煙で全てが覆われてしまわないように大規模に展開する必要があった。あちらは衛星を通じてヴァンが弱っていく様を確認してくれるだろう。

「意味が分からん。何故わざわざ付け入る隙を与えるんだね」
「一言で言うなら、やり過ぎてもらうためです」
「………………っ!」

 総理はその意味を理解したのか、途端に青ざめていった。

 ……ネイルド共和国大統領はこう言っていた。「万が一ウィルクトリアを落とせればその利益は限りなく大きい」と。「後の取り分争いで遅れを取らないためにも参加しないという選択肢はない」と。これらの発言から、あわよくばヴァンを倒せると思った彼らがどんな行動を取るかが見えてくる。

 ヴァンを討ち取った国は次の覇権国家となる。ミサイルの被害を受けていない綺麗なままのウィルクトリアを手に入れ、国土に宿る三百年に渡って世界中からかき集めた財産を手中に収めることができる。

 となれば北は南に、南は北に、絶対に手柄を取られまいと躍起になるだろう。ヴァンが隙を見せれば余力を残さず戦力を投入せざるを得なくなる。「あと一発で倒せるかもしれない」と、そう考えてしまったらお互いもう止まれない。

 ────仮に現在保有しているミサイルを全弾投入することになっても。

「狙いは消耗か……っ!」
「ええ。散々魔力を消耗させられた仕返しです」

 ファクターを要するウィルクトリアを攻撃できる手段は遠距離ミサイルしかない。しかし世界戦力の半分を占める両同盟がそれを使い果たす。様子を伺っている同盟外の他国も便乗して参加する可能性だってある。

「再編成には最低でも数年、下手をすれば十年は必要になるでしょう。その間ウィルクトリアには平和が約束される。たとえスナキア家の力がなくともです」
「クッ……!」

 ヴァンが軍を利用して国民に提示した「スナキア家なしでも国防を賄える」という希望のある未来はより現実味を増すだろう。一度総理に阻まれたかと思ったあの計画は、より鮮明に生き返る。

「他国の軍事力が脅威であったことは、あなたがスナキア家必要論を主張する重要な根拠でした。それを失えば、あなたはいずれ総理の椅子を降りることになるでしょうね」
「や、やってくれたな……っ! ヴァン・スナキアぁ……!」

 総理は脂汗をかき、握りすぎた指が掌に血を滲ませていた。総理が立てたありとあらゆる策は無駄に終わったどころか、自らの地位を失いかねない状況に陥るというヴァンに利する形で決着した。完全勝利だ。

 ────さらに、ヴァンはこのカードを切ってみる。
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