ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第05話 結婚反対デモ騒動

03.家ではレッスン

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 ***

「先生っ! それではレッスンをお願いしますっ!」

 第六夫人・ヒューネットの部屋。ヒューネットはテーブルにつき、ノートとペンをしっかりと用意していた。「絶対合格」とでも書かれたハチマキがあればよく似合ったことだろう。

「ヒューは何にも分かんないからキソのキソから教えてくださいっ!」

 生徒から溢れ出る熱気にヴァンの口元が緩む。夫が頑張っていることを知りたいというその気持ちが嬉しくてたまらなかった。

「よし、じゃあ本当に基本的なとこから説明するぞ」
「はいっ!」

 ヒューネットはペンを構え、猫耳を立ててヴァンの言葉を待ち構える。

「まずは俺のスタンスからだ。俺はこの国をスナキア家無しでも成立する国にしたい。なんせ性癖のせいで後継が絶望的だからな」
「な、なんか、改めて考えるととんでもない話だよねっ」
「まあ俺の性癖がどうとか関係なく、そもそもたった一人に全部任せっきりなのは危ないしおかしい。俺は結婚相手に文句を言われるしな。もうこんなのは止めにしたい」
「はいっ! ヒューはとっても賛成ですっ!」

 スナキア家当主に外交・国防・経済を全て委ねる国家体制。ヴァンに後継が望めないのなら国の方を変えなければ。しかしその事実を明かせば戦争になってしまうため、伏せたまま改革を押し進めることになる。

「今のところこの国は世界中から嫌われている。スナキア家の威を借りて財産を奪い続けてきたせいだ。これを辞めなきゃ仲直りなんて無理だろ?」
「当然ですっ」
「ただ、国民の多くはその金で支給される生活費で生活してるから搾取を辞めるなんて絶対反対なんだ」

 ヴァンはなるべく平易な言葉を意識して説明していく。一言も聞き漏らすまいと向けてくる猫耳が愛らしい。

「文句言ってないで働いてほしいんだが、そもそも働こうにも働く場所が少なかったんだ。街にある店は大体海外企業だし、従業員は外国人だろ?」
 
 ウィルクトリア市場には少しでも奪われた財産を取り戻そうと世界中の企業がやってくる。おかげで国民は何不自由なく生活できているわけだ。だが、海外企業はウィルクトリア人なんて雇わない。

 世界一競争が激しい市場。そこに割って入れる国内企業などほとんどなく、そもそも国内企業なんて趣味程度の感覚で経営されていた。雇用なんて生まれるはずもない。

「だから俺が銀行を作って、会社を作る人や経営する人にお金を渡して、働ける場所を増やしてきたんだ。おかげでちゃんと働いている人は以前よりは随分増えた」
「いい心がけですっ!」

 ヒューネットは元気よく善良な国民にお褒めの言葉を与えたあと、一生懸命ノートにメモを取っていた。

「ただ、法律とか税制で政府が成長を促してくれないと効果が薄い。なのに今の総理はこの辺全く協力的じゃない」

 現政権は労働など下賎な外国人がやることと言って憚らない。ヴァンはできる限りのことをしてきたが、限界を感じているのが実情だった。

「それともう一つ、軍事面だな。国民が自分たちでも身を守れるって信じられる状況じゃないと、スナキア家がいなくなるなんて怖がるだけだろ?」
「そうだねっ……。あ、でもっ、この前の作戦が効いたんだよねっ?」
「ああ、いいアピールになったよ。まあ軍が強くなりすぎて俺の代わりに他国を脅す材料になられると困るんだが、現状そこはまだ心配ないし、むしろもっと人員を増やしたいくらいだ。もちろんあくまで国防のためだけどな」

 軍で教官を務めているヴァンにはある程度成長度をコントロール可能だ。だが、兵の数自体を増やそうとなると政治の力が要る。

「というわけで、自立した経済と軍事力を育てようって方針に賛成してくれる政党を勝たせるのが俺の目標だ」

 ヒューネットもここまではわかっているようで、余裕の表情でうんうんと頷いていた。しかし、話はここから多少難しくなる。

「今のところ国会は四つの派閥に分かれてる。どれも細かい政策に違いはないんだが、スナキア家の運用については大きく意見が割れているんだ」
「う、運用って……っ。ヴァンは道具じゃないのにっ!」
「ああ、ヒュー……ありがとう……! そう言ってくれるのは妻だけだ……!」

 ヴァンはその影響力ゆえに国会で議論の的になっている。一夫多妻を認めたのも国会が出した決定だ。

「まず一番人気の政党が安穏党。アシュノット総理が居るところだ」
「あのいっつも笑顔だけど本当は悪そうなおじいちゃんっ?」
「良い勘してるぞヒュー! ちなみにあの人はたまに脇が臭い!」
「そ、それは別にっ……」
「大事なことだからメモするんだ!」

 ヴァンに命じられ、ヒューネットは渋々メモを取る。ヴァンとしてはぜひ赤字で書いてほしいところだ。

「彼らの目標は現状維持だ。他国からの搾取を続けて、軍の規模は今くらいを維持しつつこちらからは仕掛けない。あくまで生かして搾り取ろうという立場だ」
「や、やな感じ……っ」
「だが国民には響いてる。安穏党に票を入れておけば、国民は働かなくていいし戦わなくていいんだ」
「まったくもうっ……」

 この考えが現在の国民の主流派になっている。ウィルクトリアは依然としてスナキア家依存を選択しているのだ。

「だが、元々国会の八割を占めていた安穏党は今や四割ちょっと。もう自分たちだけでは過半数を取れないんだ。俺が子どもの頃にあった”終末の雨”という軍事攻撃を受けてから、国民が二つの党に流れ始めた」
「あ、ヴァンが守ってくれたやつだよねっ! ヒューは小さかったからあんまり覚えてないけどっ!」

 ヴァンの父が暗殺され、この国は一度世界からの集中砲火を浴びている。スナキア家の魔力の源であるルーダス・コアを継承したヴァンが守らなければこの国はあのとき滅ぼされていた。

「一つが愛国党。ここはあの戦争の復讐をしたがってるんだ。いつでも戦争を仕掛けようとしてるし軍拡を主張してる」
「こ、怖いじゃんっ」

 安穏党はヌルいと見た極右が集まった政党だ。総理とは別の意味で危険な存在である。

「そしてもう一つが革新党だ。あの戦争を受けて、もう攻撃されないように経済的に自立しようと訴えている」
「あ、じゃあヴァンの味方だねっ!」
「それが、そうとも言い難いんだ。ここは『攻撃されないなら軍にお金を使うのはもったいない』とも考えてる。国防はスナキア家さえ居ればいいという方針だ。だから後継作れと一番うるさい」
「うー……っ。なんかややこしくなってきたよっ……。誰も味方じゃないのっ?」

 各党、ヴァンと考えが合致している部分もあれば真っ向からぶつかる点もある。しかし、

「大丈夫。もう一つ、自主党という政党がある。これは俺の結婚後に俺の意思を組んで結成してくれた党だ」
「味方なのっ⁉︎」
「ああ。まだ議席数は二割弱なんだが、次の選挙での注目度は高い」

 今はまだ泡沫政党でもヴァンには味方がいる。この国が変わるためには彼らの躍進が鍵だ。先日の総理との一件やテツカの部屋騒動など、ヴァンが改革のために起こしたアクションは彼らの成長につながっているはず。

「さあヒュー。初級編はここまでだ。どれくらい分かったかテストをしてみよう」

 ヴァンは一瞬自分の書斎にテレポートし、紙ペラ一枚と取ってきた。

「何これっ?」
「確認テストだよ。作っといた」
「え~……っ? ヴァンって何か、変にマメだよねっ。ヒューそういうとこも好きだけどさ……っ」

 突然現れたテストにヒューネットは眉根を寄せていた。そんなに警戒しなくても、ここまでの話を聞いていれば全部解ける簡単な内容になっている。

「制限時間は三十分だ。よーい、スタート!」
「は、はいっ!」

 カリカリとペンを走らせる音だけが室内に響く。ヴァンはのんびりと時間が過ぎるのを待っていた。

「……ん?」

 窓の外に不思議な光景が見え、思わず声が漏れた。スナキア家の広大な庭で、尋常ではない何かが起きている。
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