ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第05話 結婚反対デモ騒動

04.性的なコスプレ

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 ***

 スナキア邸。庭。

「ユウノ! ぺ、ペース速すぎ!」
「お? もうへばったのかエル? アタシの勝ちだな!」
「も、もう! 競争じゃないのよ!」

 エルリアは走りながら懸命に声を絞り出した。普段は体に染みついた上品な口調で話しているのだが、なぜかユウノに対してだけは自然とタメ口が出てしまう。

 エルリアはジョギングを日課にしている。コースは気分によって変えているが、今日は自宅の庭を周回することにした。すると窓からその姿を見たユウノが興味を持ち、混ざってきた格好だ。

 エルリアは足を止める。「ユウノも止まって」のメッセージである。少し先を行っていたユウノは得意げな顔で引き返してきた。エルリアは両膝に手を乗せて息を切らせながら抗議する。

「そ、そんなに飛ばさないでよ……。別に速く走る練習じゃないの。筋肉が付き過ぎちゃっても困るんだから……!」
「へへ、悪いな」

 言葉とは裏腹にユウノは依然誇らしげだった。どうやら万能の嫁サイボーグ・エルリアに勝てるところを見つけたのが嬉しいらしかった。流石のエルリアも身体能力オバケのユウノには敵うべくもない。そもそも、大量の食事を摂るくせにちっとも太る気配のないミラクルボディーの持ち主であるユウノには、ある意味生まれながらにして負けているのではとすら感じる。

「お前毎日走ってんだろ? アタシもたまに混ぜてもらおっかな。体動かすの好きだし」
「あ、遊びじゃないのよこちとら……!」
「別にエルだってガリガリじゃねえか。胸ばっか出てるけどよ」
「痩せるためだけじゃないの……! もっとエロい身体になるためのトレーニングなの!」
「い、いや、それこそもう充分だろ……?」

 充分なはずがない。エロは無限である。夫が思わず<検閲されました>してしまうほどの肉体に仕上げなくてはならないのだ。どんなに綺麗なくびれを作っても猫耳や尻尾ばかり触ってくる夫には多少の不満はあるものの、乳や尻だって好きなことは日々思い知らされている。

 ────ふと、このスポーツの場が最も似合わない人物の声が聞こえた。

「エルちゃ~ん、ユウノちゃ~ん」

 手を振りながらゆったりとしたテンポで二人に歩み寄ってきたのはフラムだった。その服装に唖然とし、エルリアは大きく口を開く。

「ふ、フラムさん? 何ですかその性的なコスプレは……?」

 フラムは体操着を着ていた。下着と一体何が違うのかと怒鳴りつけたくなるような丈のブルマ。袖が短めのTシャツは「ブッ飛び出る」とでも表現した方が良さそうな巨乳を包むにはサイズも厚みも頼りない。

「あ、こ、これ? あのねぇ、運動しようと思ったんだけど、これしか持ってなくて……」

 どうやら学生時代に使っていた代物らしい。きっと当時から胸囲も身長も伸びているのだろう。ピチピチ気味だ。

「な、何だかエロ過ぎますわフラムさん……。こんなのヴァン様が見たら我を忘れて襲いかかってしまいますし、その際はわたくしも混ぜていただく手筈になってます」
「なってねえよ! 落ち着けエル!」

 エルリアは何だかドギマギしてしまっていた。女性で、変態である彼女から見ても、今のフラムの格好はフェチが過ぎる。

「あのねぇ、エルちゃん。ダメなの。わたしはねぇ、そういうのは二人っきりが好きなの」
「フラム姉、いいんだぞ? こいつにまともに応対しなくても……」
「……なんか今のお言葉も噛み締めるとエロくないですか⁉︎ わたくしもう<検閲されました>が<検閲されました>で……!」
「お、お前本当にすげえな⁉︎ 何でそんな言葉平然と言えるんだよ……⁉︎」
「私は脳と口の間に審査委員会がないの!」
「作れ!」

 エルリアはフラムが会話のテンポについていけずオロオロしていることに気がついた。午前中に青空の下で猥談に付き合わせるのは流石にそろそろ自粛しよう。

「そ、それでどうされたんですか? えっと、運動をされると……?」

 フラムはやっと言えるとばかりに胸の前に手を合わせた。

「そうなの! あのねぇ、わたし痩せようと思って! だからわたしも混ぜてくれない?」

 ダイエット中、とのことらしい。そういえば朝食を残していたなと、エルリアは思い当たった。

「あの、フラムさんは痩せてらっしゃいますよ?」

 彼女が痩せる必然性をエルリアは全く感じ取れなかった。確かにカリンカリンとは言えないが、程よい肉付きの完全最高えっちボデーとして表彰されそうな体型だ。しかし、彼女は納得していないらしい。

「そ、そんなことないの! とんでもない身体になってるの! こんなのどうにかしないと……!」
「フラムさんはお胸が大きいだけですわよ。結構重いんですよ? えっと、わたくし調べたんですけど、Fの私程度でも一キロ以上あるらしいんです。フラムさんもっとありますよね?」
「う、うん……」
「フラムさんは多分三キロくらいマイナスして考えてもいいのではと……」

 隣でユウノが顔を顰めている。

「富裕層の会話だ……! 気にくわねぇ……!」

 エルリアは一瞥し、無視した。好きなだけ食べても一切太らない身体の方が余程チートだ。

「でも三キロくらいじゃわたし……、あのねぇ、お胸が十組あったらその計算で安心できるんだけど、一組しかないから……」
「三十キロも無くなったら死んでしまいますわよ……?」

 どうやらフラムは「とにかく痩せたい」という願いに支配され冷静な判断ができなくなっているようだ。ひとまず実際に運動を始めれば少し落ち着くかもしれないという狙いを込め、

「で、では、一緒に走りましょうか?」

 誘ってみた。多分、あまり運動は得意ではなさそうなので怪我をしないか心配ではあるが……。

「わたし頑張るね! あのねぇ、このお庭を百周するの!」
「百……はやめておきましょうか。やっぱり死んでしまいますし……」

 庭をぐるっと回ればその走行距離は五キロを超える。一周できれば御の字というところだろう。

「フラムさん、スポーツっていつぶりですか? <検閲されました>を除いてです」
「いつぶりかしら……。う~ん、わたしアレをスポーツって呼ぶタイプじゃないし……」
「そうでしたか。……ユウノはそっち?」
「聞くな! フラム姉も相手にしなくていいって!」
「運動慣れしていないのであれば準備体操をしっかりしておきたいですわね。屈伸から始めましょう!」
「はぁい!」

 フラムはやる気に満ちたお返事。しかしあまり張り切り過ぎるのも心配なので、エルリアはフラムの動きをつぶさにチェックしながら屈伸を開始する。

「いち、に、さん、し……」

 エルリアはいつも自分がやっているときの半分のテンポで緩やかに号令を飛ばす。だが、フラムが追いつけたのは最初の三回だけだった。

「あ、あらぁ~……」

 フラムはしゃがんだタイミングで情けない声を漏らしながらそのまま後ろに転がった。

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

 エルリアは慌てて駆け寄ってフラムの手を引く。どうにか立たせてあげると背中は砂と葉っぱの切れ端が無数にくっついていた。

「え、エルちゃん? わたしね、いきなりスクワットは無理かも……」
「屈伸ですってば……」

 これは先が思いやられると、エルリアは頭を抱えた。
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