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第06話 ざまあみろ、ウィルクトリア(過去編)
09.壮絶な分身修行
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分身可能人数・三十三。
ヴァンは”終末の雨”で力の大半を失った。コアのお陰で継承前よりは強い程度に留まっているが、病弱だった父でも四桁の分身が可能だったことを鑑みると問題外と言う他ない。終末の雨では力が及ばなかったことを考えると、あのとき以上の魔力を身につけなくてはならない。それは普通に考えれば困難な道のりだが、ヴァンには秘策があった。
分身で何人分もの修行を積み、経験値を合算すればいい。
二人に分かれれば二倍、百人に分かれれば百倍だ。そしてルーダス・コアは所持者の力を掛け算式に増幅させる。ヴァンが百倍の魔力を身に宿せば、それをさらに数十倍に膨らませてくれる。
確信があった。自分は遠からず異次元の強さを手に入れることができると。
魔法の修行は強い相手と戦うのが一番だ。ヴァンは分身を駆使し、自分同士で戦った。弱体化したとはいえ他の誰も相手にはならない。それに、自分が相手なら手加減も要らない。壮絶な闘いを数え切れないほど繰り返し、ヴァンは急速に力をつけていった。
分身可能人数・四百六十四。
思考回路が同じ相手と戦うのは中々骨が折れる。裏の裏をかいてもまだ意表を突けない。戦闘力だけではなく思考力も鍛えられていった。
さらに、勝った側の経験だけではなく負けた側の経験も得られる。むしろそちらの方が大きかったかもしれない。ヴァンは最強の魔導師でありながら、誰よりも敗北から学ぶ。
分身可能人数・二千六十五人。
鍛えれば鍛えるほど分身の数が増えていき、それだけ修行の効率も上がっていった。
休息はない。例えくたびれ果てても、体力のある分身と合体すれば疲れが中和される。修行用の分身と休息用の分身に分けてスケジュールを組めば二十四時間修行を続けられた。
同様に、怪我の心配もない。どれだけ重傷を負っても健常な分身と合体すれば傷は癒えた。痛みや苦しみの記憶は残るが、それも良い経験だった。
分身同士は互いに殺すつもりで戦っていた。”終末の雨”で得た死の直前の記憶は、もはやヴァンが無数に持つ死にかけた経験の一つに過ぎなかった。
分身可能人数・一万七千三百。
ヴァンの強さは指数関数的に膨れ上がっていく。おそらく”終末の雨”時の自分と同等の魔力を取り戻しただろう。時が経ち、当時より体躯に恵まれていることを考えればあのときを超えているかもしれない。だが、そんなものはただの通過点だった。
攻撃力が増し、分身を本当に殺してしまうことが増えた。即死では救いようがないのだ。
だが、仮に死んだとしてもその分身に割いていた魔力を失うだけ。せいぜい一万分の一だ。その程度なら修行を積めばすぐに取り戻すことができた。自分を殺めた嫌な感触だけが手に残るが、それも次第に慣れていった。
分身可能人数・四万九千四百。
強さだけでは足りない。国を導いていくためにはあらゆる知識が必要だった。
分身を駆使して勉学に励んだ。戦後数ヶ月後には中学高校をすっ飛ばして世界中の大学に飛び級合格。全てに同時に通い、全ての授業を履修し、完璧な成績を挙げた。翌年には修士、その翌年には博士だ。
その様は国中に報道され、ヴァンの言葉は学位によって裏付けされ説得力を帯びていく。子どもの戯言とは言わせない。学者としても人類史上例のない総合力を身につけていく。
進学するほど修行に回せる分身の数は減ったが、それでも数千セットの殺し合いを二十四時間続けることができた。ヴァンの魔力は膨張を続けていく。
分身可能人数・九万七千。
ジルーナはたった一人でヴァンを支えてくれた。家の床中に広がって勉強に励む無数の分身にコーヒーを淹れてくれ、庭中で訓練を積む無数の分身には暖かいエールをくれた。
分身は体力的な消耗が激しく、常に大量の栄養を補給しなくてはならない。ジルーナは毎日炊き出しのような量の食事を作ってくれた。彼女自身も学校に通いながら、健気に尽くしてくれた。
彼女はヴァンの前で一度だって疲れた顔を見せなかった。きっとまだ胸に深く刻まれたままの父を失った痛みに耐え、涙を見せることもなかった。そんな姿を見せられてはヴァンも弱音を吐くわけにはいかなかった。二人は、いつも二人だった。
分身可能人数・十五万。
尋常ならざる反復。常軌を逸した鍛錬。もはやヴァンの力は初代当主であるルーダス・スナキア様に及ぶかもしれない。それでもヴァンは止まらない。止まれない。
もう何も奪わせない。
もう誰も傷つかせない。
俺が平和を作ってみせる。
────ヴァンの壮絶な修行は三年に及んだ。
分身可能人数・三十三。
ヴァンは”終末の雨”で力の大半を失った。コアのお陰で継承前よりは強い程度に留まっているが、病弱だった父でも四桁の分身が可能だったことを鑑みると問題外と言う他ない。終末の雨では力が及ばなかったことを考えると、あのとき以上の魔力を身につけなくてはならない。それは普通に考えれば困難な道のりだが、ヴァンには秘策があった。
分身で何人分もの修行を積み、経験値を合算すればいい。
二人に分かれれば二倍、百人に分かれれば百倍だ。そしてルーダス・コアは所持者の力を掛け算式に増幅させる。ヴァンが百倍の魔力を身に宿せば、それをさらに数十倍に膨らませてくれる。
確信があった。自分は遠からず異次元の強さを手に入れることができると。
魔法の修行は強い相手と戦うのが一番だ。ヴァンは分身を駆使し、自分同士で戦った。弱体化したとはいえ他の誰も相手にはならない。それに、自分が相手なら手加減も要らない。壮絶な闘いを数え切れないほど繰り返し、ヴァンは急速に力をつけていった。
分身可能人数・四百六十四。
思考回路が同じ相手と戦うのは中々骨が折れる。裏の裏をかいてもまだ意表を突けない。戦闘力だけではなく思考力も鍛えられていった。
さらに、勝った側の経験だけではなく負けた側の経験も得られる。むしろそちらの方が大きかったかもしれない。ヴァンは最強の魔導師でありながら、誰よりも敗北から学ぶ。
分身可能人数・二千六十五人。
鍛えれば鍛えるほど分身の数が増えていき、それだけ修行の効率も上がっていった。
休息はない。例えくたびれ果てても、体力のある分身と合体すれば疲れが中和される。修行用の分身と休息用の分身に分けてスケジュールを組めば二十四時間修行を続けられた。
同様に、怪我の心配もない。どれだけ重傷を負っても健常な分身と合体すれば傷は癒えた。痛みや苦しみの記憶は残るが、それも良い経験だった。
分身同士は互いに殺すつもりで戦っていた。”終末の雨”で得た死の直前の記憶は、もはやヴァンが無数に持つ死にかけた経験の一つに過ぎなかった。
分身可能人数・一万七千三百。
ヴァンの強さは指数関数的に膨れ上がっていく。おそらく”終末の雨”時の自分と同等の魔力を取り戻しただろう。時が経ち、当時より体躯に恵まれていることを考えればあのときを超えているかもしれない。だが、そんなものはただの通過点だった。
攻撃力が増し、分身を本当に殺してしまうことが増えた。即死では救いようがないのだ。
だが、仮に死んだとしてもその分身に割いていた魔力を失うだけ。せいぜい一万分の一だ。その程度なら修行を積めばすぐに取り戻すことができた。自分を殺めた嫌な感触だけが手に残るが、それも次第に慣れていった。
分身可能人数・四万九千四百。
強さだけでは足りない。国を導いていくためにはあらゆる知識が必要だった。
分身を駆使して勉学に励んだ。戦後数ヶ月後には中学高校をすっ飛ばして世界中の大学に飛び級合格。全てに同時に通い、全ての授業を履修し、完璧な成績を挙げた。翌年には修士、その翌年には博士だ。
その様は国中に報道され、ヴァンの言葉は学位によって裏付けされ説得力を帯びていく。子どもの戯言とは言わせない。学者としても人類史上例のない総合力を身につけていく。
進学するほど修行に回せる分身の数は減ったが、それでも数千セットの殺し合いを二十四時間続けることができた。ヴァンの魔力は膨張を続けていく。
分身可能人数・九万七千。
ジルーナはたった一人でヴァンを支えてくれた。家の床中に広がって勉強に励む無数の分身にコーヒーを淹れてくれ、庭中で訓練を積む無数の分身には暖かいエールをくれた。
分身は体力的な消耗が激しく、常に大量の栄養を補給しなくてはならない。ジルーナは毎日炊き出しのような量の食事を作ってくれた。彼女自身も学校に通いながら、健気に尽くしてくれた。
彼女はヴァンの前で一度だって疲れた顔を見せなかった。きっとまだ胸に深く刻まれたままの父を失った痛みに耐え、涙を見せることもなかった。そんな姿を見せられてはヴァンも弱音を吐くわけにはいかなかった。二人は、いつも二人だった。
分身可能人数・十五万。
尋常ならざる反復。常軌を逸した鍛錬。もはやヴァンの力は初代当主であるルーダス・スナキア様に及ぶかもしれない。それでもヴァンは止まらない。止まれない。
もう何も奪わせない。
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────ヴァンの壮絶な修行は三年に及んだ。
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